当グループでは、本院の獣医師 坂口が比較眼科学会に所属しています。わんちゃんねこちゃんの眼科トラブルに対し、最新の知識、治療法を用いて実践し、適切な診断及び治療を心がけています。目が赤い、目が痛そう、目やにが止まらない、目が見えていないなど気になる症状がありましたら、相談していただければと思います。目の病気は点眼薬を使用することになりますが、うまく点眼できないと悩まれる方も多く見受けられますので自宅での正しい点眼のやり方もお伝えしています。なお、点眼薬について当院では各目的に細かく応じたものを多種用意しております。
このページでは本院である動物病院 京都の過去診察データから特に発症が多いと思われる以下7つの疾患をピックアップし、その症状の特徴や当院での対応を説明致します。なお当たり前ではありますが、診察において当院獣医師は個別状況をよく確認してから判断致しますので、ここに記載している対応方法と実際の対応方法は必ずしも同じにはならない可能性がございます。
目の白目部分が充血して赤くなります。ひどくなると、目をまぶしそうにしょぼしょぼしたり、目ヤニや痒みが出てきます。
結膜(瞼の裏~目の白めの部分)に見られます。
目が出ていて眼球が傷つきやすい犬種(パグ、フレンチ・ブルドッグ、シーズーなど)、あるいは猫全般(特に子猫)で好発します。
急性の結膜炎は、主に感染やアレルギーで起こります。目の周りの毛が眼球を刺激したり、目をこすって傷がついたり、またシャンプー・薬品が目に入ることでも起きます。ドライアイや緑内障など、他の目の病気が根本であることもよくあります。 標準的な治療としては、角膜保護剤、抗生剤や抗炎症剤の点眼を行いますが、結膜炎は色々な原因によって起こりますので、漫然と薬を処方するのでなく、原因をしっかりと診断し、適切な点眼薬(人口涙液や角膜保護剤、抗生剤など)を選択します。結膜炎は放っておくと、目をこすって角膜が傷つくなどで慢性化しやすいため、早期の適切な対処が必要になります。
結膜炎と同様の症状が起きたり、目の黒目部分に血管が伸びてきたり、目の表面が真っ赤になったりします。
角膜(目の黒目の部分)に見られます。
単純な傷からの角膜潰瘍・びらんはどの動物・年齢でも起こります。再発性の角膜上皮びらんはトイプードル、ウェルシュコーギー、ラブラドール・レトリーバー、ボストン・テリア、ボクサーなどで好発します。
角膜潰瘍・角膜びらんとは目にできた傷のことで、傷を浮かび上がらせる特殊な染色液(フルオレセイン染色)を用いて、その傷を確認することができます。単純な傷であれば、角膜保護剤(ヒアルロン酸)を使用することで7-10日ほどで治ります。治療しても治らない場合は、単純な傷ではなく、感染や異所性睫毛(逆さまつ毛)、ドライアイ、免疫の異常によって持続的に刺激を受けてしまっている可能性があります。当院の治療では、原因をしっかりと確認し、抗生剤やステロイド剤、免疫抑制剤(シクロスポリン)、逆さまつ毛であればレーザーによる脱毛、角膜の表面の外科処置(角膜格子状切開、コンタクトレンズ装着)などを適切に選択しています。角膜潰瘍は放置すると、角膜の傷が深くなり、場合によっては目に穴が開いてしまうこともありますので、その時の傷の深さをこまめにチェックし傷の治り具合に応じ段階的に治療を加えていきます。
涙が多くあふれ、目の周りの毛が赤褐色に変色します。
涙の溜まりやすい目じりに見られます。
鼻の短めな犬種(フレンチ・ブルドッグ、シーズー、トイプードル、マルチーズなど)や猫種(ペルシャ、エキゾチックショート・ヘアーなど)で好発します。
流涙症の原因は、角結膜が刺激されて起こる痛みで涙の分泌が過剰になっている場合と、鼻涙管(目から鼻に涙が抜ける経路)が詰まっている場合があります。目をしょぼしょぼしていたり、充血や目やにが多い場合は目の刺激からの流涙症と考えられます。涙が多いだけで、ほかの症状がない場合は、鼻涙管の詰まりや狭さが原因と考えられます。目の傷の確認に使用するフルオレセイン染色液を用いて、涙が鼻に抜けているか確認します。当院では、鼻涙管が狭い場合は、眼瞼のマッサージや目の周りを温めることで筋肉を弛緩させて涙が鼻に抜けやすくします。カテーテルを目じりにある涙点に挿入して鼻涙管を洗浄することもあります。涙やけは放っておくと涙で濡れた部分が皮膚炎を起こすことがありますので、目の周りの消毒や外用薬を使用することもあります。
目から潤いがなくなったり、何度ふいても出てくる粘っこい目ヤニがよく起こります。また目をかゆそうにこすったり、充血がきつくでます。
左右どちらの目にも発生します。
パグ、シー・ズー、ペキニーズ、ブルドッグ、アメリカン・コッカースパニエル、ヨークシャー・テリア、ウェスト・ハイランド・ホワイトテリアなどで好発します。猫での発生はまれです。
