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猫の不妊手術|猫の不妊手術について獣医師が解説

2024.07.16

こんにちは。
どうぶつ病院 京都 四条堀川 獣医師尾関康江です。

「子猫を飼い始めたけれどいつ頃不妊手術したら良いのだろうか?」
「猫の不妊手術はした方が良いのだろうか?」
「不妊手術を受けたら太りやすいと聞いたけれど実際はどうだろうか?」
といった疑問をお持ちではないでしょうか?

今回は子猫を飼われている飼い主さんに

  • 猫の発情について
  • 猫の不妊手術のメリット デメリット

について解説します。
是非、最後までお読みいただき、愛猫のより健康的な猫生活にお役立てください。

猫の発情期

猫の繁殖期は1〜9月頃まで続きます。猫の発情期は季節と日照時間が関係しています。暖かい時期の方が子猫の生存率が高いため本能的にこの時期を選んでいるとされています。1日の日照時間が長い2〜4月と6〜8月がピークになります。

発情期のメカニズムは自然光だけでなく人工灯でも起こるため、家の照明等に長時間あたる室内飼いの猫の場合は、発情期が長くなったり、季節に関係なく起こるとされています。

猫の発情期が明確にあるのはメス猫だけです。オス猫はメス猫の鳴き声やフェロモンによって発情が誘導されます。

猫が最初に発情を迎える時期

メス猫が初めて発情を迎えるのは生後6〜12ヶ月位です。生まれた季節や環境、毛の長さによって前後するとされています。長毛腫の猫は一般的に性成熟するのが遅く、生後12ヶ月を過ぎてから発情がくる場合があります。

猫の発情期サイクル

猫の発情には「発情前期」「発情期」「発情後期」「発情休止期」の4つのサイクルがあります。

発情前期

発情前期は1〜5日間程で、猫の擦りつける行動が見られます。いつもより活動性が上がり、尿の回数が増えます。この時期はオス猫がよってきても交尾には至りません。

発情期

発情期は4〜10日間程で、メス猫がオス猫を受け入れる期間です。メス猫は大きな声で鳴いたり、お尻を高く持ち上げたりします。オス猫もメス猫のフェロモンを感じ取り、大きな声で鳴いたりマーキングをしたりします。

発情後期

発情後期は1〜3日間程です。メス猫が排卵し、卵胞が退化していく期間です。メス猫は交尾を受け入れなくなります。

発情休止期

発情休止期は5〜16日間程です。メス猫が妊娠した場合は、約2ヶ月程で出産し次の繁殖期まで発情はしません。妊娠しなかった場合は、発情休止期の後再度発情がきます。

不妊手術の概要

当院での猫の不妊手術は両側の卵巣、子宮を摘出します。手術時期は初めての発情が来る前の生後6ヶ月前後をおすすめしています。一般的にはお腹を開けての手術になりますが、動物病院 京都(本院)では腹腔鏡を用いた手術も行っております。詳しくはブログhttps://x.gd/TqMP1をご参照下さい。

不妊手術の目的

猫の不妊手術をする目的は

  • 望まない妊娠を防ぐ
  • 病気になるリスクを下げる
  • 猫の発情期中の問題行動を防ぐ

ことです。
不妊手術で予防できる病気と発情中の問題行動について解説します。

不妊手術で予防できる病気

猫の不妊手術を受けることで予防できる病気がいくつかあります。

乳腺腫瘍

乳腺腫瘍は乳房の乳腺に発生する腫瘍で、腫瘍の中で3番目に多いものです。また乳腺にできる腫瘍のほとんどが悪性だとされています。

乳腺腫瘍の予防には不妊手術が大いに関わっています。乳腺腫瘍の予防率は初回発情がくる前で95%、1回発情が来ると92%、2回発情がくると74%です。発情の回数が増えるほど、年齢を重ねるほど予防率は低くなります。

子宮蓄膿症

子宮蓄膿症は子宮に膿が溜まり、状態によっては致死的な病気です。中高齢の猫に見られます。犬では多飲多尿や陰部が腫れるといった症状が認められますが、猫では症状があまり出ないため気づくのが遅くなる傾向にあります。

子宮内膜症

子宮内膜症は子宮内膜が何らかの原因によって炎症を起こし腫れる病気です。放置しておくと子宮蓄膿症になることがあるため注意が必要です。

卵巣と子宮の腫瘍

卵巣・子宮の腫瘍は猫では多くはないですが、悪性の場合が多いとされています。転移しやすいのが特徴です。初期には症状があまり認められないため、見つかった時には進行していることが多いです。

発情中の問題行動

鳴き声

発情期の鳴き声はオス猫にアピールするもので、メス猫は普段よりも大きい声で鳴きます。メス猫によっては一晩中鳴き続ける場合もあります。

スプレー行動

メス猫は発情期がくるとあちこちに排尿をしてオス猫にアピールします。

食欲

発情中は食欲が落ちる傾向にあります。食欲よりも繁殖の方に興味がいくためだと言われています。

不妊手術のデメリット

猫の不妊手術を受ける前に知っておいていただきたい点がいくつかあります。

  • 肥満になりやすくなる
  • 尿失禁(尿漏れ)する可能性がある
  • 毛刈り後脱毛する可能性がある

それぞれ解説します。

肥満になりやすくなる

不妊手術を受けた後は性ホルモンの影響により食欲が増します。また成長に伴って子猫の時ほど運動をしなくなるため体重が減りにくくなります。糖尿病、肝リピドーシス、関節炎といった病気のリスクに注意が必要です。食事はなるべく計量して一定量与えるようにします。食事の内容も低カロリーのものや、食物繊維が多く含まれているものを選ぶことをおすすめします。

尿失禁する可能性がある

不妊手術を受けた後、性ホルモンの分泌が減ります。これにより排尿に関わっている筋肉の収縮が弱まります。確率は低いですが、一時的に粗相そそうをしたりする可能性があります。

毛刈り後脱毛する可能性がある

不妊手術の際、傷口の周囲をバリカンで毛をかります。性ホルモンの分泌が減ることでその場所に毛が生えてこないことがあります。

尿失禁やバリカン後脱毛は何か問題になるわけではないですが、リスクを知った上で不妊手術を受けることをおすすめします。

まとめ

愛猫の不妊手術は、病気のリスクを下げたりや発情期中の問題行動を防ぐためにとても大事です。病気ではないのに全身麻酔をかけることへの不安を感じられる飼い主さんもおられると思います。当院では全身状態を把握するため手術前に検査を行いますので、安心して受けていただけます。もし何かご心配事ごとがありましたらスタッフまでご相談下さい。

初回発情がきた後でも不妊手術を受けるメリットはあります。もし不妊手術をご検討されている飼い主様は手術計画を含めて詳細をご相談させて頂きますので、スタッフまでお声がけ下さい。

どうぶつ病院 京都 四条堀川
獣医師 尾関康江