2025.03.11
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愛犬の体調管理において、脾臓腫瘍は特に注意が必要な疾患の1つです。脾臓は体内で重要な役割を果たす臓器であるにもかかわらず、腫瘍ができても初期の段階では目立った症状が現れにくいという特徴があります。そのため、発見が遅れてしまうケースも少なくありません。
今回は、犬の飼い主様に
について解説します。
ぜひ、最後までお読みいただき、愛犬の病気について知っていただければ幸いです。
一部、専門用語が含まれるため、ご了承下さい。
脾臓とは普段、あまり聞きなれない臓器の名前ですね。脾臓は主に以下のような働きがあり、犬において重要な役割を果たしています。
脾臓腫瘍とは脾臓にできる腫瘍性疾患のことです。高齢の犬に多く見られ、その中でも体重が重い犬や大型犬に多い傾向があります。
脾臓に発生する腫瘍は、大きく良性と悪性の2つに分類されます。
悪性腫瘍は他の臓器への転移リスクが高く、進行が早いのが特徴的です。
代表的な悪性腫瘍は、以下のようなものがあります。
中でも、頻繁に遭遇するのが血管肉腫という悪性腫瘍で、脾臓腫瘤の50〜80%を占めています。
良性腫瘍は悪性腫瘍と比べて進行が遅く、他の臓器への転移も少ないのが特徴です。
代表的な良性腫瘍には、以下のようなものがあります。
良性腫瘍は一般的に予後が良好とされていますが、大きくなりすぎると破裂のリスクがあるため、発見された場合は定期的な経過観察が必要です。
脾臓腫瘍は早期発見が難しい病気です。その主な理由として、以下のような特徴があります。
脾臓は腹部の奥深くに位置しているため、外からの触診では分かりにくいです。定期健診時の超音波検査やレントゲン検査で偶然見つかるケースが多くあります。
脾臓腫瘍の初期症状は無症状であることがほとんどです。腫瘍が大きくなると胃などの周囲の臓器を圧迫することで元気がなくなったり、食欲が落ちたりすることがありますが、多くの飼い主様はその兆候に気づかないことが多いです。
初期段階では特に目立った症状がありません。
腫瘍が大きくなると
といった症状が認められますが、いずれも特異的なものではありません。
特に8歳以上のシニア犬では、加齢による変化と勘違いされやすく、そのまま様子を見られてしまうケースも少なくありません。
良性・悪性に関わらず大きくなった腫瘍が破裂し出血すると、歯茎が白っぽくなったり、急に動きたがらなくなります。出血の程度によっては、血圧が下がったり、呼吸が荒くなったりとショック状態になる場合もあります。
当院では飼い主様からの情報を元に、以下の検査を組み合わせることで総合的に脾臓腫瘍を診断します。
中でも画像診断はとても重要な情報源となります。
お腹の張り具合、口腔内の粘膜の色、全身の活力(元気さ)などを診察します。症状が重篤な場合は、詳しい検査よりも先に応急処置や治療を行うことがあります。
超音波検査やレントゲン検査、CT検査を駆使して、脾臓の状態を確認します。これらの検査では、脾臓腫瘍の位置は分かりますが、良性と悪性の区別まではできません。
血液検査では貧血の有無、出血したときに血液を固めて止める役割のある血小板数の評価をします。画像診断に加えてより正確な診断材料となります。
確定診断には病理学的な検査が必要です。
画像検査だけでは腫瘤が本当に腫瘍なのか、腫瘍だとしても良性か悪性か、具体的にどのタイプの腫瘍なのかといった重要な判断ができないためです。
そのため、手術で摘出した組織を顕微鏡で詳しく調べる病理検査が、最も確実な診断方法です。検査結果により、術後の治療方針や予後の見通しについても、より正確な判断が可能となります。
脾臓腫瘍の主な治療法は外科手術です。手術では腫瘍のある脾臓を全て摘出します。
脾臓は大事な臓器なのに手術で取ってしまって大丈夫か不安になりますよね。健康な犬の場合、脾臓を全て摘出しても脾臓の機能は肝臓やその他のリンパ節に引き継がれるために、深刻な合併症を起こさないことが知られています。
腫瘍が大きくなって破裂し、ショック症状が現れた場合は、まず輸液療法でショック症状の改善を優先して行います。また、重度の貧血がある場合は、手術中に輸血が必要となります。緊急時の場合は、状況によって命に関わる危険性も高くなりますので、早急な処置が必要です。
手術後の経過は、腫瘍の種類や状態によって大きく異なります。特に血管肉腫は予後が厳しく、早期発見と積極的な治療が勧められます。
手術による完治が期待できます。術後は定期的な検査で再発がないかを確認していきますが、一般的に予後は良好です。
悪性腫瘍の場合は予後が悪いことが多く、手術時に既にがん細胞が転移していたり周囲組織に浸潤していたりするため、術後に化学療法(抗がん剤治療)を実施することがあります。
特に犬の脾臓の血管肉腫では、脾臓を摘出した後の生存期間の中央値は約1〜3ヶ月とされており、予後は厳しいと言えます。化学療法を併用した場合でも、生存期間の大幅な延長は難しいのが現状です。
脾臓腫瘍は決して珍しい病気ではなく、特にシニア犬では注意が必要です。腫瘍が破裂するまで特に目立った症状が見られないため、普段からの観察と定期的な健康チェックが欠かせません。少しでも気になることがありましたら、お気軽に当院にご相談ください。
監修:CUaRE 動物病院京都 四条堀川