2025.05.06
愛猫を動物病院に連れて行くとき、多くの飼い主さんは「うちの子、病院が嫌いで大変なんです…」と悩まれているのではないでしょうか。猫にとって動物病院への外出は、慣れない環境や匂い、音などによって大きなストレスとなることがあります。しかし、定期的な健康診断や必要な治療は、どうぶつの健康を守るために欠かせません。
今回は、猫の飼い主様に
について解説します。
ぜひ、最後までお読み頂き、これらの工夫を取り入れて、次回の動物病院受診がスムーズになれば頂ければ幸いです。
動物病院を受診する際、猫になるべくストレスを与えない要素の1つは、適切なキャリーケースの選択です。猫用キャリーケースの選び方として、以下のようなポイントに注目するとストレスを軽減できます。
天井部分が開くプラスチック製のキャリーケースは、猫を出し入れしやすく、診察時にもケース内で猫の診察や処置ができる場合があります。また、動物病院の待合室でこっそり猫の様子を確認しやすいのもおすすめのポイントです。
猫がスムーズに出入りできるよう、前面が大きく開くタイプも便利です。
移動中や待合室で安定して置けるものを選びましょう。底がしっかりしていると、猫も安心感を得やすくなります。
中で猫が横になれる程度の余裕があり、かつクルっクルっと1回転できるサイズが理想です。
万が一の粗相に備えて、丸洗いや水拭きがしやすく衛生面も保ちやすい素材のキャリーケースがおすすめです。
猫がキャリーケースに入ることに慣れていると、動物病院への移動に対する不快感を少しでも和らげることが可能です。キャリーケースを「安全な場所」と認識させるところからスタートしましょう。
猫の生活空間にキャリーケースを常に置いておきましょう。リビングや猫がよく過ごす部屋の隅、日当たりの良い窓辺など、猫が落ち着ける場所に設置することがポイントです。扉が取り外せるタイプであれば、普段は外しておくとさらに効果的です。これにより「いつもそこにある当たり前のもの」という認識が生まれます。
キャリーケース内に以下のような猫にとって馴染みのあるものを入れておきましょう。
こうした工夫により、キャリーケースが「安心できる居場所」としての印象が強化されます。また、猫用フェロモン製剤を事前に、ケースの周囲に軽くスプレーしておくと、リラックス効果がさらに高まります。
キャリーケースを警戒しなくなってきたら、おやつやご飯をあげるなど、猫にとって良い体験と結びつけましょう。「キャリーケースに入ると何か良いことがあるかも!」という期待感から、普段から入るようになる可能性があります。
キャリーケースに自ら入るようになったら、次のステップに進みましょう。
練習の後には必ず猫が喜ぶご褒美を用意しましょう。お気に入りのおやつをあげたり、遊んであげたりすることで「キャリーケースでの外出=良いこと」という連想が生まれます。特に外出中に鳴いたり、震えたりして不安そうだった場合は、帰宅後すぐに猫が好きなことをして、ポジティブな経験として記憶させることが大切です。
猫がキャリーケースに自ら入るようになったり、中でリラックスして過ごせるようになれば、動物病院への移動時のストレスも大幅に軽減できるでしょう。
健康な時から定期的に動物病院を受診することも大切です。具合が悪い時だけでなく、元気なときにも来院することで、猫は「動物病院=苦痛や不快な経験」という印象を持ちにくくなります。定期的な来院を通じて病院の環境や獣医師に慣れることができれば、実際に治療が必要になった時のストレスの軽減や、獣医師との信頼関係構築にもつながります。
猫の動物病院受診において、自宅から病院までの移動時間もストレスの大きな要因となります。移動中のストレスにより、猫が過度に鳴いたり、嘔吐したり、呼吸が速くなることもあります。ストレスを軽減するために以下のようなポイントに気をつけましょう。
家の外では、普段と違って聞きなれない音がたくさんあり、それが猫にとってストレスになってしまいます。全ての音を遮断することは難しいですが、移動中はできるだけ静かな環境を維持しましょう。
