2025.01.07
目次
近年、動物医療が発展し犬の寿命も伸びてきています。長寿化が進み、認知症になるケースが増えてきていることから今回は、犬の飼い主様に
について解説します。
ぜひ、最後までお読みいただき、愛犬のシニア生活にお役立ていただければ幸いです。
認知症とは様々な原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったために認知機能が低下し、行動の変化が出てくる状態をいいます。夜起きている時間が長くなったり、異常な食欲が出たりなど、日常生活に支障をきたすほどの行動変化が見られるのが特徴です。
認知症は10歳から始まり、12、13歳くらいから急増します。高齢化するスピードは大型犬の方が小型犬よりも早い傾向があります。そのため、大型犬では8歳くらいから認知症への注意が必要です。
一般的に、柴犬、秋田犬、甲斐犬などの日本犬は認知症になりやすいという説がありますが、幅広い犬種で認知症が見られることがわかっています。犬の認知症のリスク因子についてはまだわかっていない部分も多いのが現状です。
認知症を発症すると様々な症状が出ます。代表的なものをいくつか解説します。
残念ながら、認知症に対する効果的な治療法は確立されていません。
大きくは、
で、症状の改善を図ります。
それぞれの治療法を解説します。
認知症に効果的な成分が含まれた食事やサプリメントが有効とされています。認知症ケアに効果的とされる成分を紹介します。
DHAやEPAはω3脂肪酸と呼ばれるもので、神経細胞を活性化させ情報伝達をスムーズにする働きがあります。青魚や魚油(クリルオイル、サーモンオイル)に多く含まれますが、熱に非常に弱いのでサプリメントから摂取するのがおすすめです。手作りフードに取り入れる際は、できるだけ新鮮で加熱を控えめにしたものにしましょう。
αリポ酸やLカルニチンは、ミトコンドリア補因子と呼ばれ脳神経をサポートします。脳神経は多くのエネルギーを必要としますが、そのエネルギーは細胞の中にあるミトコンドリアから供給されています。ミトコンドリアの機能は加齢と共に低下することが知られています。
ビタミンB群、C、Eなどの抗酸化物質は、脳神経の酸化ダメージをケアするとされています。抗酸化物質を豊富に含む食餌を与えると、高齢犬の記憶力と学習能力が改善し、認知テストのスコアが向上することが報告されています。
寝られない、昼夜逆転してしまっている、ずっと動き続けて止まらない、といった臨床症状に対して補助的に使う薬剤があり、主に不安感を下げたり、鎮静効果や催眠効果があるものが用いられます。不安感を下げたり、鎮静効果がある薬では攻撃性が強く出てしまう場合や、吠え続ける場合に使用されます。催眠効果がある薬は、眠りを誘うことができるため、昼夜逆転の改善を目的としています。
薬の副作用として脳の働きを低下させる場合があるため、結果的に認知症の進行や寝たきりになる可能性があります。
お薬での治療を検討するときは、獣医師とよく相談するようにしましょう。
認知症を発症したら、残念ながら進行を止めることはできません。犬が快適に過ごせるように環境を整えてあげましょう。例えば食事やトイレの場所までの間で段差をなくす、目が届かない時はサークルを設置し思わぬ怪我の予防に務めるなどがあります。
認知症は加齢が原因であるため完全に予防することは困難です。放置しておくとどんどん進行してしまうので、飼育管理を少し変えて症状の進行を遅らせることをおすすめします。メインの対策は毎日の生活で色々な刺激を与えることです。
体内時計は、人も犬も陽の光を浴びることで整い、リセットされるため、毎朝カーテンを開けて日光浴させることは大切です。生活リズムが整って気分転換もできるため、夜間に熟睡できるなど夜泣きの症状や夜の徘徊が軽くなることがあります。
筋肉の衰えや寝たきりを防ぐことは認知症の進行防止にもつながります。高齢になるにつれて動きたがらなくなりますが、足腰に痛みがない間は毎日運動させるようにしましょう。日中にしっかりと運動させれば、昼夜逆転の対策にもつながるため、認知症に対して有効な予防法といえるでしょう。お散歩に出て外の匂いを嗅いだり、土の上や草の中を歩いたりといった刺激を受けるのもおすすめです。
いつもと違う道や段差、坂道を歩いてみることで好奇心が沸き、良い刺激につながります。足元が悪いところを長時間歩くと関節や足腰を痛めてしまうことがあるので、様子を見て調整してあげて下さいね。道路脇に咲いている花や植物もおすすめです。
飼い主さんとのスキンシップは、わんちゃんの脳のストレス値が減り、脳内の神経活動が活発になります。スキンシップは犬が喜ぶ方法で良いですが、話しかける、マッサージをする、ブラッシングをするなどが挙げられます。マッサージやブラッシングは血行促進につながります。
認知症のような症状を認めても実は背景に病気が隠れている場合があります。認知症ではない可能性として以下のようなものがあります。
ある日突然、あまり動かなくなり、触ると怒ったり、怯えるような行動が見られたら「体に痛みがある」可能性を考えます。高齢犬の場合、長時間同じ姿勢を続けると体がこわばったり、使わない硬くなった筋肉を急に動かしたりすると痛みが出てくることもあります。
犬は痛みや不安があっても言葉が話せないので、痛みがある部分を守るために異常行動が出る場合があります。
おもらしをしたり、トイレを失敗する機会が増えてきた場合、「動くのが億劫になり間に合わない」「筋肉の衰えでトイレを失敗する」可能性を考えます。高齢になると体を動かすことがしんどくなったり、筋肉の衰えから排尿機能の低下が認められます。犬の生活スペースにトイレを設けたり、おむつを有効活用すると良いかもしれません。
昼夜逆転や夜泣きは体内時計の乱れによって起きている可能性があります。飼い主様が昼夜逆転の生活をしている場合、それに合わせて同じ生活リズムになってしまいます。また、日中活動せずに寝ていることが多い犬では夜目が覚めることが多い傾向にあります。
仕事のない日や犬と過ごせる日は、朝になったら日光を浴びさせ、昼間は外に連れ出したっぷり遊んであげるようにしましょう。徐々に体内時計が戻り、夜に眠りやすく夜泣きがすくなくなる可能性があります。
愛犬が認知症になってしまうと、不安と介護のストレスから、飼い主様にも負担が掛かってしまいます。症状に応じた必要な対処をすることで、少しでも認知症の進行を緩和させることができます。何か困っていることなどがあればぜひ当院にご相談下さい。
監修:CUaRE 動物病院京都 四条堀川