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犬のクッシング症候群|ホルモンの病気の中で最も多いクッシング症候群ついて獣医師が解説

2024.10.29

こんにちは。
どうぶつ病院 京都 四条堀川 獣医師 尾関康江です。

「動物病院で副腎の病気と言われたが具体的にどういったものだろうか?」
「最近お水を飲む量が凄く増えたが何か病気の可能性はあるだろうか?」
といった悩みをお持ちではないでしょうか?

今回は、犬の飼い主様に

  • 犬の副腎皮質機能亢進症とはどういうものか
  • 症状はどういったものがあるのか
  • 治療方法

について解説します。ぜひ、最後までお読みいただき、飼い犬の健康ケアにお役立ていただければ幸いです。一部専門用語を含みます。ご了承ください。

クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)とは

クッシング症候群とは腎臓の近くの副腎という臓器から、コルチゾールと呼ばれるホルモンが過剰に産生される疾患で、副腎皮質機能亢進症とも呼ばれます。過剰な分泌により犬の健康にさまざまな悪影響を与えます。5歳以上(多くは8歳以上)で認められることが多く、雄よりも雌で多く認められます。一般的にクッシング症候群と呼ばれます。

コルチゾール分泌の仕組み

コルチゾールの分泌は脳から出されるいくつかのホルモン連鎖によって行われています。

  1. 脳の視床下部と呼ばれるところから副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)が分泌される
  2. 脳の下垂体と呼ばれるところが反応し、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌が促進されます
  3. 副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が副腎皮質に作用し、副腎皮質からコルチゾールが分泌されます
  4. 血中のコルチゾール濃度が上がると、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)と副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌がそれぞれ抑えられ、コルチゾールが放出されないように調整されます。一連の動きをネガティブフィードバックと呼びます。

コルチゾールの働き

コルチゾールの働きは多岐にわたりますが、主な働きは以下の様なものが挙げられます。

  • 炎症や免疫を抑える
  • 血圧を維持する
  • 肝臓で糖を産生する
  • インスリンの働きを抑える

コルチゾールの分泌が増えると、働きが強くなりさまざまな悪影響をもたらします。

原因

クッシング症候群の原因は、主に3つに分類されます。

下垂体(脳)の問題

犬のクッシング症候群の8〜9割が下垂体に問題があります。

下垂体に腫瘍などの変化が生じると、下垂体から分泌される副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が過剰となります。それに伴い副腎からのコルチゾール分泌が増えます。

下垂体腫瘍の多くは腺腫と呼ばれる良性の腫瘍ですが、腺癌と呼ばれる悪性腫瘍も含まれます。

副腎の問題

副腎に腫瘍が発生したり、異常に肥大(過形成)するなどの変化が生じると、副腎から分泌されるコルチゾールが過剰になります。

副腎腫瘍の5割が良性、5割が悪性と言われています。

薬の影響

長期にわたりステロイド剤を服用しているとクッシング症候群の様な症状が認められます。

症状

クッシング症候群の症状はさまざまですが、一般的には以下のようなものがあります。

多飲多尿

お水を飲む量が増え、頻繁に排尿します。犬の飲水量は通常1日で1kgあたり60ml程です。(5kgの犬であれば300ml程です)1kgあたり100mlを超えてくると注意が必要です。

食欲亢進

いつも以上に食欲が増し、体重増加が認められます。

筋肉の委縮

コルチゾールには蛋白質を分解して、糖に変換する作用があります。この作用が強くなると、筋肉中のたんぱくは分解され筋肉が落ちます。

お腹が膨れる

筋肉が落ちるとお腹だけが目立って膨れたように見えます。さらに肝臓が膨れたり、内臓脂肪が増えることでより膨れて見えます。

皮膚の変化

皮膚が薄くなり、両側性に対称性の脱毛が認められます。皮膚にカルシウム成分が沈着し、ごつごつと硬くなる場合もあります。

その他

コルチゾールの産生が多くなることで脳、心臓、肝臓など他の臓器への影響をもたらします。

治療

クッシング症候群の治療は、検査でその可能性があっても症状が出てくるまで行われないことが多いです。

内科療法

内科治療は生涯必要になることがほとんどです。薬の作用は副腎の働きを阻害し、コルチゾールの分泌を抑えます。薬の副作用は、投薬により副腎の働きが過度に抑え込まれた時に生じます。副腎の機能が低下し、嘔吐、下痢、元気がない、食欲低下といった症状が認められます。治療を開始する場合は、獣医師から注意事項をよく聞き、状態をよく観察しましょう。

外科手術

副腎腫瘍が原因の場合は、外科的に摘出する場合もあります。下垂体腫瘍が原因の場合も外科手術や放射線療法を実施する場合があります。

副腎の近くには大事な血管があるためリスクの高い手術となります。また腫瘍の転移が認められる場合もあるため、獣医師と相談して進めましょう。

放射線療法

下垂体腫瘍は脳を圧迫したり、大きくなることで神経症状をもたらす場合があります。腫瘍が大きくなりすぎないよう放射線療法が併用される場合があります。

まとめ

犬のクッシング症候群はよく見られる病気の1つです。始めの頃は食欲が増すため病気と気づかれないことも少なくありません。日頃から飼い犬の食事量や飲水量、また息遣いなど気にかけて見てあげるようにしましょう。

少しでも気になることがあれば早めに動物病院を受診するようにしましょう。

どうぶつ病院 京都 四条堀川
獣医師 尾関康江