2024.09.17
こんにちは。
どうぶつ病院 京都 四条堀川 獣医師 尾関康江です。
「最近飼い犬が咳をしているけれど動物病院を受診した方が良いだろうか?」
「水を飲む時にむせるようになったけれど、何が原因だろうか?」
「子犬を迎え入れたけれど、時折咳をしている。様子を見ても大丈夫だろうか?」
といった疑問をお持ちではないでしょうか?
今回は、犬を飼われている飼い主さんに
について解説します。
ぜひ、最後までお読みいただき、飼い犬の健康ケアにお役立ていただければ幸いです。
一部、専門用語が含まれますのでご了承下さい。
咳とは外からの刺激に対する体の防御反応のことです。気道の中に入ったほこりや異物は、気道にある受容器と呼ばれるセンサーを刺激します。その信号が脳に伝わり咳が出ます。異物の他にも、気道に炎症があったり、痰がからんでいると咳の症状が認められます。
生理現象による咳は「カハっ」という乾いた咳が一時的に出て、おさまる場合です。きっかけとしては、冷たい空気、ほこり、興奮、リードの牽引、飲水が考えられます。
咳が持続的に出ている場合は、何らかの病気の原因になっている可能性があります。咳の原因となる病気、咳の症状について解説します。
心臓病を患っている犬の3〜4割で咳の症状が認められます。心臓病で咳が出る明確な機序はまだ分かっていません。考えられる機序として
心臓病が進行すると、肺につながる血管にも負担がかかり血圧が高くなります(肺高血圧症)。負担がかかった血管は、肺胞や気管支に分布している咳のセンサーを刺激すると報告されています。実際に肺高血圧を患っている犬の2割が咳の症状がみとめられています。
また、進行した心臓病では血液の流れが悪くなり、肺にお水が溜まるようになります。この時にも肺胞に分布する咳のセンサーが刺激されるとしています。
気管虚脱とは何らかの原因により気管が狭くなったり、潰れた状態を指します。気管は空気の通り道なので、狭くなると空気を通そうと咳が出ます。
始めは「カッ」「ケッ」といった乾いた咳で単発ですが、徐々に連続して出るようになります。またガーガーとガチョウの鳴き声のような咳になります。続くと呼吸困難になり、チアノーゼと呼ばれる酸素不足の状態となります。
遺伝的な要因が関与しているとされ、チワワ、ヨークシャーテリア、ポメラニアンなど小型犬で多く認められます。
ケンネルコフとは「犬の風邪」とされ、正式には犬伝染性気管気管支炎と呼ばれています。ウイルスや細菌が単独または組み合わさって感染して引き起こされます。特に子犬に認められ、ペットショップや繁殖所といった犬が集まる場所で広がりやすい病気です。
乾いた咳、鼻水、発熱などの風邪のような症状が認められます。自然に治ることもありますが、重症化すると2次感染を起こし肺炎になる場合もあります。ケンネルコフの予防に役立つのが混合ワクチンです。病原体となりえるウイルスが混合ワクチンに含まれますので、定期的な接種をしましょう。
子犬の時期はまだ、免疫力が低く少しのストレスや環境の変化でも体調を崩しやすい為、早めの受診をしましょう。
誤って飲み込んだ異物が喉や食道につまったり、刺さった場合、咳やえずく症状が認められます。異物を食べてしまったり、食後から急に咳こむ場合はなるべく早く動物病院を受診するようにしましょう。
逆くしゃみは病気ではないですが、咳と間違えられることがあります。鼻から息を吸い込むようなしぐさで、くしゃみを吸引している様にみえるため「逆くしゃみ」と呼ばれています。豚のようにぶーぶーという音や、ふがふがという音など見ていて呼吸が苦しそうに見える場合があります。背中をさすったり、鼻先に息を吹きかけて1〜2分程度で自然に治まる様であれば様子をみることができます。症状がつづく場合は、背景に何か隠れていたり、咳である可能性もあります。病的なものか判断する材料になりますので、動画を撮影し診察時に獣医師に見せるようにしましょう。
犬にも肺炎があります。細菌、ウイルス、寄生虫、カビ、誤嚥などが原因で起こります。痰が絡んだ様な咳をしたり、咳をした後に吐き戻すことがあります。重症化すると呼吸困難となり、酸素吸入や入院下での治療が必要になる場合があります。
犬の咳といっても様々な形があります。
このような症状が認められる場合は、急を要する可能性が考えられます。なるべく早めに動物病院を受診するようにしましょう。咳が数日ずっと続いている場合や吐き戻し、食欲低下が認められる場合も診察を受けることをおすすめします。
咳の原因は生理的な場合もあれば、背景に病気が隠れていることもあります。診断には、血液検査やレントゲン、超音波といった検査が必要になります。自宅での咳の様子も重要な判断材料になりますので、診察時に獣医師に伝えるようにしましょう。
どうぶつ病院 京都
獣医師 尾関康江