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犬アトピー性皮膚炎(CAD)|アトピー性皮膚炎の原因・治療について獣医師が解説

2025.01.14

こんにちは。

「皮膚炎を何度も繰り返すけど何が原因なの?」
「愛犬がアトピーの治療をしているけれど治るの?」
「薬の投薬以外に良くなる方法ってあるの?」
といった愛犬の皮膚トラブルでお悩みをおもちではないでしょうか。

今回は、犬の飼い主様に

  • アトピー性皮膚炎の症状
  • 原因はどんなものがあるか
  • 治療方法

について解説します。
ぜひ、最後までお読みいただき、愛犬の日常のケアにお役立ていただければ幸いです。

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎とは主に環境アレルゲンに対して過敏に反応することで持続的に痒みが起こる皮膚疾患です。症状は、主にハウスダストマイト(室内ダニ)、花粉やカビに対して過剰な免疫反応が起こることで生じます。遺伝的な要因が背景にあるため、生後6か月〜3歳くらいで症状が現れることが多く、年齢を追うごとに重症化する傾向にあります。

アトピー性皮膚炎の皮膚症状

皮膚症状は主に痒み、皮膚の赤み、発疹で、痒みが最も顕著な症状です。

症状が認められる場所は主に、

  • 眼や口の周り
  • 足先
  • お腹 

です。
発疹は皮膚を掻くことできます。皮膚を掻き続けるとフケが増え、毛は脱毛し、潰瘍をつくります。これが繰り返されると皮膚が厚くなり、黒い色素が沈着します。

皮膚以外の症状

アトピー性皮膚炎では皮膚以外にも症状が認められることがあります。

アトピー性皮膚炎では外耳炎の併発が多く認められます。

  • 耳が赤い
  • 耳垢が多い
  • 耳の中が臭い
    といった症状が認められます。
    外耳炎による炎症が慢性化すると、耳の内側の皮膚がゴワゴワに厚くなり、耳の穴が狭くなります。

アトピー性皮膚炎では結膜炎の併発が認められることがあり、約60%でアレルギー性結膜炎がみられるという報告があります。

アトピー性皮膚炎の原因

アトピー性皮膚炎が生じるまたは、悪化する要因にはいくつかあり、以下のようなことが関与しているとされています。

遺伝的素因

遺伝的な素因が大きく関与しており、アレルギーを起こしやすいアトピー素因をもつ犬種で発症しやすいです。

日本では、

  • 柴犬
  • フレンチブルドック
  • シーズー
  • ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
  • ゴールデンレトリバー
  • ラブラドールレトリバー

で発症する可能性が高いとされています。

上記以外の犬種でも発症することがあるため、注意が必要です。

環境中のアレルゲン

環境中のアレルゲンに対して異常な免疫が働くことでアトピー性皮膚炎を起こします。主な環境アレルゲンには、

  • ハウスダストマイト(室内ダニ)
  • 昆虫
  • 植物(雑草、牧草、樹木など)
  • 細菌
  • カビ

などがあります。
特に室内飼育の犬では、ハウスダストダストによる発症が多いことから注意が必要です。

皮膚のバリア機能

健康な皮膚では皮膚バリア機能が働くことで外界からの異物や刺激の侵入を防いでいます。アトピー性皮膚炎の犬ではこのバリア機能が低下していることで、アレルゲンが容易に入り込んでしまいます。

分泌腺の異常

アトピー性皮膚炎の犬では皮脂腺や汗腺などの分泌腺の異常を併発することも少なくありません。

皮脂や汗の分泌が乏しく不足してしまうと乾燥肌は悪化します。一方で脂や汗の分泌が過剰になってベタベタとした皮膚になる場合もあります。

常在菌

健康な犬でも皮膚表面に常在菌がいます。アトピー性皮膚炎の犬では、常在菌であるブドウ球菌やマラセチアが増えやすいです。常在菌が異常に増えると皮膚の障害やアレルギー反応が起こります。

アトピー性皮膚炎の診断

アトピー性皮膚炎の診断を行うことができる特定の検査はありません。

まず他の皮膚疾患がないか除外診断を行います。アトピー性皮膚炎に似た皮膚疾患としては、膿皮症やノミアレルギー性皮膚炎、ノミ・ダニの感染が挙げられます。

アトピー性皮膚炎では以下のような特徴があることが多いです。

  • 年齢
    多くは3歳までに発症します。
  • 好発犬種
    遺伝的な素因がある犬種で発症しやすいです。
  • 飼育環境
    主に室内飼育の犬で認められます。
  • 皮膚病変の特徴
    顔や耳、首の内側やお腹、腋の下や股、手足やお尻周りに皮膚病変が認められます。耳介辺縁や腰背部には病変がないことが一般的です。
  • 治療反応
    ステロイドの薬で痒みがおさまります。
  • 慢性的な感染症
    マラセチア増殖による皮膚炎の併発が多いとされています。

アレルギー検査

血液検査でアトピー性皮膚炎かどうか分からないのといった疑問を抱かれる飼い主様もいらっしゃるかもしれません。残念ながら、血液検査はアトピー性皮膚炎の確定診断にはならず補助的な検査です。アレルゲンに対して体が反応しやすいかどうかを調べます。原因が特定されれば、できるだけそのアレルゲンを回避することが症状の緩和につながります。全ての検査項目が陰性と判断されても、アトピー性皮膚炎を否定することはできないため、治療内容は獣医師と相談して進めましょう。

アトピー性皮膚炎の治療

アトピー性皮膚炎は残念ながら完治は難しいとされています。複数の原因が絡み合って起こるため、複数の治療を組み合わせて症状の軽減を図ります。

具体的な内容は以下のようなものがあります。

薬物療法

よく耳にするのは薬による治療ではないでしょうか。ステロイド剤や分子標的薬、免疫抑制剤、抗ヒスタミン剤などを服薬して、症状を抑えます。分子標的薬は痒みを生じさせる生体の連鎖反応を途中でブロックするお薬です。ステロイド剤や分子標的薬は即効性がありますが、やめると再発してしまうことが多いです。

注射薬による治療として組み換え犬インターフェロン-γ、減感作療法があります。これらは体質改善により症状の改善を目的として使用されます。

スキンケア

皮膚の表面に付着した環境アレルゲンを取り除いたり、常在菌の管理に対してシャンプーは有用です。シャンプー後の保湿や日常的な保湿は、乾燥を予防し、皮膚バリア機能を高める効果もあります。

アトピー性皮膚炎の皮膚は皮膚バリア機能が低下しているため、シャンプーや保湿剤の選択には注意が必要です。獣医師に相談の上、適切なスキンケアを実施しましょう。

生活環境の改善

アトピー性皮膚炎はハウスダストに過剰反応することが多いことから、室内を定期的に清掃することが大事です。掃除を小まめにすることで、症状が軽減されたり、薬の量を減らせることがあります。空気清浄機を設置する方法もおすすめです。

まとめ

アトピー性皮膚炎は遺伝的な要因もあるため完治することが難しい病気です。かゆみを適切に管理することで、症状と上手くつき合い愛犬と楽しく暮らすことが可能です。

動物病院 京都 本院では定期的な皮膚専門科外来を設けています。愛犬のことでお悩みをお持ちの飼い主様はぜひご相談下さい。

監修:CUaRE 動物病院 京都 四条堀川