動物病院 京都では、園田を筆頭とし、獣医皮膚科学会に所属し、わんちゃんねこちゃんの皮膚のトラブルに対し、ステロイドに頼りすぎない治療を最新の知識、治療法を用いて実践しています。また、「皮膚がかゆい・赤い・ブツブツしている」などから「なんとなくアレルギー食をあげているけど、良くならない」「いろいろやったが、毛は生えない」など様々な病気に対し、適切な診断及び治療を心がけています。
このページでは動物病院 京都の過去診察データから特に発症が多いと思われる以下7つの疾患をピックアップし、その症状の特徴や当院での対応を説明致します。なお当たり前ではありますが、診察において当院獣医師は個別状況をよく確認してから判断致しますので、ここに記載している対応方法と実際の対応方法は必ずしも同じにはならない可能性がございます。
小さいものは、ポチッとした発疹から始まります。大きくなると、円のふちはかすかな皮膚カス・剥がれが見受けられ、円の中心から赤くなり、次第に円のわっか部分に赤い部分が移動していきます。さらに症状が進むと中心部が黒くなることもあります。飼い主さんが気づいた頃には、数個に広がっていることも多いです。
背中、脇、股、おしり、肛門周囲、首元
主に春、夏、秋(皮膚が弱い子は、寒い時期にも起こります)
皮膚をきれいに保つことが解決につながるため、当院では皮膚科専用のシャンプーを用いた外用療法をおすすめしています。また、適した洗い方をお伝えしています。シャンプーなどの外用療法で治らない場合は、全身の抗菌剤を使用したりすることもあります。脂漏症、犬アトピー性皮膚炎、甲状腺機能低下症、クッシング症候群などの病気が併発していると治りにくいこともあります。しっかりと全身をチェックし、適切な検査・治療をしていく必要があるでしょう。
皮膚が赤くなったり、脱毛したりする症状のほか、悪化すると赤くじゅくじゅくしたり、色素沈着で黒くなったりもします。脱毛がひどく皮膚がそのまま見えることもあり、皮膚がごわごわすることもあります。
目の周り、口の周り、耳、四肢、足裏、ときに脇、股など
主に春先から夏など暑い時期に多いですが、慢性化すると年中症状がでます。
犬アトピー性皮膚炎の症状はまず痒みです。初期には皮膚が赤くならず痒みだけ出ることもあります。多くの場合、慢性的で再発を繰り返すことが特徴です。また、左右対称の皮膚症状が出ることも多いです。検査としてはIgE検査(*外注、血液アレルギー検査)、皮膚スタンプ検査(院内OK、皮膚表面のばい菌・カビを顕微鏡で確認)、毛検査(院内OK、患部近くの毛を抜き、毛包に潜むダニの有無・毛の成長具合を確認)などです。治療として、標準的にはステロイドを使用しますが、副作用などを考え、当院では新しい治療法であるアトピーワクチン(*減感作療法)、インターフェロン療法、また外用療法(塗布剤、適切なシャンプー療法)などを実施しています。また、新たなかゆみ止めである新薬(アポキル)、治療補助薬としてシクロスポリンを使用して、極力ステロイドに頼らない治療を目指しています。
*院外の検査会社さんに検体を提出する外注検査になりますので、結果を即日お返しすることは出来ません。
*アレルギーの発生に関連する物質を意図的に体内に投与することで、アレルギー反応に身体を慣れさせ、次第に症状を緩和していく治療法です。
脂っぽい臭いを特徴とします。皮膚は赤くなったり、脱毛したりします。皮膚がごわごわしたり、脂のかたまりがでたりすることもあります。
擦れる部分に多いです。首元、皮のひだ、四肢、四肢の付け根、肘や膝などの関節周囲などです。
体質的に脂が出るタイプは季節に関係なく、皮膚炎を引き起こします。
脂がたまることによりそこに脂をえさとするカビなどが繁殖し、皮膚炎が起き、かゆみが発生します。皮膚から全身的あるいは局所的に脂の臭いが発生するため、他の病気と違い、最近体臭が変化してきたなどで気づくこともあります。体質的に脂が出やすいタイプは、洗い流しを繰り返しても治まらないことも多いです。病歴の問診をしっかりしつつ、皮膚にカビ(マラセチア)がいるかどうか他の病気がないかどうかを確認します。当院での治療は、脂漏にあったシャンプー、また当院で実施される特殊な温浴である院内特殊炭酸浴(専用機器にて血流を良くする・不要な脂ヨゴレを落とす効果があるもの、週1回〜月数回の利用が望ましい)の実施、痒みのコントロールとしてステロイドに依存しすぎない治療薬の選択、ときに減感作療法を実施したり、シクロスポリンを使用することもあり、概ね臭いやひどくならないようにコントロールできることが多いです。
