2024.09.24
こんにちは。
どうぶつ病院 京都 四条堀川 獣医師 尾関康江です。
「飼い猫が最近ドライフードを食べなくなったのだけど何が原因だろうか?」
「動物病院で歯肉が赤いと言われたけれど、何をしたら良いのだろうか?」
「歯肉口内炎で歯科処置をしたら完全に治るのだろうか?」
といった疑問をお持ちではないでしょうか?
今回は、猫の飼い主さんに
について解説します。
ぜひ、最後までお読みいただき、飼い猫の口腔ケアにお役立ていただければ幸いです。
歯肉口内炎とは歯の周囲にある歯肉(歯茎部分)に炎症が起こっている状態です。口内炎が1箇所に留まらず数か所認められる場合や広い範囲で認められる場合もあります。
猫の歯肉口内炎を起こすはっきりとした原因は分かっていませんが、関わっているとされている要因をいくつか解説します。
口の中の病変部から猫カリシウイルスが検出されるため関連性が報告されています。歯肉炎や口内炎を起こす他、口の中に潰瘍を形成したりします。
(潰瘍:粘膜がえぐれた様な状態)
エイズや白血病に感染していると、体の抵抗力が下がるため口内炎を発症しやすくなります。治療に対する反応も感染症に感染していない猫に比べると低く、完治することが難しいです。
歯に付着した歯垢や細菌に対して、免疫等が過剰に反応することで炎症が生じるとされています。歯の汚れと歯肉口内炎の重症度は必ずしも一致しません。
といった痛みや不快感を伴うことでの、日常生活や行動の変化が多く認められます。
症状が進行すると、痛みが強くなり食欲が落ちていきます。
歯肉口内炎の診断には特別な検査はなく、視診にて判断していきます。歯肉が腫れたり、赤い部分が実は腫瘍である場合がありますので、注意が必要です。麻酔下での生検が必要になる場合があります。
猫の生活環境によっては、歯肉口内炎を起こしやすいとされている猫エイズや猫白血病の感染症がないか血液で確認します。また、ワクチン接種歴や猫カリシウイルス感染症の有無も重要になります。
生検:患部の組織を一部採取し、顕微鏡で検査すること
歯肉口内炎の治療には内科治療と外科治療があります。根本的な炎症の原因を取り除くためには内科治療では限界があり、抜歯処置が推奨されます。
麻酔下での歯の処置です。歯石除去は口の中の細菌数を減らすことができますが、処置後徐々に歯石や細菌が歯に付着をし炎症を起こします。口の中の状態によっては抜歯処置が推奨されます。
炎症がひどく起こりやすいのは奥歯(臼歯)なため、全臼歯抜歯を行うことが多いです。奥歯(臼歯)の処置だけでは改善が乏しい場合は、犬歯を含めた全顎抜歯を実施します。全臼歯抜歯では60〜70%、全顎抜歯では70〜80%程改善すると報告されています。治癒率には個体差があり、免疫不全を起こすウイルス感染症(猫エイズ、猫白血病)をもっている猫では処置後も継続した治療が必要になることが多いです。
麻酔をかけることが難しい状況や、口内炎の程度が軽度の場合は内科療法で反応を見ることがあります。代表的な治療内容です。
主にステロイド剤が選択されます。歯肉の炎症を沈め一時的に症状の緩和が期待できます。ステロイド剤の長期使用は副作用を伴うこともありますので、注意が必要です。
口の中の細菌数を減らす目的で使用されます。
インターフェロン製剤は猫の免疫を強化、抗炎症作用、抗ウイルス作用があると報告されています。副作用はほとんどありませんが、単独での効果は弱いため、他の内科治療と併用される場合が多いです。注射剤と口に直接塗りこむタイプがあります。
口腔内の善玉菌を増やして、悪玉菌の増殖を抑えることを目的としたサプリメントです。口臭の軽減や痛みの緩和が期待できます。薬ではないため即効性は低いですが、緩やかに口腔内を健康に保ってくれます。
レーザー照射は歯肉の腫れ、炎症、痛みを緩和する目的で使用されます。通院下での処置が必要ですが、痛みを感じることもなく処置を受けることが可能です。
歯肉口内炎の程度によっては長期治療が必要になる場合もあります。適切に診断、治療することで猫の口腔内を健康的な状態に保ってあげましょう。歯の処置などご不安なことがありましたら、ぜひ獣医師にご相談下さい。
どうぶつ病院 京都 四条堀川
獣医師 尾関康江