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何が原因?こんな時はどうしたら良いの?わんちゃんの下痢

2024.05.21

こんにちは。
どうぶつ病院 京都 四条堀川 獣医師 尾関康江です。
皆さんのわんちゃんのうんちはいつもきれいですか?うんちは健康の指標の1つでもあります。
「元気に走り回っているけれど、昨日からうんちが緩いわ」
「うんちに血が混じっているけれど、大丈夫かしら?」
「うんちが黒っぽくて、そういえば食欲もあまりないかも…」と言った具合に、うんち1つを取っても色々な様子がありますね。

わんちゃんが下痢をした時に、自宅で様子を見るのか、早めに動物病院を受診する方が良いのか判断する目安などをお伝えしたいと思います。

下痢の種類

わんちゃんのうんちは、手でつかんでも崩れず床にはほとんど跡がつかないのが理想的です。

うんちの固さによる分類

・軟便
うんちに水分量が多く含まれている為持ち上げると形が崩れてしまいます。比較的軽い下痢に分類され問題がないことが多いですが、幼少期から緩い、下痢以外の症状(食欲がない、ぐったりしている、吐いている)が出る場合は早めに動物病院を受診しましょう。

・泥状便
軟便よりも更に緩く、形が崩れている為持ち上げることは出来ません。軟便と同様に1日何回もまたほかの症状が出る場合は、動物病院を受診しましょう。

・水様便
泥状便よりも水分量が多く水下痢とも言います。軟便や泥状便に比べて水分量が多く、わんちゃんの体から水分が抜けた状態を示しています。元気に見えても動物病院を受診する様にしましょう。

その他のうんち

・粘液便
大腸の粘液が過剰に分泌されうんちにゼリー状に付着して出てきます。正常なうんちに付着することもありますが、つづく場合はこちらも検査をお勧めします。

・鮮血便(血便)
うんちに血液が付着した状態です。わんちゃんの大腸の粘膜はヒトよりも傷つきやすい傾向にあり、出血しやすい為です。1度だけであれば問題になることはありませんが、つづく場合は動物病院で検査をしてもらいましょう。

・黒色便(タール便・メレナ便)
食道、胃、十二指腸など上部の消化管で出血が起きている場合に出るうんちです。上部消化管から下部消化管、外へ排泄されるまでに血液が鮮血色から黒色に変化する為黒っぽく(コーヒー色)見えます。

下痢の原因となる場所による違い

・小腸性下痢
小腸(十二指腸、空腸、回腸)で起こる下痢のことを指します。原因によっては黒色便になったり、体重減少を伴います。うんちの回数は変わらず、量が増えます。

・大腸性下痢
大腸(回腸、盲腸、直腸)で起こる下痢のことを指します。下痢の回数が増え、わんちゃんがしぶる様子が見られます。通常は体重が減ることはあまりありません。

獣医師は原因の場所が分かると、どのような病気か絞り込みやすいです。なので、診察の際に回数や量など聞かれたら答えられるように、メモなどしておいてもらえると嬉しいです。

下痢の期間による違い

下痢になってから数日以内で良くなる、または薬を飲むと治まるものを「急性の下痢」と言います。対して2週間以上の下痢が続く、薬を飲んでも良くならない更には体重減少など他の症状が出てくるものを「慢性の下痢」と言います。

下痢の原因

わんちゃんの下痢の原因は多岐にわたりますので、ここでは多く見られるものに絞って説明しようと思います。

・食餌
食餌内容の急な変更、食べすぎ(摂食過多)、脂肪分の摂りすぎ、劣化した食餌などが原因で消化不良を起こし下痢になります。また、食餌アレルギー(特定の食べ物に対する免疫反応)や食餌不耐性(特定の食べ物を消化できない)も下痢の原因となります。

・環境変化
ヒトと同様にわんちゃんもストレスが原因で下痢になります。トリミングに行った、ドックランで遊んだ、ペットホテルで預けていた、飼い主さんとの距離(お仕事による長時間のお留守番、出産される)、近隣で工事をしているなど環境が変わることなどが挙げられます。

・感染症
寄生虫性疾患(犬回虫、コクシジウム、ジアルジア、クリプトスポリジウムなど)、細菌性疾患(クロストリジウム属)、ウイルス性疾患(犬ジステンパー、犬コロナウイルス、犬パルボウイルス、犬アデノウイルスなど)があげられます。寄生虫による下痢は糞便検査がとても大事ですので、下痢をした時は捨てずにとっておきましょう。ウイルス性疾患は主に子犬で多い病気です。

・薬物
治療で使われる抗生剤は腸内細菌のバランスを変えるので下痢をする子がいます。また、腫瘍の治療で使われる抗がん剤は副作用として腸の粘膜に影響を及ぼし下痢を伴う事があります。

