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猫の肥満細胞腫|小さくても注意が必要な皮膚腫瘍について獣医師が解説

2025.01.21

こんにちは。

「愛猫にできものができたけど小さいので様子見て良いだろうか?」
といった疑問をおもちではないでしょうか?

実は、サイズが小さくても注意が必要な場合があります。
今回は、猫の飼い主様に

  • 肥満細胞腫とは
  • 症状はどんなものがあるか
  • 治療方法

について解説します。
ぜひ、最後までお読みいただき、肥満細胞腫について知っていただければ幸いです。

肥満細胞腫とは

肥満細胞腫とは免疫細胞の1種である肥満細胞が腫瘍化した悪性腫瘍です。

肥満細胞は、免疫系に関与する細胞の仲間で、アレルギー反応を引き起こす役割を担っています。皮膚にできる「皮膚型肥満細胞腫」と内臓にできる「内蔵器型肥満細胞腫」の2つに分かれます。

皮膚型肥満細胞腫

皮膚型肥満細胞腫は皮膚腫瘍の中で2番目に多いもので、約20%を占めます。虫刺されのような小さなものから米粒大の大きさまで、初期は症状がないことから飼い主様が気づきにくいことがあります。頭(特におでこや耳)、首にできることが多いので日頃からその付近を触ってチェックしてあげるようにしましょう。

内臓型肥満細胞腫

内蔵型肥満細胞腫は主に脾臓と消化管に発生します。

脾臓にできた肥満細胞腫は、肝臓やリンパ節に転移することが多く、発見された時点で血液中にも腫瘍細胞が出ていることも少なくありません。

消化管にできた肥満細胞腫は悪性度が高く、予後が悪いとされています。

肥満細胞腫の症状

皮膚型

腫瘤は頭部や首にできることが多いですが、体のどこにでも発生します。
腫瘤がある以外は無症状のことが多いです。
ただし、肥満細胞腫はヒスタミンやヘパリンという物質を放出するため、皮膚の炎症やかゆみを起こす場合もあります。他の皮膚疾患でも同様な症状がでることから見た目だけでは判断できません。
また、腫瘤の数は、1つだけのこともあれば、全身の皮膚に多発することもあります。

内蔵型

脾臓が腫大して消化管を圧迫したり、腫瘍が消化管に発生する場合、蠕動運動機能を低下させるため、食欲不振や嘔吐などの消化器症状を伴うことがあります。

肥満細胞腫の診断

肥満細胞腫の診断には細胞診(FNA)が用いられます。しこりなどの病変部に細い針を刺して細胞を採取し、採取した細胞を顕微鏡で調べる検査です。肥満細胞腫であれば、特徴的な細胞が取れるので、多くの場合は院内で診断が可能です。

皮膚に5か所以上の腫瘍がある場合は、内蔵からの転移の可能性もあります。X線検査やエコー検査で脾臓や消化管に異常がないかを確認することが大事です。

最終的にはCT検査にて全身の転移の有無を確認します。手術が適応であれば、摘出した腫瘍を病理組織検査し確定診断します。

肥満細胞腫の治療

肥満細胞腫の治療は腫瘍のタイプや進行度合いによって異なります。代表的な治療方法は以下のようなものになります。

外科治療

皮膚型の場合

皮膚型リンパ腫の場合、基本的に外科手術が選択されます。腫瘍の周辺にも腫瘍細胞が散らばっていることがあることから、腫瘍から離れた部分まで広げて切除します。腫瘍を取りきれた場合、経過良好なことが多いです。腫瘍が多発していたり、転移している場合は取り切れないことがあります。

内蔵型の場合

脾臓に腫瘍ができている場合は、外科的に脾臓を摘出をします。消化管に腫瘍ができている場合は、消化管切除を行います。ただし、消化管の広範囲にできている場合や血液中に肥満細胞が出ていて転移がある場合は手術が不適応になることもあります。

化学療法(抗がん剤)

化学療法は以下のような場合に、使用されることがあります。

  • 腫瘍が大きすぎて切除できない
  • 皮膚の腫瘍が多発している
  • 全身に転移している

犬では薬剤の標準的な使用方法・治療スケジュールが定められていますが、猫での化学療法の効果に対する十分なデータがありません。

分子標的薬

分子標的薬は近年よく使われるようになった新しいタイプの抗がん剤です。

従来の抗がん剤は正常な細胞も含め全ての細胞に対して攻撃していたのに対し、分子標的薬は病気になった細胞(腫瘍細胞など)にのみ働きかけます。正常細胞へのダメージが軽減できることから、副作用は軽度だとされています。

放射線療法

肥満細胞腫は一般的に放射線療法に感受性が高いとされています。取り切れなかった肥満細胞腫に対して根治を目指して実施されることがあります。

治療実施可能な施設が限られること、頻回の通院・麻酔が必要になること、費用が比較的高額というデメリットがあります。

投薬

胃粘膜保護剤、抗ヒスタミン剤、ステロイド剤を併用してヒスタミンによる症状を抑えます。肥満細胞から分泌されるヒスタミンによって胃潰瘍を起こす可能性があるからです。

まとめ

皮膚にできる肥満細胞腫については、日ごろから愛猫の体を触ってチェックすることで早期発見ができます。もし何か異常を見つけたら、様子をみるのではなく、早めに当院にご相談下さい。動物病院 京都 本院では定期的に皮膚科専門外来を設けていますので、診察をご希望の場合は是非お問合せ下さい。

監修:CUaRE 動物病院 京都 四条堀川