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犬の膝蓋骨脱臼|犬の膝蓋骨脱臼の診断・治療について獣医師が解説

2024.08.20

こんにちは。
どうぶつ病院 京都 四条堀川 獣医師 尾関康江です。

「動物病院で飼い犬の膝が悪いと言われたけれど、どういうことだろうか?」
「最近、足をけんけんすることがあるけれど大丈夫だろうか?」
と言った疑問をお持ちではないでしょうか?

今回は犬を飼われている飼い主さんに、

  • 膝蓋骨脱臼とはどういう病気か
  • どのような症状が出るのか
  • 治療方法

について解説します。
是非、最後までお読みいただき、飼い犬との健やかな日々にお役立て下さい。
一部専門用語が含まれますので、ご了承下さい。

膝蓋骨脱臼

膝蓋骨脱臼とは犬の後ろ足に異常が起こっている場合に考えられる病気の1つです。膝の皿(膝蓋骨)が本来の場所からずれて起こる関節疾患の1つで、通称「パテラ」と呼ばれています。膝蓋骨は大腿骨(太ももの骨)の滑車溝と呼ばれる溝窪みにはまって、膝関節の屈伸運動を担っています。

5頭に1頭で発生すると報告されており、発生率の高い病気です。

膝蓋骨が内側に外れることを膝蓋骨内方脱臼、外側に外れることを膝蓋骨外方脱臼と呼びます。8〜9割が内方脱臼になります。

小型犬(トイプードル、チワワ、ポメラニアン、柴犬など)に多い病気ですが、大型犬でも認められます。

(膝蓋骨内側脱臼)

原因

犬のパテラのはっきりとした原因は分かっていません。報告されている要因としては、先天的なものと出生後の環境要因があります。

先天的なものとしては、膝蓋骨がはまる滑車溝の溝が浅かったり、膝蓋骨に付着している靭帯や筋肉のバランスが悪いことが挙げられます。

後天的な要因としては、交通事故や落下事故により外側から急な力がかかることです。

症状

犬のパテラの症状は様々で、正常に見えるような歩き方をすることもあれば、時々足を上げるような歩き方(スキップ様歩行)、ひどい場合には足を地面に着けず上げっぱなしのこともあります。

症状の重症度に応じて4つのグレードに分類されます。

グレード1

  • 手で押すと膝蓋骨は外れるが、離すと元の位置に戻る
  • 通常膝蓋骨は溝にはまっている
  • 症状はほとんど認められない
  • 激しい運動をする時に外れてスキップをする様な歩き方をする

グレード2

  • 膝蓋骨は自然に脱臼と整復を繰り返している
  • 脱臼している時は足を上げるが、足を曲げ伸ばししている間に元の歩き方に戻る
  • 脱臼を繰り返すなかで骨が変形してくる

グレード3

  • 膝蓋骨は常に脱臼していて指で押すと元の位置に戻るが、一時的なもので指を離すと脱臼する
  • 大腿骨(太ももの骨)や脛骨(膝下の骨)の骨の変形が出てくる
  • 内股になったり、しゃがんだ姿勢で歩く

グレード4

  • 膝蓋骨は常に脱臼していて、指で押しても元に戻らない
  • 骨の変形が進み、膝をうまく伸ばすことができない
  • 後ろ足を曲げたまま、地面にほとんど着けずに歩く

治療

外科治療

外科手術は

  • 脱臼は軽いが、症状が重く歩行が困難
  • 何度も脱臼を繰り返す
  • グレードが進行している
  • 若く成長期で骨の変形や膝周りの筋肉に悪影響を及ぼす可能性がある

場合に選択されます。

  • 膝蓋骨がはまっている溝(大腿骨滑車溝)を深くして、膝蓋骨を安定化させる
  • 膝の曲げ伸ばしに関わる機構(大腿四頭筋、膝蓋骨、膝蓋靭帯)を正しい位置に戻す

など、犬の状態に合わせて術式を選択し行います。

内科治療

  • 脱臼がひどくない
  • 麻酔リスクがある
  • 他に優先してすべき病気がある
  • ご家族のご意向

などの場合は、獣医師と相談の上、内科治療にて経過を追うこともあります。パテラを治すことは難しいですが、犬の生活の質を落とさないことを目標に治療を行います。痛みを伴う場合は非ステロイド性消炎鎮痛剤を使用します。関節の軟骨を保護するために、注射剤やサプリメントを用いることもあります。

お家でできる予防

床の滑り止め

床の素材によっては犬にとって滑りやすい場合があります。カーペットやジョイントマットなどを敷いて犬が滑らないような工夫をしましょう。

犬の爪や足裏の毛を定期的にケアしてあげましょう。

減量

人と同様に体重が膝に負担をかけます。食事量の見直しや散歩を組み合わせて適正な体重を維持してあげるようにしましょう。

サプリメント

人と同様に関節を保護するサプリメントもあります。膝蓋骨の脱臼を治すわけではありませんが、関節周りの組織や筋肉に役立つ栄養素を取り入れることで、膝関節の健康を維持します。

まとめ

4足歩行する犬にとって後ろ足はとても大事なものです。初期では症状があまり出ず分かりずらいことが多いです。脱臼を繰り返すことで、関節炎を起こしたり、関節の中の靭帯や軟骨(半月板)を痛めるなどパテラ以外にも影響を及ぼします。動物病院で指摘を受けた場合、スキップする様な歩き方をすることがある場合は定期的に受診をするようにしましょう。

どうぶつ病院 京都 四条堀川
獣医師 尾関康江