・異物誤食
おもちゃやペットシーツなど食餌以外のものを口にした時に下痢をする事があります。また、チョコレートや玉ねぎ、ぶとう、アボガドなどヒトの食べ物の中にはわんちゃんにとって中毒となる物があります。

・腸の病気
下痢を起こす腸の病気としては炎症性腸疾患、リンパ管拡張症、腫瘍(リンパ腫、肥満細胞腫、腺腫、腺癌、大腸ポリープなど)、腸閉塞(異物、狭窄、腸重積など)などがあります。

・2次的な下痢
腸以外の病気があることで胃や腸の動きにも影響を及ぼし、胃腸の動きが落ちることで2次的に下痢や吐き気を伴うことがあります。肝疾患(胆道閉塞、胆管炎、肝不全)、膵臓疾患(膵炎、水外分泌不全)、腎臓疾患(尿毒症、ネフローゼ症候群)、内分泌疾患(副腎皮質機能低下症)、子宮蓄膿症、肛門周囲(会陰ヘルニア、肛門嚢炎)などが挙げられます。

動物病院で行われる検査内容

・糞便検査
先にお話した様に糞便は寄生虫を見つけるのにとても重要な材料となります。また、わんちゃんのうんちの状態を直接獣医師が確認できるものになりますので、受診される際はご持参下さい。

・血液検査
今のわんちゃんの体の状態を確認します。血の濃さ(貧血の有無)、炎症像の有無、ミネラルバランスの崩れ、腎臓、膵臓、肝臓などの数値を確認します。

・レントゲン検査
体の写し絵で、麻酔をかけずに行うことができます。

胸では心臓の大きさ・形、気管・気管支・肺、食道の状態などを、お腹では臓器(胃・小腸・結腸・肝臓・脾臓・腎臓・膀胱など)の位置や形に異常がないか、消化管内の様子や、お腹に異常なガスがないか、腫瘍や腹水がないか、結石ができていないか、などを確認します。

・超音波検査
エコー検査でこちらも体を傷つけることなく確認できます。(当院では鮮明な画像を描出する為、お腹の毛刈りにご協力頂いております)わんちゃんの消化管、肝臓、膵臓、腎臓、膀胱といった具合に確認をしていきます。

その他の精査

・造影レントゲン検査(バリウム造影)
・内視鏡検査
・CT検査

※個々の詳細は別ブログでお話しようと思います。また、ご診察の中でもお伝えすることができますので、詳しくは獣医師にご相談下さい。

動物病院で行われる治療

わんちゃんの下痢の多くが一過性のもので通常は症状に合った対症療法を行います。具体的には腸内細菌のバランスを整える整腸剤、下痢がひどい場合は下痢止めと行ったお薬の処方と失った水分やミネラルを補う為に水分点滴を行います。

症状が重かったり、長く続いている下痢に対しては対症療法だけでは治りづらい場合がありますので、より踏み込んだ治療が必要になります。原因によって治療内容は異なりますが、入院をして血管に直接点滴を流したり(静脈点滴)、食餌補助、全く食餌が摂れていない場合はチューブフィーディング(鼻、食道、胃にチューブを設置します)といった事を行います。

どれくらいで治るのか?

わんちゃんの下痢の原因によって治療期間は異なります。比較的軽度の下痢であれば数日から1週間程で良くなります。症状が重い急性下痢であれば、1,2週間程を目安に入院治療などが必要な場合は更に長くかかる場合があります。

慢性の下痢であれば、原因によって期間が大幅に変わりますが数か月から数年、生涯治療を続ける場合があります。

あくまでも目安ですので、わんちゃんの都度の状態によって獣医師と相談下さい。

病院へ行くべきかどうか?

下痢をしていても普段通りの元気さや食欲があれば一過性の場合が多く少しの間は様子を見ることができます。もし、「ドックランで遊んだな」「最近忙しくてお散歩行けていなかったな」など思い当たる点がありましたら、変化する前の状態になるべく戻しながら経過を見てあげましょう。

その場合の食餌量はいつもより少し少なめとし、腸を休めてあげましょう。
2,3日経過してもまだ下痢をしている場合は、動物病院を受診しましょう。

・元気がない
・吐いている
・うんちがいつもより黒い
・食欲がない
・何か飲み込んでしまった可能性がある
こういった場合は、なるべく早く動物病院を受診する様にしましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。わんちゃんの下痢の原因は沢山ありましたね。症状が軽い場合は、お家でゆっくりと過ごし食餌内容に気をつけながら過ごして下さい。もし、気になることがありましたらお気軽に獣医師にご相談下さい。また、下痢以外の症状が出ている場合は、なるべく早く動物病院を受診するようにしましょう。

どうぶつ病院 京都 四条堀川
獣医師 尾関康江