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犬の尿失禁について|意識せずに排尿してしまう尿失禁について獣医師が解説

2024.09.10

こんにちは。
どうぶつ病院 京都 四条堀川 獣医師尾関康江です。

「飼い犬が尿漏れをするようになったのだけど年齢によるものだろうか?」
といった疑問をお持ちではないでしょうか?

今回は、犬の飼い主様に

  • 尿失禁の原因
  • 治療

について解説します。
ぜひ、最後までお読みいただき、飼い犬の尿トラブル時にお役立ていただければ幸いです。

尿失禁

尿失禁とは自分の意識とは関係なく無意識のうちに尿が漏れてしまうことを指します。代表的な尿失禁の原因を解説します。

膀胱括約筋の疾患

膀胱括約筋という膀胱の中に尿を溜めておく筋肉が上手く働かなくなる場合に、尿失禁が起こります。不妊手術後の雌犬や高齢犬で多く見られます。手術後や加齢に伴い女性ホルモンの分泌が少なくなることで、膀胱括約筋が緩みやすくなります。起きている時ではなく、寝ている時に尿が漏れてしまうことが特徴的です。

中枢神経の問題

脊髄に障害がある場合、神経の信号伝達が上手く伝わらず、尿を上手く溜めておくことができません。脊椎骨折、椎間板ヘルニア、脊髄腫瘍、脳腫瘍などが原因として挙げられます。

前立腺肥大

前立腺肥大は中高齢の未去勢雄犬に多く認められます。精巣から分泌される男性ホルモンにより前立腺が大きくなります。前立腺が腫大することで、近くにある直腸や尿道を圧迫します。

尿路感染症

膀胱や尿道に炎症があることで、尿意をコントロールできなくなる場合があります。

下部尿路の炎症

尿管、膀胱、尿道に結石や腫瘍がある場合、尿の流れが阻害されてしまいます。結石や腫瘍により粘膜が傷つくと炎症が起こり、尿が出づらくなります。結果尿失禁につながることがあります。

異所性尿管

異所性尿管とは先天的な尿路の構造異常で、大型犬に多く認められます。尿は本来腎臓で作られ、尿管という管を通って膀胱に運ばれます。異所性尿管の場合、尿管が膀胱ではないところにつながっています。膀胱に尿を溜めることができず、尿失禁につながります。

ホルモンの異常

ホルモンの異常に伴い尿量が増え、いつものトイレでは間に合わず尿漏れしてしまう場合があります。糖尿病、副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症といった病気が挙げられます。

認知症

認知症になると脳の機能が低下します。トレイの場所を忘れてしまったり、加齢に伴い膀胱の機能が低下し筋肉の収縮が弱くなります。

この他、行動学的な原因で尿失禁が起きている場合もあります。以下の場合は、基本的には一時的なもので、環境を整えたり成長していく過程で落ち着いていくことが多いです。

恐怖や不安

恐怖や不安を感じた場合に尿失禁する場合があります。雷、地震、騒音などによって思わず尿漏れしてしまうことがあります。引っ越しや新しい犬猫のお迎えなど環境の変化によっても生じる場合があります。

興奮

子犬の時期に多く認められ、「うれしょん」と呼ばれることもあります。嬉しかったり、はしゃいだ時に尿が出てしまう状態です。子犬の時期は尿を溜めておく尿道括約筋を自分でまだコントロールできないためです。

診断

飼い主さんからの情報を元に

  • 身体検査
  • 尿検査
  • レントゲン検査
    (必要に応じて造影剤をつかった検査を行う場合があります)
  • 超音波検査

を行い総合的に診断していきます。

  • 尿失禁が起きる状態(寝ている時、起きている時、歩いている時など)
  • 去勢、不妊手術の有無、手術の時期
  • 既往歴の有無(交通事故、椎間板ヘルニアなど)
  • 日常生活で気になることはないか(歩き方が変、排尿姿勢を取りにくいなど)

といった普段の生活の様子はとても重要な情報になります。受診時に獣医師に必ず伝えるようにしましょう。

治療

原因によって治療法が異なりますが、代表的なものは以下になります。

薬物療法

尿路感染の場合は抗生剤の使用、ホルモンが原因の場合はホルモンを補充する治療を行います。神経が原因の場合は、尿道括約筋を支配している神経に働きかける薬を使用します。

食餌療法

尿石症の場合は、療法食やサプリメントを利用し、結晶ができにくい状態にするなど予防することが可能な場合があります。

外科手術

尿失禁が外科処置にて改善できる場合は、治療の選択肢となります。

生活習慣

トイレの場所、時間や回数を工夫することも大切になります。適度な運動をすることも筋力維持に重要な役割をなしています。

まとめ

尿失禁は放っておくと2次的に皮膚トラブルが出たり、犬自身のストレスになる可能性があります。いつもと違う場所でトイレをしたり、トイレに時間がかかったりするなど心配事がある場合は動物病院を受診するようにしましょう。

どうぶつ病院 京都 四条堀川
獣医師 尾関康江