矢印健康診断
診療予約

ブログ

  • ホーム
  • ブログ
  • 犬が寝すぎている?|正常な睡眠時間と病気のサインを獣医師が解説

犬が寝すぎている?|正常な睡眠時間と病気のサインを獣医師が解説

2025.07.08

「うちの愛犬、最近寝てばかりいるけれど大丈夫?」
「犬が寝すぎているのは病気のサインなの?」
と心配になることはないでしょうか?

どうぶつの睡眠時間は人間とは大きく異なり、1日の大半を眠って過ごすのが正常です。しかし、いつもより明らかに長時間寝ている場合や、他の症状を伴う場合は注意が必要なケースもあります。

今回は、犬の飼い主様に

  • どうぶつの正常な睡眠時間
  • 病気が疑われる症状

について解説します。

ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の健康管理にお役立て頂ければ幸いです。

犬の正常な睡眠時間はどのくらい?

犬の基本的な睡眠時間

成犬の場合、1日12~14時間程度の睡眠が正常とされています。これは人間の睡眠時間の約2倍にあたります。

犬は人間と異なり、一度に長時間眠るのではなく、短時間の睡眠を何度も繰り返す「多相睡眠」というパターンを取ります。

犬が元々野生動物だった頃に備わった機能で、深い眠り(ノンレム睡眠)に入るよりも浅い睡眠(レム睡眠)を何回も繰り返すことで自分の身を守っていたとされています。

年齢による睡眠時間の違い

どうぶつの睡眠時間は、年齢によって大きく変化し、以下のような特徴があります。

子犬(生後6ヶ月まで)

  • 1日18~20時間程度
  • 起きている間に沢山エネルギーを消費するため、回復に長時間の睡眠が必要
  • 生活の中心は食事と短時間の遊び

成犬(1歳~7歳頃)

  • 1日12~14時間程度
  • 成長のピークを超えた頃から睡眠時間が短縮
  • 最も活動的な時期で、睡眠と活動のバランスが安定
  • 日中の散歩や遊びによって睡眠の質も向上

老犬(8歳以降)

  • 1日14~18時間程度
  • 体力の低下に伴い、休息時間が増加

若齢期と高齢期には睡眠時間が長くなるのが自然な現象です。急激な変化や他の症状を伴う場合は、病気の可能性も考慮する必要があります。

犬種やサイズによる睡眠時間の違い

犬が寝すぎているかどうかを判断する際は、犬種やサイズによる特徴も考慮することが重要です。体の大きさによって、必要な睡眠時間に違いがあります。

  • 小型犬:10~12時間
  • 中型犬:12~14時間
  • 大型犬:14~16時間

一般的には小型犬や中型犬が、大型犬に比べて睡眠時間が短い傾向があります。大型犬は体が大きい分、より多くのエネルギーを消費し、回復に時間がかかるためです。

フレンチブルドッグやパグなどの短頭種は、呼吸器の構造上、鼻から喉にかけての構造が細いため、いびきをかきやすく睡眠の質が低下しがちです。睡眠時間の長さだけでなく、呼吸の状態や睡眠中の様子も合わせて観察してあげましょう。

犬が寝すぎる場合に考えられる原因

「愛犬が、最近よく寝ているけど大丈夫かな?」と心配になる飼い主さんも多いでしょう。犬が寝すぎていると感じても、多くの場合は問題ありません。以下のような理由で睡眠時間が長くなります。

季節や天気の影響

犬の睡眠時間は日照時間と関係があると言われています。梅雨の時期や寒い冬は、日照時間が短くなることから、自然と睡眠時間が増えます。

年齢による変化

子犬は成長のため、老犬は体力低下により、自然と睡眠時間が長くなります。特に8歳を過ぎた老犬では、以前より長時間眠るのは正常な変化です。

生活環境の変化

引っ越しや新しい家族の増加など、環境の変化に慣れるまでの間、いつもより多く眠ることがあります。これは一時的なもので、慣れれば元の睡眠パターンに戻ります。

運動量の調整

前日にいつもより長時間散歩したり、ドッグランで思い切り遊んだ翌日は、疲労回復のため長時間眠ることがあります。

病気の可能性があるサインとは?

