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猫の尿道閉塞について|緊急性の高い尿トラブルについて獣医師が解説

2024.08.27

こんにちは。
どうぶつ病院 京都 四条堀川の尾関康江です。

「飼い猫がおしっこが出にくいけれどすぐに病院を受診した方が良いだろうか?」
「動物病院で尿道に詰まっていると言われたけれど治療法はあるのだろうか?」
といった疑問をおもちではないでしょうか?

今回は、猫の飼い主さんに

  • 尿道閉塞とは
  • 尿道閉塞の原因
  • 治療法

について解説します。
ぜひ、最後までお読みいただき、飼い猫の尿トラブル時にお役立て頂けましたら幸いです。

尿道閉塞

尿道閉塞とは何かしらの原因で尿道(膀胱から体外への道)が塞がり尿が出にくくなる状態を指します。猫は犬と比較して尿道が狭く、飲水量が少ないことで発生率が高くなります。特に雄猫は雌猫に比べて尿道が細く、S字に湾曲しているため閉塞を起こしやすいとされています。

原因

尿道が塞がる原因は

  • 結石、結晶、尿道栓子が詰まる
  • 膀胱炎、尿道炎により粘膜が腫れる
  • 腫瘍による圧迫

が挙げられます。

※尿道栓子とは炎症により剥がれ落ちた細胞や結晶が固まったもの

症状

よく見られる症状は

  • 何度もトイレに通う
  • トイレでいきむ様子がある
  • 落ち着かない
  • 陰部を気にして舐める様子がある

といった尿に関連した症状が主体になります。尿道が完全に詰まってしまうと排尿ができなくなり、急性腎障害や尿毒症まで進行します。この場合は、元気や食欲が低下し、発作や不整脈など緊急性を要する状態になることもあります。

診断

飼い主さんからの問診や膀胱の触診で尿道閉塞が疑われる場合は、各種検査を進めます。自宅での猫の様子や排尿の有無は大事な判断材料になりますので、獣医師に伝えるようにしましょう。

血液検査

尿道が閉塞したことによって、どの程度腎臓へ影響が出ているか確認します。またミネラルバランス(カリウム)の崩れがないか把握します。

尿検査

尿の色やpH、結晶の有無を確認します。

レントゲン検査、超音波検査

膀胱内の尿の貯尿程度、腫瘍の有無、結石の有無を確認します。

検査は猫の状態に応じて、検査よりも処置が先行する場合があります。完全に尿道が閉塞している場合は、緊急を要するため尿道にカテーテルを入れて排尿を促す処置を優先します。

治療

内科治療

尿道閉塞の代表的な治療には以下のものがあります。

閉塞の解除

尿道にカテーテルを入れ、生理食塩水などを使って詰まっているものを膀胱に押し戻します。処置には痛みを伴いますので、場合によっては鎮静剤を使用します。尿道が修復されるまでカテーテルを入れて治療をします。

閉塞物の治療

膀胱炎が併発している場合は、抗生剤を使用します。結石が原因の場合は療法食を用いた食餌療法を実施します。尿道閉塞をさせていた原因が結石で、処置にて膀胱に押し戻せたものの療法食では溶けない種類のこともあります。その場合は、膀胱を切開して結石を取り除く外科手術を行います。

腎臓のケア

尿道閉塞に伴い腎臓に障害が出ている場合は、状態が改善するまで点滴を実施します。尿道閉塞が治癒した後も腎障害が続く場合は、定期的な通院点滴など腎臓への治療が必要になります。

外科治療

  • 何度も閉塞を繰り返し、内科治療では改善が見込めない
  • カテーテルが尿道に入らない
  • 尿道の先端がとても狭くなってしまっている

場合は、外科処置が必要になります。手術によって狭くなっている尿の通り道を広げ、新しく尿道を作り直します。会陰尿道造瘻術と呼ばれる手術名になります。雌猫の様な尿の通り道となる為、手術後は膀胱炎や局所の皮膚炎など感染症のリスクが高くなりますが、尿道が広くなり排尿時のストレスが軽減されます。

予防

お家でできることがいくつかあります。

飲水量

猫は普段から飲水量があまり多くありません。飲水場所を数か所設置、循環式の水飲み器を利用、ぬるま湯を使用したりして飲水を促すようにしましょう。食事にウェットフードを混ぜ水分を摂取することもおすすめです。

食事

安すぎる食事は添加物の含有量が多く、尿に関わらず猫の健康状態にも影響を与えかねません。高い食事が必ずしも良いというわけではありませんが、猫の体質や尿状態に応じた食事を選択するようにしましょう。尿トラブルが出やすい猫は、生涯療法食が推奨される場合もあります。その都度獣医師と相談し猫の健康状態を保ちましょう。

トイレ

膀胱の中に尿が長時間溜まっていると結石ができやすくなります。トイレを清潔にしていつでも過ごしやすい環境を整えましょう。またトイレの個数は頭数+1個設置することで尿を我慢させないような環境づくりもおすすめです。

定期検診

動物病院で検査を受けることで、尿の状態、結石・腫瘍の有無を確認することができます。定期的な検診を受け尿道閉塞の原因となる要因を早期に見つけられるようにしましょう。

まとめ

尿道閉塞は治療が遅れると命に関わる場合があります。普段から飼い猫の尿量や回数などに注意し少しでも様子がおかしい場合は、様子を見ずに動物病院を受診するようにしましょう。

どうぶつ病院 京都 四条堀川
獣医師 尾関康江