左右対称性の脱毛ができたり、関節周囲に片側だけにできたりと、様々な部位に発生する脱毛を特徴とします。かゆみがでないこともあります。
耳、目の周囲、顎下、四肢、体幹部、臀部など様々です。
脱毛症は、季節に関係なく発生します。冬に出ることもあります。
かゆみをともなって掻くことで脱毛することもありますが、その場合は単純な脱毛症ではなく、背景に皮膚病や身体の異常があったりすることも多いです。かゆみを伴わずにただ抜けていく場合は、ホルモン疾患(甲状腺や副腎etc)、休止期脱毛症、皮膚の栄養失調、血行障害、原因未定の脱毛症など様々な疾患があります。治療としては、原因をしっかりと見極め、それに見合ったきめ細やかな治療を選択していきます。院内特殊炭酸浴(カーボンセラオンパー)、血行障害改善薬、内分泌疾患改善薬、適切な食事指導(皮膚栄養食)などが主な対処で、時に避妊去勢手術で治ることもあります。院長園田は当分野に詳しい皮膚科専門医の協力を得ながらこの脱毛症については特に深く勉強し、実際に長年生えてこなかった脱毛症が生えてきたケース・実績もあります。
寄生虫症は主に二種類に分けら疥癬れます。毛包虫症では、脱毛やかゆみが出ます。疥癬症の場合は、皮膚が赤くなったり、かさかさしたり、かさぶたが重なったりします。
毛包虫症は、頭部、四肢端、臀部などです。疥癬症は、腹側皮膚を中心として、耳や肘に出るのがかなり特徴的です。
毛包虫症は季節に関係なく発症します。疥癬症は、暑い時期が中心ですが、疥癬との接触を境に発症します。
毛包虫症は、若齢(~1歳目安)あるいは高齢(6歳~目安)になって発症することが多いです。若齢の場合はまだ皮膚の免疫力が弱く、飼育してからしばらくして、脱毛したりかゆみを伴ったりします。高齢の場合は内分泌疾患や腫瘍などの持病があれば、重篤化することもあり、感染が深部に達してしまうこともあります。主に毛検査で診断します。疥癬症の場合は激しい痒みを特徴とし、突然の発症が多いです。さらに適切な治療が行われない場合は、どんどん症状が進行し、皮膚がボロボロになってしまうこともあります。当院での治療は、いずれもイベルメクチンやドラメクチンなど毛包虫を駆虫する薬剤治療薬を用います。寄生虫症だけが原因であれば短期間に駆虫を実施でき、それ以降は良好な治療経過をたどり、完治することも多いです。
耳が臭ったり、赤くなったり、ごわごわしたり、発疹ができたり、耳を振ったりします。
耳の中、耳介部、あるいは耳の外側です。
暑く湿った季節に発症する場合が多いですが、冬場に出ることもあります。
軽い症状の場合は、赤みを伴わず耳が臭いだけのときもあります。症状が強くなると、耳垢が多く出たり、赤みが強くなったり、ひっきりなしに耳を掻いたりすることもあります。特に中耳炎などは突然発症し、場合により皮膚とは関係なく中耳炎によるふらふらするなど神経の症状が出ることもあります。検査として、耳垢検査を中心として、当院では耳内視鏡(オトスコープ)を用いて、耳の内部を観察し、状況によりそのまま薬剤を注入したり、耳内の腫瘍を切除したりする治療を実施します。慢性的な耳の治療においては、耳内視鏡が非常に重要です。漫然と治療を実施せず、しっかりと原因を見極め、それに応じた適切な検査・治療を実施することで、長年患った耳の病気が完治することも多いです。
アレルギーは皮膚炎を起こすため、殆どの場合は皮膚が赤くなります。ひどくなると皮膚がごわごわしたり黒くなったりもします。
アレルギーの種類によって様々です。ノミアレルギーの場合は主に臀部、食物アレルギーの場合は様々な部位に発症します。
アレルギーは、そのアレルギー物質に触れた時に発症するため、季節は関係ないことも多いですが、ノミアレルギーは主に暑い時期を中心とします。
アレルギーが引き起こす皮膚炎は発生頻度順に、犬アトピー性皮膚炎、疥癬アレルギー性皮膚炎、ノミアレルギー性皮膚炎、食物アレルギー性皮膚炎があります。いずれも痒みを特徴とします。IgE検査(アレルギー検査方法の一種)などを実施することもあります。当院の治療は、一時的なアレルギーであれば、痒み止め(内服ステロイド含)を使用しますが、慢性的な痒みの場合は原因を追求し、原因を取り除く治療や、時にアトピーワクチン(減感作療法)、外用薬を用いた治療などを実施します。ノミアレルギー性皮膚炎については、ホームセンターで売られているスポットタイプのノミダニ予防薬を用いたご家庭での対処が、その手軽さ故に多く見受けられます。しかしこれらはあまり効果があがっていないことが多いです。現在の皮膚科診療では、スポットタイプのノミダニ予防薬は推奨されないため、治療として経口のノミダニ予防薬を実施します。
文責:獣医師 園田