ドライアイは、免疫の異常で涙腺が破壊されて涙がでなくなったり、感染やアレルギーにより眼瞼が炎症を起こして涙の油成分が分泌減少し、涙が渇きしやすくなることで起こります。診断にはシルマーティアテストという検査で涙液量の減少を確認します。ホルモン疾患(甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症、糖尿病)が根本になっていることもありますので、血液検査を必要に応じて行います。治療としては、角膜保護剤(ヒアルロン酸)や抗生剤、免疫異常による場合は免疫抑制剤(シクロスポリン)を使用します。ドライアイは続発性のものであれば、根本原因を治療すれば改善されますが、先天性や免疫異常が原因である場合は長期投与が必要になりますので、定期的な検診を行って薬による副作用が出てこないかを確認していく必要があります。ドライアイは放置すると、角膜潰瘍に繋がりますので早めに治療していく必要があります。
目の黒目部分が白くなってきます。
水晶体に発生します。
若齢性白内障はプードル、アメリカン・コッカースパニエル、ミニチュア・シュナウザーで好発します。猫でも発生しますが、多くはないです。
黒目が白く見えてきたという場合、白内障と核硬化症が考えれます。白内障は、水晶体という目の中にあるレンズが白く濁ってくる病気です。白内障は加齢に伴って発症することが多いですが、遺伝性の問題から若くても発症したり、他の病気(糖尿病や低カルシウム血症など)から併発することがあります。白内障が進行すると、水晶体が光を通さなくなり視力がなくなってしまいます。核硬化症は、加齢によって水晶体が硬くなった状態で、こちらは視力には影響ありません。 白内障は、内科的な治療では回復は望めず、根治治療は外科手術に限られます。白内障の治療点眼薬というものも販売はされていますが、ほとんどの場合効果はあまり認められません。白内障から続発的に目の中で炎症が起きて緑内障につながることがありますので、予防的に抗炎症剤を使用することがあります。手術を希望される場合には、白内障の進行度によって手術ができないことがありますので手術可能か当院にて適切に診断し、眼科専門医を紹介しております。白内障の手術は緊急性が高いものではありませんので、目が白くなってきたなと感じた場合は、まず相談していただければと思います。
まぶたにポチッとした出来物がある、目が痛そう、充血がひどい、瞬膜(しゅんまく)がでてくるなどの症状が見られます。
まぶたに発生します。
主に中高齢の動物に多く起こります。猫よりも犬で発生が多くみられます。
犬にできた場合は良性のマイボーム腺腫(いわゆる「おでき」)が多いですが、猫にできた場合は悪性腫瘍であることが多いです。まぶたにできる腫瘍は、外から見たら小さくても、まぶたの内側にまで出ている場合があります。内側に出ていると、まばたきするごとに角膜が傷ついたり、自分でまぶたを引っ掻いて、潰れて出血や感染を起こすこともあります。まぶたの腫瘍の「おでき」が眼球にこすれるなどしてダメージを与える場合が多いため、当院の治療としては、小さくても良性であっても、大きくなる前に外科的に完全切除することをすすめています。
目を痛そうにしたり、目が大きくなってきたり、黒目が緑に見える、目が見えていなさそうといった症状が見られます。痛みのせいで元気がなくなる、食欲が落ちるといった症状が出ることもあります。
主に左右どちらか一方に発生し、数か月後に反対側にも発症することがあります(原発性、他に目の疾患がなく、遺伝性の場合)。
柴犬、シーズー、アメリカン・コッカースパニエル、ビーグルで好発します。猫でも発生しますが、多くはないです。
眼圧(目の硬さ)は、目の中の水分が産生と流出を繰り返されることによって一定に保たれています。緑内障は、水分が流出できず眼圧がどんどん上昇することで発症し、網膜や視神経が圧迫されて失明に至ります。緑内障は、原発性(他に目の疾患がなく、遺伝性のもの)と続発性(炎症、水晶体脱臼、眼内出血により流出路が詰まる)に分けられます。 標準的な治療として、急性期(発症から数時間)であれば視力が回復する可能性が残されていますので、応急処置としてマンニトール(利尿剤)、眼圧降下点眼剤を用いて、正常眼圧・視力の回復を目指します。慢性期(発症数日経過~)になってしまっていた場合は、視力回復は難しく、痛みのコントロールが治療目的になります。内科的な治療でコントロールできない場合、当院では外科的処置(レーザーによる毛様体凝固術、眼球摘出術、シリコンインプラント義眼挿入術)を実施しています。 緑内障の治療は発症からの治療開始までの時間勝負です。ただの結膜炎かと思って経過を見ていたら手遅れになることがよくあります。当院では、眼圧計を用いて眼圧を測定し、緑内障を迅速に診断しています。目の痛みを訴えている場合は、家で様子を見ずに早めに病院に連れてきてあげるようにしてください。
文責:獣医師 坂口