2024.12.17
こんにちは。
CUaRE どうぶつ病院京都 四条堀川 獣医師 尾関康江です。
「猫の膀胱炎はヒトと同じ原因なの?」
「愛猫が膀胱炎になったけれど何か注意できることはある?」
といった疑問を抱いておられませんでしょうか?
今回は、猫の飼い主様に
について解説します。
ぜひ、最後までお読み頂き、愛猫の泌尿器トラブル時にお役立てして頂ければ幸いです。
猫の膀胱炎とは、膀胱内で起きた炎症によって膀胱の機能に異常が生じる病気です。炎症の原因により細菌性、結石性、特発性に大別されます。膀胱はおしっこを一時的に溜めておくための器官で、おしっこがある程度の量になると収縮して体外に排出します。こうした機能が炎症により正常に働かなくなると、頻尿や排尿時の疼痛、不適切な場所での排尿といったさまざまな排尿障害が認められます。
特発性膀胱炎は原因がはっきりとせず、膀胱の問題以外に環境の変化やストレスなどが複合的に関与しているものです。猫の膀胱炎の中で1番多い割合を占めています。提唱されている原因には以下のようなものがあります。
細菌性膀胱炎は尿道から細菌が侵入し、膀胱に感染を起こすものです。一般的に細菌は大腸菌や皮膚の常在菌が多いとされています。細菌感染が起こり易い要因としては以下のようなものがあります。
雌猫の尿道は雄猫に比べて太く短いため、体内に細菌が入りやすくなります。
膀胱に結石や腫瘍があることで膀胱の粘膜が傷つき、細菌に対する抵抗力が弱くなります
異所性尿管や尿膜管遺残といわれる先天的な形態異常があることで感染しやすくなります。
尿石症は尿路のどこかでできた結石ができることです。結石や結晶が原因となって、膀胱の粘膜を傷つけ膀胱炎を起こすことがあります。さまざまな原因で結晶や結石ができますが、代表的なものには以下のようなものがあります。
一般的には秋から冬にかけて、飲水量が減りあまり動かなくなることから発生が多くなると言われていますが、夏も冷房がきいた涼しい部屋で過ごすため通年で発症しうるタイプです。
膀胱炎の症状は、形態によって少しずつ異なります。兆候として多い症状は以下の通りです。
症状が進行すると、次のような症状が見られることがあります。
膀胱炎の治療は、何が原因になって発症しているかによって治療方法が異なります。
動物病院では、飼い主様からの情報をもとに
を行うことで総合的に膀胱炎を診断します。
尿検査では尿中のpHや血液反応を評価します。尿を遠心分離し底に沈んでくる沈渣成分を顕微鏡で観察し、細菌や結晶、腫瘍性細胞の有無を確認します。
レントゲン検査や超音波検査は尿路結石や腫瘍の探索に活用されます。
猫の膀胱炎の治療は、不快感や痛みを緩和するためと生活環境を改善することを目的に行います。原因が分かっている場合は、その原因に対する治療を行います。原因によって内容は異なりますが、代表的な治療には以下のものがあります。
治療の一環として、下部尿路疾患専用の療法食を利用します。特発性膀胱炎の発症を減らすためには、不安やストレスを軽減する成分を含む食事が効果があるという報告があります。尿石症には、結晶のタイプにもよりますが結晶を溶かすための療法食がおすすめです。療法食は、治療効果を最大限発揮させるために、普段の食事やおやつと混ぜないようにすることが大切です。
おしっこが濃くなるのを防ぐために十分な飲水ができる工夫をしましょう。循環型給水器を使って新鮮な水を用意したり、水飲み場を複数設置してみます。食事にウェットフードを取り入れたり、ドライフードをお湯でふやかすことも効果的です。
細菌が原因となる細菌性膀胱炎では抗菌剤の投与を行います。炎症や痛みを伴う場合は、消炎鎮痛剤(NSAIDs)を処方することもあります。
特発性膀胱炎の場合は、環境整備や改善が猫のストレス軽減につながります。具体的には以下のようなことがおすすめです。
膀胱炎は繰り返しやすく、放置すると尿道閉塞や慢性腎臓病に移行する可能性があるため、注意が必要です。日ごろから水分摂取を心がけるとともに、気になることがあれば早めに動物病院を受診するようにしましょう。
CUaRE どうぶつ病院京都 四条堀川
獣医師 尾関康江