犬が寝すぎている場合だけでなく、睡眠パターンの変化全般に注意が必要です。以下のような症状がある場合は、病気が隠れている可能性があります。

注意が必要な睡眠の変化

以下のような睡眠の変化があれば早めに獣医師に相談しましょう。

  • 呼びかけに反応せず、強い刺激を与えないと起きない
  • 起きてもすぐにまた眠ってしまう
  • 一日中ほとんど眠り続けている

犬の睡眠時間が極端に長い場合に疑われるのは、ホルモン(内分泌系)や中枢神経系などの疾患です。

逆パターン:眠れない場合

体のかゆみや痛み・下痢・嘔吐がある場合は、逆に睡眠時間が短くなることもあります。また、シニア期では「夜泣き」や「昼夜逆転」など夜しっかり眠れない場合もあります。犬が寝すぎていても、睡眠不足でも、どちらの変化も重要な病気のサインです。

病気を疑うべき併発症状 

犬が寝すぎている時に、以下の症状を伴う場合も、早めの受診が望ましいです。

  • 食事を全く食べない、または食べる量が大幅に減った
  • 水を飲む量が急激に増えた、または全く飲まなくなった
  • 寝る姿勢に変化がでる
  • 体を痛がる様子がある
  • 嘔吐・下痢を伴う

睡眠時間の増加に関連する病気は?

睡眠時間の原因として隠れている病気のいくつかを解説します。

甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症は内分泌系の病気のひとつです。生きるためのエネルギー代謝が低下するため、疲れやすさや行動意欲の消失により犬が寝すぎる傾向があります。

以下のような見た目の変化に注意しましょう。

  • 若いのに運動をしたがらない
  • 異常なくらい寒がりになる
  • 脱毛、毛が生え変わらない

椎間板ヘルニアや関節疾患

動くのが億劫になり、犬が寝すぎる時間が増えることがあります。逆に体の痛みによりあまり眠れなかったり、寝る姿勢が変わる場合もあります。

チェックするポイントは以下の通りです。

  • 歩き方に違和感がある
  • 体を触ろうとすると嫌がって怒る
  • 腰を丸めてうずくまるような寝方をする

血糖値異常(低血糖・糖尿病)

糖尿病の加療中やキシリトールなどの毒性物質の誤食後に、血糖値が極端に低下した状態でも睡眠時間が病的に長くなる「嗜眠(しみん)」という状態になることがあります。

以下のような症状がある場合は、なるべく早く動物病院を受診しましょう。

  • 急に元気がない
  • 足元がふらついている
  • 体が冷たい

犬の睡眠環境を整えるポイント

犬が長く寝ている原因が、病的なものではないと判断された場合は、以下のようなポイントに注意して環境を整えてあげましょう。

犬が安心して眠れる寝床選び

犬は本来、狭くて囲まれた薄暗い場所に安心感を持ちやすいどうぶつです。以下の点を考慮して寝床を選びましょう。

  • 体格に合わせたサイズのドーム型ベッドやクレート
  • ケージに屋根をつけるなど、周囲を囲う
  • 体圧分散できるクッション性のあるマットレス
  • 通気性の良い布地

また、シニアで関節疾患や寝たきりになりがちな場合は、高反発性の介護用ベッドがおすすめです。

犬の睡眠に最適な室温・湿度管理

犬の過ごす環境が暑すぎても寒すぎても安眠できません。理想的な室温は22℃前後、湿度は50〜60%程度です。

夏場は、冷房など空調管理と共に通気性の良いベッドや冷感マットを使用しましょう。逆に冬場は、低温やけどに注意しながら、ベッド周辺に毛布を追加して暖を取ってあげましょう。

睡眠の質を高める日中の過ごし方

日中に十分な散歩や遊びを通して体力を使うことで、ノンレム睡眠(深い眠り)の時間が増え、睡眠の質が高まると言われています。また、適度な運動は脳に良い刺激を与え、認知症予防や筋肉量の維持につながります。

清潔な睡眠環境の維持方法

ベッドが不衛生だと、かえって眠りの質が下がってしまいます。犬は人よりも皮脂が多く抜け毛やフケも多く出るため、ベッドの繊維にダニや雑菌が繁殖しやすくなります。小まめに洗濯や掃除をしてあげましょう。

まとめ

犬が寝すぎていると心配になる飼い主さんは多いですが、犬の睡眠時間は人間の約2倍が正常であり、多くの場合は心配する必要がありません。異常に長い場合は一度動物病院を受診しましょう。

監修:CUaRE 動物病院京都 四条堀川