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不整脈|放っておいてはいけない不整脈と診断に有用な心電図検査について解説

2025.01.28

飼い主さんの中には健康診断などで、愛犬の「不整脈」が見つかった経験がある方もいらっしゃることでしょう。

その時に、
「心電図検査って何を調べる検査なの?」
「不整脈があると言われたが具体的にはどういうことだろうか?」
といった疑問もあるかと思います。

犬は自分で体の異常を訴えられない分、不整脈に気付くのが遅くなる傾向にあります。
今回は、犬の飼い主様に

  • 心電図検査の概要
  • 不整脈の種類

について解説します。
ぜひ、最後までお読みいただき、犬の不整脈に対する意識を高めていただければ幸いです。

心電図検査の概要

心電図検査は「電気を流す怖い検査」だと思っていませんか?心電図検査は、心臓の電気的な活動を記録する検査です。人間のように「胸が苦しい」と訴えることができない犬にとって、心臓の状態を客観的に評価できる大切な検査方法です。

心臓の仕組みと心電図

心臓がどのように電気信号をつくっているか解説します。
体の中の血液は順序良く流れていて、酸素を含んだ新鮮な血液は、肺から心臓に戻ってきます。心臓の右上部に位置する「洞房結節(どうぼうけっせつ)」という場所は、電気信号という形で心臓全体に指示を送ります。この信号に従って、心臓の筋肉(心筋)が規則正しく収縮と弛緩を繰り返すことで、血液を全身に送り出しているのです。
電気の逃れを体につけた電極(クリップ)でグラフ化したものが心電図です。

心電図の波形

心電図の波形は以下のように分類分けされます。

心電図は上下に蛇行している連続した線として表されますが、それぞれ心臓の各部位の動きを示しています。

P波(ピー波):小さな山のような波形で心房(心臓の上の部屋)が収縮するときの電気信号

QRS波群(キューアールエス波群):大きな山のような波形で、心室(心臓の下の部屋)が収縮するときの電気信号

T波(ティー波):QRS波群の後に来る、なだらかな山のような波形

心電図は決まった波型が一定のリズムで記録されますが、不整脈があるとこのリズムは崩れます。

心電図検査でわかること

心電図検査では、以下のようなことを確認します。

  • 心臓の拍動リズムが規則正しいか
  • 心臓の電気信号が正しく伝わっているか
  • 心臓に負担がかかっていないか
  • 不整脈の種類や程度

不整脈

飼い主様の中にも愛犬の胸に耳を当てた時、心臓の鼓動が一定のリズムでなかった経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。不整脈とは心拍が安定しない状態にある症状です。電気信号をつくる源(洞房結節)もしくは電気信号を伝えるための経路に異常が見られることで起こります。

不整脈の症状

不整脈は日常で気づかれにくい症状の1つであり、また日常生活に支障が出ない場合もあります。ただ以下のような症状がある場合は注意が必要です。

  • 突然の失神や脱力
  • 激しい咳や呼吸困難
  • 極端な元気消失
  • 食欲の急激な低下
  • 運動時のふらつきや転倒

これらの症状は病的な不整脈が原因である場合が多いです。最悪のケースでは突然死することもありますので、当てはまる事柄がある場合はなるべく早く動物病院を受診するようにしましょう。

不整脈の種類

不整脈には様々な種類があり、その程度も軽いものから治療が必要なものまでさまざまです。代表的なものをいくつか解説します。

洞性不整脈

これは最も一般的な不整脈の一つです。心拍数が過剰に上昇することを頻拍、過剰に低下することを徐脈と言います。呼吸に合わせて心拍数が変化し、息を吸っている時には速く、吐いている時には遅くなります。多くの場合は異常ではなく、生活に支障がない場合、治療の必要はありません。

心室期外収縮

心室期外収縮は、心臓の予定外の収縮が起こる不整脈です。

心臓の下の部屋(心室)から余分な電気信号が発生することで起きます。注意が必要な不整脈の1つで、心臓を含めた検査が必要になります。心臓の病気がない場合は、一般的に良好で不整脈による突然死もほとんどありません。心臓の病気がある場合は、症状が出る程ではないものの慎重に経過を見る必要があります。

心房細動

心房細動は心房の筋肉が痙攣した様に動き、心房が小刻みに震える状態で、大型犬に多く見られます。心房がきちんと収縮しなくなることで、血液を心房から心室に送り出す機能が低下します。

房室ブロック

房室ブロックは電気信号の伝導に障害が起きることで、心臓の上と下の部屋の連携が悪い状態です。程度によってⅠ度からⅢ度に分類され、重症度は程度によって異なります。

第Ⅰ度房室ブロック

心房から心室への信号は伝わるが、通常より時間がかかる状態です。健常な時も認められることがあり、迷走神経が緊張することによって起こる生理的なものと考えられています。

第Ⅱ度房室ブロック

心房からの電気信号が時々心室に伝わらない状態です。症状によっては治療や、ペースメーカー植え込みが必要となってきます。

第Ⅲ度房室ブロック

心房からの電気信号が完全に心室に伝わらない状態です。ふらつきや失神が顕著に認められる場合が多いです。

不整脈の原因

不整脈の原因としては心臓病であることが多いですが、それ以外の病気が隠れていることもあります。

考えられる病気は以下のようなものがあります。

心臓の病気

  • 僧帽弁閉鎖不全症
  • 拡張型心筋症
  • 心臓腫瘍

その他の病気・状態

内分泌疾患

  • 甲状腺機能低下症
  • 褐色細胞腫

消化器系の緊急疾患

  • 胃拡張・胃捻転症候群
  • 膵炎

血液・循環器系の異常

  • 重度の貧血
  • 脾臓の腫れ(脾腫)
  • 敗血症
  • DIC(播種性血管内凝固)
  • 高カリウム血症

中毒

  • 有害物質の摂取
  • 薬物の副作用

不整脈の治療

不整脈が見つかっても必ず治療するわけではありません。症状が出ていたり、突然死のリスクが高い場合に抗不整脈剤による治療を始めます。

内科治療は薬を中心に、脈拍を整えたりリズムを正常に戻したりするよう試みます。それでも不整脈が改善されない場合は、ヒトと同様にペースメーカーの植え込みが行われることもあります。

不整脈を誘発する他の病気がある場合は、そちらの治療も並行して行います。

まとめ

心電図検査は、目に見えない心臓の状態を可視化できる重要な検査です。特に不整脈の診断には欠かせません。
不整脈の早期発見は難しい場合が多いですが、「何となく疲れやすくなった」「少し動いたらふらつく」など気になる症状がある場合はなるべく早く動物病院を受診するようにしましょう。

動物病院 京都 本院では定期的に循環器外来を設けております。ご希望の飼い主様はお気軽にスタッフまでお声がけ下さい。

監修:CUaRE 動物病院 京都 四条堀川