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猫の急性腎障害について|進行が早く早期治療が必要な急性腎障害を獣医師が解説

2024.07.02

こんにちは。
どうぶつ病院 京都 四条堀川 獣医師 尾関康江です。
前回、猫の慢性腎臓病についてお話しました。

今回は、

  • 猫の急性腎障害について
  • 急性腎障害の原因にはどんなものがあるのか
  • 治療方法

について解説します。

急激に進行し命を落とすこともある猫の急性腎障害。そんな猫の急性腎障害について少しでも知っていただき、愛猫の不調の早期発見、早期治療につなげていただけたら幸いです。

急性腎障害

急性腎障害は、発症後数時間から数日かけて急激に腎臓の機能が低下する病気です。腎臓は老廃物を排出、血圧を調整、ホルモンの分泌といった重要な役割をもっています。急性腎障害ではこれらの機能が正常に働かなくなり、他の臓器に影響をもたらします。進行が早いため、命を落とすこともあります。

急性腎障害の原因

急性腎障害は原因がどこで起きているかによって、腎前性、腎性、腎後性に分かれます。

腎前性

腎前性腎障害は、腎臓は機能しているけど、十分に血液が腎臓に流れないことで発症する腎障害です。脱水や出血、ショックによって血液の量が少なくなることで、腎臓への血液量が減り腎障害が起こります。

腎性

腎性腎障害は、腎臓自体の障害によるものです。急性腎障害の原因には細菌・ウイルス感染、中毒物質の誤食(主にエチレングリコールやユリ科の植物)、腫瘍、薬剤の摂取、自己免疫疾患が挙げられます。

腎後性

腎後性腎障害は、尿管、膀胱、尿道といった下部尿路系に障害が起きる病態です。下部尿路系に障害が起きると尿が上手く排出されず腎臓へ逆流し、障害をきたします。代表的なものとしては、尿管、膀胱、尿道の各場所で結石が悪さをする尿石症、交通事故などで各場所が損傷を受ける尿管損傷、膀胱破裂、膀胱で細菌が感染する膀胱炎が挙げられます。

腎前性と腎後性は、加療し回復した後も慢性腎臓病に移行する可能性があります。

急性腎障害の症状

急性腎障害の症状には以下のものがあります。

  • 急にぐったりとして様子がおかしい
  • 吐き戻しを繰り返している
  • 涎が出たり、舌なめずりをする
  • 呼吸が浅く速い
  • おしっこがいつもに比べて少ない、出ていない

進行するとミネラルバランスの異常や尿素窒素血症となり、けいれんを起こしたり、意識状態がさらに低くなります。

急性腎障害の診断

急性腎障害の治療は、何が原因になって発症しているかによって治療方法が異なります。


特に中毒物質の誤飲誤食の有無、持病の有無は、急性腎障害を治療するのに非常に重要な情報なので、獣医師に必ず伝えるようにしましょう。

動物病院では、飼い主様からの情報をもとに


  • 血液検査

  • 尿検査
  • レントゲン検査
  • 超音波検査

を行うことで総合的に急性腎障害を診断します。
血液検査では主に腎機能の指標となる値を中心に測定していきます。
尿検査では尿中に排出される成分や尿の濃さを評価します。
レントゲン検査や超音波検査では腎臓の構造や大きさに異常がないかを確認します。腫瘍や結石の探索にも活用されます。

急性腎障害の治療

急性腎障害は深刻な状態であることが多いため、検査と治療を同時に行うことがあり、一般的には入院治療が必要になります。

原因によって内容は異なりますが、代表的な治療には以下のものがあります。

点滴

腎臓への血液量を確保し脱水を改善するために点滴をします。集中治療が必要な場合が多いため、入院下での静脈点滴が推奨されます。

閉塞物の解除

尿道閉塞の場合はカテーテルを通して解除し数日留置して、傷ついた尿道を回復させます。尿管や膀胱に結石がある場合は状態に合わせた外科手術が必要になります。

まとめ

急性腎臓病は非常に深刻な病気ですが、予防方法がいくつかあります。十分な飲水の確保、健康的な食餌は膀胱炎や尿路結石の予防になります。腎毒性のある食べ物やユリ科の植物は誤食をしないように気をつけましょう。定期健診を受けることで早期発見、早期治療につながります。

愛猫の気になる症状がありましたらお気軽に獣医師までご相談下さい。

どうぶつ病院 京都 四条堀川
獣医師 尾関康江