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糖尿病性ケトアシドーシスについて|ケトアシドーシスの病態、治療について獣医師が解説

2024.12.03

こんにちは。
CUaRE どうぶつ病院京都 四条堀川 獣医師 尾関康江です。

前回は、猫の糖尿病について解説しました。
今回は、猫の飼い主様に

  • 糖尿病性ケトアシドーシスとは
  • ケトアシドーシスの症状
  • ケトアシドーシスのの治療

について解説します。
猫でよく見られる病気ですので、ぜひ、最後までお読みいただき病気について知っていただければ幸いです。
一部、専門用語が含まれますのでご了承ください。

糖尿病性ケトアシドーシスとは

糖尿病性ケトアシドーシスとは、糖尿病の合併症で、ケトン体が高くなることによって血液が酸性に傾く状態です。糖尿病が進行した場合、糖尿病のコントロールがうまくいかず高血糖の状態が続いた時に発生しやすいです。

普段は、食事から摂取したエネルギー源(ブドウ糖)はインスリンの働きによって血液から細胞内へ取り込まれます。糖尿病ではインスリンが上手く働かず、エネルギー源を細胞内に取り込めません。糖尿病が進行してエネルギーが不足すると、体は代わりに脂肪酸をエネルギー源として利用するようになります。この過程でケトン体という成分が産生されます。血液中にケトン体が増えると血液が酸性に傾きます。

基本的には弱酸性で維持されている体内が酸性に傾くと、体の調節機能が正しく働かなくなります。この状態をアシドーシス(糖尿病によるケトン体が原因であるものを特に糖尿病性ケトアシドーシス)と言います。脱水、中枢障害や昏睡などが起こり、最悪の場合死に至ることもあります。

糖尿病性ケトアシドーシスの症状

糖尿病性ケトアシドーシスの症状は以下のようなものがあります。

元気消失

体内のエネルギー不足で元気が消失します。

食欲不振

血糖値が高いにも関わらず、細胞が十分なエネルギーを取り込めない状態になっているため、ぐったりとして立ち上がれず食事を摂ることが難しくなります。

嘔吐

体がケトン体の過剰な蓄積を適切に処理できない場合、吐き気や嘔吐が引き起こされることがあります。体が毒素を排出しようとする防御反応の一部です。

脱水

高血糖を処理するために、腎臓は余分な糖を尿に排出しようとします。尿量が増えると、体の水分が失われ体は脱水傾向になります。

意識障害・昏睡

重度のケトアシドーシスの場合、意識障害や昏睡を引き起こす可能性があります。

脳が正常に機能するために必要なエネルギーが不足していること、体内の酸塩基バランスの深刻な乱れが原因となります。

糖尿病性ケトアシドーシスの診断

ケトアシドーシスは、

  • 糖尿病であること
  • 尿中にケトン体が出ていること
  • アシドーシスであること

この3つが当てはまることで診断されます。

アシドーシスとは体内の酸性度が異常に高まる状態を指します。普段は血液ガスで測定されますが、機械がない場合はミネラルバランスの崩れ、意識状態・脱水の有無など全身状態から判断されます。

※血液ガス:血液中の酸素、二酸化炭素などの気体の圧力、水素イオンの濃度を数値化したもの

糖尿病性ケトアシドーシスの治療

最優先される治療は、脱水症状とミネラルバランス異常の改善になります。脱水症状が強いとインスリンが十分な効果を発揮できないためです。

十分な点滴で脱水症状が改善された後は、インスリンを用いた血糖値コントロールの治療を始めます。電解質と血糖値が安定すると無事に入院治療が終わり、通院での治療による血糖値モニターに移行していきます。

糖尿病性ケトアシドーシスの予後

早期であれば治療反応も良いですが、状態が厳しい場合は命を落とす可能性があります。糖尿病性ケトアシドーシスの死亡率は7−30%という報告があります。

まとめ

「ケトアシドーシス」は糖尿病に関わる病態の中でも特に危険な状態として知られています。健康診断や日頃からの観察は早期発見の手助けとなります。日頃から飼い猫の状態を把握し、少しでも気になることが出てきた場合は獣医師にご相談下さい。

CUaRE どうぶつ病院京都 四条堀川
獣医師 尾関康江