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猫のメンタルヘルスを守るために飼い主様が知っておきたいことについて獣医師が解説

2025.08.05

「うちの猫が最近元気がない」「なんだかいつもと様子が違う気がする」といった変化に気づいたことはありませんか?実は、人間と同じように猫にもストレスがあり、心の健康状態が体調に大きく影響することがあります。

今回は猫の飼い主様に、

  • 猫のメンタルヘルスがなぜ重要なのか
  • ストレスが原因で起こる病気や症状
  • 猫の心の健康を守るための具体的な方法

について解説します。

ぜひ、最後までお読みいただき、猫のメンタルヘルスについての理解を深めていただけたら幸いです。

猫のメンタルヘルスとは?ストレスが体に与える影響

猫のメンタルヘルスとは、猫の精神的な健康状態のことを指します。人間と同様に、どうぶつにとってもストレスは万病の素となり、心の不調が体の病気として現れることが非常に多くあります。

猫がストレスを感じ続けると、以下のような様々な病気を発症する可能性があります。

  • 胃腸炎(食欲不振、嘔吐、下痢)
  • 特発性膀胱炎
  • 心因性脱毛(腹部などを自分で舐めて脱毛してしまう)
  • 猫伝染性鼻気管炎(ネコカゼ)
  • 猫伝染性腹膜炎(FIP)
  • 異常行動

猫はストレスに弱い生き物です。引っ越しやペットホテルの利用後など生活環境の変化により吐き戻しや下痢の症状が出る場合があります。また、ストレス性の膀胱炎やトイレの失敗といった泌尿器トラブルも起こりえます。

猫は普段から「毛づくろい」と呼ばれるグルーミングを行い、心と体のケアを行っています。ストレスを感じると自分を安心させるために、繰り返しグルーミングを行います。過剰なグルーミングは皮膚炎を起こし、患部が脱毛することもあります。

ストレスは免疫力の低下も引き起こします。細菌やウイルス感染症にかかりやすくなったり、猫伝染性腹膜炎というストレスが要因となる病気を発症しやすいとされています。

猫がストレスを感じる原因とストレスサイン

いつも自由気ままに過ごしているように見える猫。人と感じるポイントは違うけれど、ストレスを感じていて、その原因は多岐にわたります。猫は変化に敏感な生き物のため、飼い主様が些細だと思うことでも大きなストレスになる場合があります。

環境の変化

引っ越しや部屋の模様替え、新しい家具や家電の設置だけでも大きなストレスを感じることがあります。また、来客時の騒音や工事の音、季節による気温や湿度の変化も猫にとってはストレス要因となります。

社会的ストレス

新しいペットを迎えたり、家族構成が変わったりすることも猫には大きな負担です。赤ちゃんの誕生や家族の増減、飼い主様の生活リズムの変化なども影響します。特に多頭飼いの場合は、猫同士の相性問題がストレスの原因になることもあります。

物理的環境の問題

トイレの数が足りない、清潔さが保たれていない、食事場所が頻繁に変わるなどもストレス要因です。また、猫が安心して休める隠れ場所がないことや、騒音・強い光なども猫のメンタルヘルスに悪影響を与えます。

病気になる前の早期サインを見逃さない

猫がストレスを感じ始めたときに現れる初期の行動変化を解説します。

行動面での変化

  • いつもの居場所から離れて隠れる
  • 飼い主様との接触を避ける  
  • 普段より警戒心が強くなる
  • 夜鳴きや過度な鳴き声が多くなる
  • 遊びへの興味が落ちる

日常習慣の変化

  • いつもより食欲がない
  • 睡眠パターンが乱れる
  • グルーミングが過剰になる
  • トイレの粗相が増える

このように「いつもと違う」様子がある時は、重篤な病気に発展する前に早めに動物病院を受診することが大切です。

メンタルヘルスを守る行動療法と環境整備

猫がストレスを感じていると分かったら、その原因を解消したいですよね。

猫のメンタルヘルスケアにおいて、行動療法は最も重要で基本となる治療法です。薬物療法を使用する前に、まずは行動療法と環境整備を行うことで、多くの場合改善が期待できます。

行動療法の基本的な考え方

行動療法とは、猫の行動パターンを観察し、ストレスの原因となっている環境や状況を改善することで、猫の心理状態を安定させる治療法です。猫の本来の習性を理解し、それに合わせた環境を整えることが重要になります。

環境整備の方法

トイレ環境の改善

理想的なトイレの数は「猫の頭数+1個」とされています。2頭飼いの場合は3個のトイレが理想的です。トイレは静かで人の往来が少ない場所に配置し、常に清潔を保つことが大切です。

安心できる空間作り

猫が安心して過ごせる「隠れ場所」を複数箇所に設けましょう。キャットタワーの上段、クローゼットの一角、専用のハウスなど、猫が自由に選択できる環境を作ります。

食事環境の安定化

食事の時間と場所を一定にし、他の猫や騒音から離れた静かな場所で食事ができるようにします。多頭飼いの場合は、それぞれの猫に専用の食事場所を確保することが理想です。

飼い主様との関わり方

猫が嫌がることを無理に行わず、猫のペースに合わせた接し方を心がけます。抱っこや触れ合いも、苦手な猫もいるため求めてきたときに応じるようにしましょう。

食事時間、遊びの時間、就寝時間などを一定に保ち、猫が予測できる生活パターンを作ります。

遊ぶ時間を設けることも猫の満足度を高める重要な要因です。猫じゃらしなどを使って獲物を追いかける・捕まえるという遊びは、猫の本能的な欲求を満たし、ストレス発散に効果的です。

症状が改善しない場合の薬物療法について

行動療法と環境整備を行っても症状の改善が見られない場合や、症状が重篤で猫の生活の質が著しく低下している場合には、薬物療法を検討することがあります。

薬物療法の位置づけ

薬物療法は行動療法の補助的な治療法として位置づけられます。基本的には行動療法をメインとして行い、それだけでは効果が不十分な場合に薬物療法を併用します。薬物療法単独で根本的な解決を図るのではなく、猫のストレス状態を和らげることで、行動療法の効果を高めることが目的です。

薬物療法の種類

猫のメンタルヘルスに使用される薬剤には、以下のようなものがあります:

抗不安薬

不安症状を和らげ、猫の精神状態を安定させる効果があります。

抗うつ薬

セロトニンなどの神経伝達物質のバランスを調整し、うつ症状や強迫的な行動を改善します。

フェロモン製剤

母猫のフェロモン成分を模倣した製剤で、猫に安心感を与える効果があります。

まとめ

愛猫に長く健康で快適に暮らしてもらうためには、適切な医療ケアや栄養管理はもちろん大切ですが、それだけでは十分とは言えません。猫の習性を正しく理解し、心の健康にも目を向けてあげることが重要です。

食事や遊び方、普段の過ごし方をよく観察してあげたり、猫の習性に合わせた環境を整えてあげましょう。

気になる症状がございましたら、ぜひお気軽に当院にご相談ください。愛猫が何にストレスを感じているのか原因を見つけて、改善に向けてサポートさせていただきます。

監修:CUaRE 動物病院京都 四条堀川