診療予約

ブログ

  • ホーム
  • ブログ
  • 犬の椎間板ヘルニア|犬の椎間板ヘルニアの診断・治療について獣医師が解説

犬の椎間板ヘルニア|犬の椎間板ヘルニアの診断・治療について獣医師が解説

2024.08.13

こんにちは。
どうぶつ病院 京都 四条堀川 獣医師 尾関康江です。

「診察で背中が痛そうだと言われたと言われたけれど具体的にはどんな病気なの?」
「椎間板ヘルニアって診断されたが、どういうところに注意したら良いの?」
といった疑問を抱かれていませんでしょうか?

今回は、犬を飼われている飼い主さんに

  • 椎間板ヘルニアとはどういう病気か
  • どのような症状が出るのか
  • 治療方法

について解説します。
是非最後までお読みいただき、飼い犬との健やかな日々にお役立て下さい。

椎間板ヘルニア

背骨と背骨の間には椎間板と呼ばれるクッションの役割をしている物質があります。椎間板に何かしらの障害が起こることで、背骨の中にある脊髄を圧迫する病気を椎間板ヘルニアといいます。

犬の背骨は、頸椎(頸の骨)が7個、胸椎(胸の背骨)が13個、腰椎(お腹の背骨)が7個あります。椎間板ヘルニアは、第2-3頸椎、第12-13胸椎、第13胸椎–第1腰椎の間で起きやすいとされています。

椎間板ヘルニアの種類

椎間板ヘルニアは発症機序によってハンセンⅠ型とⅡ型に分かれます。

ハンセンⅠ型

椎間板は外側の線維輪(コラーゲンを含む成分)と内側の髄核(ゼラチン状のもの)で構成されています。変性して硬くなった髄核が線維輪を突き破って、脊髄に障害を及ぼすのをハンセンⅠ型といいます。

軟骨異栄養という遺伝的素因をもつ犬種に多く発症すると言われています。ダックスフンド、ウェルシュ・コーギー、ビーグル、フレンチブルドックといった胴長の犬種が後発犬種です。

椎間板の変性は比較的速く進行し、若いころから発症するのが特徴的です。急性の痛みを伴い、後ろ肢が完全に麻痺している場合は緊急性の高く迅速な対応が必要となります。

ハンセンⅡ型

ハンセンⅡ型は、加齢に伴って膨らんだ線維輪が脊髄を圧迫するもので、人の椎間板ヘルニアに似た病態です。成犬から老犬、また軟骨異栄養犬種以外の犬で多く認められます。

グレード分類

椎間板ヘルニアは進行状況によってグレード分類されます。
グレード分類は緊急性の判断や治療法の選択にとても重要です。

グレード1

痛みがあるだけで肢の麻痺はない状態です。

何となく背中を丸めて過ごしていたり、抱っこするときにきゃんと鳴いたりする症状が出ます。

グレード2

後ろ足の力が弱くなり、足先の感覚が鈍くなります。自力で立ち上がり歩ける状態です。歩くときにふらついたり、足先がひっくり返る(ナックリング)症状が出ます。

グレード3

後ろ足の神経的な感覚はあるものの、完全に麻痺になり動かせない状態です。前足だけを動かし下半身は引きずって歩きます。尿意は分かり自力での排尿はまだ可能です。グレード3以上は症状が重くなり、外科的治療が積極的に望まれます。

グレード4

自分の意思で排尿ができなくなります。膀胱に溜まった尿が腹圧でぽたぽたと流れ出す状態になります。神経的な感覚はかなり弱くなりますが、強い刺激には反応できます。

グレード5

痛みの感覚が完全になくなります。自力では歩けなくなり、迅速な治療が必要な状態となります。

椎間板ヘルニアは発症の3〜6%の症例が、脊髄軟化症と呼ばれる生命に影響を及ぼす状態になります。障害を受けた脊髄から、頭側と尾側に炎症や出血が広がり麻痺が進行します。椎間板ヘルニアは適切な診断と治療が必要になります。

診断

椎間板ヘルニアの正確な診断にはMRI検査が必要です。単純レントゲン検査では背骨の形や位置は確認できますが、椎間板や脊髄が見えにくいためです。MRI検査にて脊髄が圧迫を受けている位置、脊髄神経の状態まで詳細に把握することが可能です。

その他

  • 神経学的検査
  • 血液検査
  • レントゲン検査

といった一般的な検査、犬種、症状から病気をある程度絞りこみます。

治療

内科治療

症状が軽い場合、安静に過ごすことと薬での治療が中心になります。脊髄の腫れや炎症を抑える目的でステロイド剤や非ステロイド性消炎鎮痛剤が使用されます。安静の期間は犬の状態にもよりますが大体2〜4週間位が目安です。その他当院ではレーザーを用いた温熱療法も行っています。(※レーザー処置は動物病院 京都 本院での処置となります)

外科治療

症状が重い場合(おおむねグレード3以上)、外科手術が推奨されます。グレード1や2でも椎間板ヘルニアを繰り返す場合は、外科手術が検討されます。背骨を少し削って脊髄神経を圧迫している椎間板物質を取り除く手術になります。

予後

外科処置をした後の回復率についてです。グレード3と4に関しては外科処置での回復率は90%近くあります。グレード5に関しては60%程です。これらの数値はあくまで報告されたもので、脊髄の障害が重度であっても手術後のリハビリによって歩行が可能になる場合もあります。

予防

残念ながら椎間板ヘルニアを完全に予防する方法はありませんが、お家で気をつけられるポイントがいくつかあります。

  • 肥満にならないよう適切に体重管理をする
  • 階段やソファへの登り降りは控える
  • フローリングの上にマットを敷いて滑らないようにする
  • 犬の上半身だけを支えた抱っこは避ける

まとめ

椎間板ヘルニアは急に起こることが多く、グレードも急に進む場合もあります。これに戸惑われる飼い主さんも多くいらっしゃるかと思いますが、迅速な診断・早期の治療で回復が見込めることが多いです。飼い犬の歩き方や様子が少しでもおかしいと感じられた場合は、なるべくはやめに動物病院を受診するようにしましょう。

どうぶつ病院 京都 四条堀川
獣医師 尾関康江