2024.10.22
目次
こんにちは。
どうぶつ病院 京都 四条堀川 獣医師 尾関康江です。
「ホルモンってよく聞くけれど、犬・猫の体ではどんな役割をしているのだろうか?」
といった疑問をお持ちではないでしょうか?
今回は、犬と猫の飼い主様に
について解説します。
ぜひ、最後までお読みいただき、体にとって大切なホルモンの働きについて知っていただければ幸いです。
ホルモンは体の働きを調整する化学物質です。体の外(環境)が変化をしても体内を一定に保ってくれます。
ホルモンは化学構造が似ているため、動物の種類が違っても同じ働きをします。人も犬猫もホルモンの働きは同じなのです
ホルモンは体の内分泌腺と呼ばれる所でつくられます。血液、リンパ液、組織液によって全身に運ばれ作用します。ごく微量でも強い作用を働きをしますが、特定の臓器にしか働かないのが特徴です。
体でホルモンを生成している内分泌腺と主なホルモンを解説します。
松果体は脳の中央に位置する小さな組織です。メラトニンという物質を分泌して概日リズムを調整します。
脳下垂体は脳の中央にある視床下部と呼ばれる場所のすぐ下に位置します。サイズは3〜5mmととても小さい器官ですが、何種類ものホルモンを分泌します。脳下垂体から刺激ホルモンが分泌されると、標的臓器(内分泌腺)から特定のホルモンが分泌されます。血液中のホルモンが多すぎると脳下垂体からのホルモン分泌は少なくなります(ネガティブフィードバック)このようにして血液中のホルモンが一定の値に維持できるようにコントロールしています。内分泌の司令塔のような役割を成しています。
脳下垂体は大きく脳下垂体前葉と脳下垂体後葉に分かれます。
成長ホルモンは全ての組織や臓器に成長を促すホルモンです。成長してからも分泌されるが、特に子犬・子猫の成長期に分泌が著しい。
性腺刺激ホルモンは生殖器官、精巣や卵巣を刺激するホルモンを分泌しています。性ホルモンや精子、卵子の生成を促す働きがあります。
甲状腺刺激ホルモンは甲状腺が働きかけ甲状腺ホルモンの分泌調整を行っています。
副腎皮質刺激ホルモンは副腎皮質が分泌するコルチゾールの量を調整します。
抗利尿ホルモンは尿の量を調整するバソプレシンを分泌します。
子宮刺激ホルモンは雌犬(猫)の出産・育児に必要なオキシトシンを分泌します。出産時に子宮を収縮させ分娩(ぶんべん)をうながしたり、乳腺の筋線維を収縮させて乳汁分泌をうながしたりする作用を持っています。
甲状腺は喉(喉頭)と気管のさかい目に位置し、左右1つずつ貼り付くかたちで存在しています。大きさは犬種、猫種によって異なりますが、長さは2〜3cm、幅は0.5cm程です。
甲状腺ホルモンは甲状腺で分泌され、全身の細胞の働きを活発にし成長を促進させます。
カルシトニンは甲状腺で分泌され、カルシウムの濃度を下げる役割を行っています。
上皮小体
上皮小体は副甲状腺とも呼ばれ甲状腺の上に存在し、左右2つずつ合計4つあります。サイズは2mm以下ととても小さな器官です。
パラソルモンは上皮小体で分泌され、体内のカルシウム濃度を上昇させる役割があります。
副腎は腎臓の内側にあり、左右1つずつあります。副腎の役割は多岐にわたり、
を行っています。
副腎は外側の副腎皮質、内側の副腎髄質に分かれます。
糖質コルチコイドは糖分と始めとする栄養分や電解質の代謝、免疫反応、ストレス対応などに関与しています。代表的な糖質コルチコイドはコルチゾールです。
鉱質コルチコイドはナトリウムやカリウムなどの電解質の排泄や水分の調節を行っています。代表的な鉱質コルチコイドはアルドステロンです。
副腎アンドロゲンは男性ホルモンの1つで、男性化を助ける役割があります。
カテコールアミンと呼ばれるアドレナリン・ノルアドレナリンが分泌されます。主に血管を収縮させたり、血圧を上昇させる役割があります。特にストレスがかかった非常時に体が目の前のことに対応できるよう分泌されるため、闘争や逃走のホルモンとも呼ばれています。
膵臓は十二指腸に膵液を分泌するため、十二指腸の近くに存在しています。ホルモンを分泌する部位をランゲルハンス島と呼びます。
インスリンは血糖値を下げることができる唯一のホルモンです。
食事をした時、肝臓でブドウ糖から糖に変換されます。糖は血液にのって全身の細胞に運ばれます。インスリンは血液中の糖が細胞内に取りこまれるように働きかける作用をもっています。
グルカゴンは血糖値を上げるホルモンです。肝臓のグリコーゲンを分解して、血液中にブドウ糖を放出します。インスリンと互いに牽制し合って血液中の血糖値を一定に保っています。
ソマトスタチンは食事をした時に分泌されるホルモンです。インスリンやグルカゴンの分泌を抑制します。膵臓から分泌される膵液を刺激するホルモンも抑制し、血糖値を一定にする役割もあります。
卵巣は雌犬の生殖器の1つで、雌性ホルモンを分泌しています。
プロジェステロンは妊娠維持に必要な雌性ホルモンの1つです。
エストロゲンは卵胞から分泌される卵胞ホルモンです。発情前に多く分泌され、排卵に向けて卵胞の発育を促したり、性フェロモンを分泌し雄犬を引きつける役割があります。
精巣は雄犬の生殖器の1つで、雄性ホルモンを分泌しています。
アンドロゲンは、テストステロン呼ばれるもので、精子を作ったり、生殖器の発育を促したりしています。雌犬よりも成長したり、筋肉量が多いのもホルモンの影響が大きいとされています。
体には様々なホルモンが作用しており、生命維持には欠かすことができないものです。ホルモンはヒトと同様に普段は一定に保たれていますが、バランスが崩れ病気になる場合もあります。次回以降でそれぞれのホルモン疾患について解説しようと思います。
どうぶつ病院 京都 四条堀川
獣医師 尾関康江