自転車での移動は、歩道と車道の間の段差で猫に大きな衝撃が伝わりやすいです。また、他の移動手段と比較して揺れが多いため、特に注意が必要です。キャリーケースをしっかり固定し、段差を通過する際はゆっくり進む、極力平らな道を選ぶなど、猫への負担を考慮した安全運転を心がけましょう。
車のラジオや音楽の音量は控えめにし、急ブレーキや急発進はなるべく避けましょう。キャリーケースがぐらつかないように、シートベルトで固定するか、床において安定させます。猫は振動や揺れに敏感なため、安定した走行を心がけることが大切です。
また、直射日光が当たらない場所に配置したり、空調を調整して猫が快適に過ごしやすいようにしましょう。
猫は狭い場所や空間を好む習性があるため、洗濯ネットに入っていると落ち着くといわれています。猫の恐怖心を和らげるために、動物病院への来院は自宅から洗濯ネットに入れておくことがおすすめです。
また、診察中暴れてしまっても制御しやすいという獣医師側のメリットもあります。
視界の変化は、猫にとって恐怖や不安といったストレス要因となります。キャリーケースの上から自宅で使用しているバスタオルやブランケットをかけて、外部の刺激を軽減しましょう。
出発前にキャリーケースや車内に猫用フェロモン製剤をスプレーしておくと、リラックス効果が期待できます。猫がいる状態で直接スプレーするのは避け、少なくとも使用後15〜20分は経過してから猫を入れるようにしましょう。
移動中は時々優しく名前を呼んだり、穏やかな声で話しかけたりすることで、安心感を与え不安などのストレスを和らげることができます。その際、猫に同調する言葉ではなく、「大丈夫だよ」「頑張ってるね」など励ましの言葉にしましょう。
動物病院の待合室は猫にとって不安を感じる場所です。他の動物や人との接触によるストレスを最小限に抑えるポイントを解説します。
キャリーケースは床や飼い主さんの膝の上ではなく椅子の上や高い場所に置きましょう。グラグラとした感覚は、キャリーの中に入っていても不安をあおる原因となり、高い場所におくことで他の動物から距離を取れるメリットがあるからです。
待合室でも引き続き、タオルなどでケースを覆い、外部からの刺激を軽減しましょう。
出入り口から離れた静かな場所を選び、予期せぬ動きや音を避けましょう。混雑時には、猫のストレスを軽減するために、車や外で待つことができるか受付に確認するのも方法の1つです。
なお、ここで解説したポイントはあくまで一般的な対策です。当院では猫のストレスを最小限にするための工夫を行っていますが、動物病院によって待合室の環境や対応は異なりますので、お気軽にスタッフにご相談ください。
診察室での時間は、猫にとって最も緊張する瞬間です。猫のストレスを軽減し、獣医師の診察をスムーズに進めるためのポイントを解説します。
診察中は優しく声をかけながら、猫の好きな体の場所(頭や顎の下など)を撫でてあげると落ち着きやすくなります。もし、お気に入りの食べ慣れているおやつがあればそれを与えながら診察を受けるのもおすすめです。
猫が怖がっている場合は、無理に出そうとせず、獣医師の指示に従いましょう。
事前に気になる症状や変化を簡潔にまとめておくと、診察がスムーズに進みます。また、猫の普段の性格や特徴(怖がりやすい、手先を触られるのが苦手など)を伝えることで、獣医師が適切な対応をしやすくなります。
当院では動物病院を受診する前に興奮や緊張を和らげる薬の投薬を推奨しています。来院の1~2時間前に投薬することで、過度な興奮を抑え、診察中のストレスを減らすことが可能となります。もし、動物病院の受診に対してご不安な飼い主様は是非獣医師までご相談下さい。
普段と違う環境や診察での拘束など、様々な理由から動物病院を嫌がる猫は少なくありません。そんな愛猫を動物病院に連れていく飼い主さんにも負担が大きいと思います。それでも、定期的な動物病院受診により、病気を早期発見でき愛猫の健康を守ることにつながります。
どうしても来院が難しい場合は、当院では「往診」といった方法も承っておりますので、何か心配事がありましたらご相談下さい。
愛猫にとってストレスが少なく体を診てもらえる方法を考えていきたいですね。
監修:CUaRE 動物病院京都 四条堀川