2024.09.03
こんにちは。
どうぶつ病院 京都 四条堀川の尾関康江です。
「最近飼い犬がよくお水を飲むけれど何か病気のサインだろうか?」
「飼い犬がよくお水を飲むとき、与える量は制限した方が良いだろうか?」
こんな疑問をお持ちではないでしょうか?
今回は犬を飼われている飼い主さんに
について解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、飼い犬の状態ケアにお役立て下さい。
多飲多尿とは薄い尿を沢山して、お水を沢山ほしがることをいいます。
飲む水と出る水は脳と腎臓で調節をしています。体から水分が大量に失われた場合、脳が変化を感知します。尿を作っている腎臓にお水を引き戻すための指令を出します(抗利尿ホルモン)。また、「喉の渇き」を刺激し飲水量を増やします。
何らかの原因でこの機構が障害を受けると、腎臓は正常な濃い尿を作れなくなります。
たくさん水を飲むから尿量が増えるわけではなく、尿がたくさん出てしまうので喉が乾いてたくさんお水を飲むということになります。「最近お水をよく飲んでいるためか、尿量が多いから少なめにあげよう」と調節されている飼い主さんもいらっしゃるかもしれません。これは原因によっては脱水が進行し、極めて危険なことなので避けて下さい。
飲水量の計測はペットボトルを用いると便利です。あらかじめペットボトルに飲水用の水を入れておき、そこから犬の器に給水していきます。1日の最後に残った水の量を測ればおおよその飲水量が確認できます。1日で、1kg当たり80cc以上飲んでいる場合は多飲です。
多飲多尿を示す代表的な病気を解説します。
腎臓病は腎臓の機能が低下していく病気です。腎臓は体の老廃物を尿として体外へ排出します。腎臓が十分に機能を果たせなくなると濃い尿をつくれず、薄い尿となっていきます。飲水量が増える以外に、体の脱水、貧血(血液が薄くなる)、食欲低下が認められます。
糖尿病はインスリンというホルモンが不足することで発症する病気です。インスリンとは細胞の中にエネルギーとなる糖分を移動させるホルモンのことです。インスリンが不足すると血液中の糖分は増え、過剰なものは尿中に漏れ出ます。これに伴い浸透圧の関係で体の水分が尿中に移動します(多尿)。体から抜けた水分を補充する為にお水を飲みます(多飲)体重減少、白内障が認められます。
副腎という臓器からステロイド様のホルモン(コルチゾール)が過剰に分泌される病気です。このホルモンが水分調節を担っている脳の働きを鈍らせることで多飲多尿の症状が認められます。他にお腹周りが膨らむ、毛が薄くなる、免疫力が落ちるなどの症状が認められます。
子宮蓄膿症は子宮内で細菌感染が起こり膿が溜まる病気です。不妊手術をしていない中〜高齢の犬で認められます。多飲多尿以外に、陰部から排膿、発熱、食欲が落ちるなどの症状が認められます。子宮蓄膿症は命に直接関わる重篤な場合もあるため注意が必要です。
中枢性尿崩症と腎性尿崩症に分かれ、尿を濃縮する働きがあるホルモン(バソプレシン)が減ることで発症します。
中枢性尿崩症は、脳がホルモンを合成・分泌できない場合に起こります。多くの場合は、脳の腫瘍や外傷が原因です。
腎性尿崩症は、脳の指令に対して腎臓がうまく反応できない場合に起こります。基礎疾患が隠れているか先天的に腎臓に問題がある場合が考えられます。
心因性多飲は比較的若い犬に認められます。腎臓やホルモン分泌に異常は認められず、ストレス等が原因と考えられています。
他に
などでも多飲多尿の原因となりえます。
多飲多尿は飼い主さんが気づきやすい症状です。飼い犬の飲水量が気になる時はまずは飲水量を測定してみましょう。また他にも気になる症状がある場合は、はやめに動物病院を受診するようにしましょう。
どうぶつ病院 京都 四条堀川
獣医師 尾関康江