2024.11.12
こんにちは。
どうぶつ病院 京都 四条堀川 獣医師 尾関康江です。
「動物病院で甲状腺の病気だと言われたが、具体的にどうゆう病気だろうか?」
「最近、食欲はあるけれど痩せてきている気がする」
といった悩みをお持ちではないでしょうか?
今回は、猫の飼い主様に
について解説します。
高齢の猫でよく見られる病気ですので、ぜひ、最後までお読みいただき知っていただければ幸いです。一部、専門用語が含まれますのでご了承ください。
甲状腺機能亢進症とは、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで体の様々な臓器に影響を及ぼす病気です。犬よりも猫に多く見られ、特に10歳以上の高齢猫で多く発生します。
甲状腺ホルモンは甲状腺という臓器から分泌されるホルモンです。甲状腺は気管の両脇に1つずつ存在します。甲状腺ホルモンの働きは大きく3つに分かれます
脂肪や糖分を使ってエネルギーを作り出し、全身の細胞の新陳代謝を促します
脈が速くなったり、高血圧、興奮気味になります
甲状腺ホルモンの分泌が過剰になる原因ははっきりとは分かっていませんが、主に甲状腺、下垂体、投薬が原因だと言われています。
甲状腺の過形成または腫瘍化によって発生します。甲状腺の過形成や良性腫瘍によるものがほとんどです。過形成とは細胞が一定数以上に増え組織が腫れて大きくなることを指します。甲状腺の過形成には遺伝、免疫、食事、生活環境など様々な要因が関わっていると考えられています。
甲状腺機能亢進症の症状には以下の様なものがあります。
病態が進行すると
などが観察されます。
合併症として
があります。
初期のうちは病気であるにもかかわらず元気そうに見えるので、病院につれていくサインにはつながらないことが多いです。
中年齢以降は年に1-2回、健康診断を受けることをおすすめします。食欲があるものの痩せている、以前に比べて性格が変わった、眼がぱっちりとしているなど条件に当てはまる事柄があれば是非、動物病院を受診するようにしましょう。
代表的な治療には以下のようなものがあります。
経口薬は甲状腺ホルモンの合成を阻害し、甲状腺機能亢進症の治療に対して最も一般的なものです。ホルモンの産生を減少させるだけで、甲状腺そのものを小さくするわけではありません。投薬をやめると甲状腺ホルモンは上がってくるため、生涯にわたって投与する必要があります。
甲状腺ホルモンの材料であるヨードを制限した食事を与えるというものです。猫によって嗜好性は異なるため、食べられなかったり、このフード以外の食事やおやつを与えないという制限があります。
内科治療ではコントロールが難しい場合、甲状腺を摘出する手術をします。過剰にホルモン産生している甲状腺の組織の一部または全部を摘出します。適切に摘出された場合は、その後の治療は必要なくなります。
猫の甲状腺機能亢進症は中高齢の猫でよく見られる病気ですが、適切な治療によって上手くつき合うことができる病気の1つです。よく食べるのに痩せてきた、高齢なのに以前よりも元気、嘔吐・下痢の頻度が増えたなど気になる症状がある場合は早めに動物病院を受診するようにしましょう。定期健診や健康診断も飼い猫の体調変化に気づくきっかけとなりますので、年に1回は受けるようにしましょう。
どうぶつ病院 京都 四条堀川
獣医師 尾関康江