当グループでは獣医師黒島がJAHA(日本動物病院協会)内科認定医を取得しており、一般的な内科疾患に対して適切な診断、治療を最新の知識を用いて行っております。一般内科は範囲が非常に広いのですがその全てにたいして適切な対処を心掛けております。
このページでは、本院である動物病院 京都の過去診察データから特に発症が多いと思われる7つの疾患をピックアップし、その症状の特徴や当院での対応を説明致します。診察において当院獣医師は個別状況をよく確認してから判断致しますので、ここに記載している対応方法と実際の対応方法は必ずしも同じにはならない可能性がございます。
吐く、下痢をする、便の回数が多い、何回もトイレに行く、ゼリー状の便がでる(粘液便)、黒いタール状の便がでる(メレナ)、真っ赤な便がでる(鮮血便)、食欲の低下などがみられます。
猫よりも犬でよくみられます。柴犬、ボーダーコリー、ジャーマンシェパードドッグでよくみられます。
季節の変わり目や何かストレスがかかった時によくみられますが、それ以外の時でもみられます。食事が原因のことも多いです。ウイルスや腸内での悪玉菌の増殖、腸でのアレルギーにより起こることもあります。
治療は病気の程度、原因により変わります。単純なものでは整腸剤や腸内の悪玉菌をやっつける抗生剤、食事療法(低脂肪で消化の良い食事)などで比較的すぐ治ります。ビタミンB12を補充する場合もあります。胃腸内でのアレルギーが関わっているような場合はそのアレルギーを抑えるような薬(ステロイド、シクロスポリン、クロラムブシルなど)やアレルギーを起こしにくい消化の良い食事を使用したりします。幼い犬、猫や免疫が弱っている高齢動物では寄生虫が原因となる場合もあり、この場合は虫駆除の薬を使用します。また副腎という臓器から出るホルモン(コルチゾール)が不足している場合(副腎皮質機能低下症、アジソン病と呼ばれます)も胃腸に障害がでる場合があり、この場合はホルモン内服薬処方が必要となります。
トイレ回数が多い(頻尿)、尿の色が赤い(血尿)、尿が出にくそう、尿がでないなどがみられます。
犬よりも猫でよくみられます。
水を飲む量が減る冬場での発生が多いといわれていますがそれ以外での季節でもみられます。猫での発生が多く、猫ではストレスも大きな原因となります。
原因に応じた治療を行います。若い猫ではストレスなどによる特発性膀胱炎、尿石による膀胱炎が多いです。尿が濃いと尿石ができやすくなります。この場合は尿石ができにくい食事への変更を行い、水を飲む量を増やしてもらうような工夫(ドライフードから缶詰に変えるなど)をしてもらいます。膀胱内での炎症が激しく、痛みがでている場合は、痛み止めや尿を薄めるための点滴を行うことも多いです。逆に高齢の猫では腎機能が徐々に低下していき尿が薄くなることにより、細菌感染による膀胱炎が増えていきます。高齢猫では尿石や特発性膀胱炎はあまりみられません。この場合では適切な抗生剤を使うことにより治療します。犬でも尿石、細菌による膀胱炎が起こります。適切な抗生剤、食事療法により治療します。
尿の量が多く水を飲む量も多い(多飲多尿)、痩せてきた、よく吐く、食欲が低下するなどがみられます。
猫で多くみられます。
季節に関係なく起こります。高齢になることによる腎機能の低下で起こります。
病気の進行具合により軽度の状態から重度の状態まで様々な状態があり、状況に応じた対処、治療を考えていきます。どの段階でも薦められるのが食事療法です。高タンパク、高塩分の食事は腎臓に負担をかけるので低タンパク、低塩分の食事に変更します。また、ベナプロストナトリウムという腎臓の血流を増やす薬を使用することもあり、猫の腎臓病の進行を遅らせるといわれています。脱水は腎臓病が進行する大きな原因となるため水分をたくさん採る工夫(ドライフードから缶詰に変えるなど)もご提案します。腎臓病が進行した場合、入院または通院で点滴を行うことも多いです。タンパク尿や高血圧も腎臓病が進行する原因となるため、尿検査や血圧測定により異常が発見された場合は血圧を下げる薬を使用します。また腎臓病の進行に伴い貧血がみられることもあり、赤血球をつくるホルモン剤を使用することもあります。
何回も吐く、食欲の低下、お腹が痛そう(触ると嫌がる、祈りの姿勢)などがみられます。
ミニチュアシュナウザーなどの高脂血症を起こしやすい犬種で多いといわれています。
脂分の多い食事(牛肉やケーキなど)を食べた後に発生しやすいです。季節性は特にありませんが年末や夏休みに人間の食べ物を食べてしまい来院されることが比較的多いです。猫では腸炎や胆管の炎症が同時に起こる場合が多いです。
治療の基本は、点滴での水分・ミネラル補充、吐き気止め、腹部の痛みに対する鎮痛剤の投与です。食欲がでてきたら低脂肪の食事を与えます。吐くのさえ止まれば絶食の必要はないため、できるだけ早めに食事を与えた方が早く治ります。胃腸の運動の低下がみられることも多く、そのような場合には胃腸の動きを改善する薬も使います。膵炎の発生に免疫が関わっていることもあり、その場合はステロイドなどの免疫を抑えるような薬を使うこともあります。
元気、食欲の低下、吐く、下痢、お腹が膨れる、目の白目の部分や口の粘膜が黄色いなどの症状がみられます。
よくみられるのは中毒、慢性肝炎、胆嚢粘液嚢腫です。中毒は犬、猫関係なくみられます。慢性肝炎はアメリカンコッカースパニエル、ラブラドールレトリバーでよくみられます。胆嚢粘液嚢腫はミニチュアシュナウザー、シェルティー、アメリカンコッカースパニエル、ポメラニアン、チワワでよくみられます。
季節性は特にありません。慢性肝炎は肝臓への銅の蓄積や免疫が関わることにより起こります。胆嚢粘液嚢腫は胆嚢の中で胆汁がドロドロになりすぎることにより発生します。
基本的な治療は安静にして、点滴で水分・ミネラルを補充して、状況に適した充分な食事を与え、必要な薬を使用することです。よく使われる薬としては胆汁の流れをよくする薬(ウルソデオキシコール酸)、肝臓を保護する薬(シリマリン、SAMeなど)などがあります。ビタミンCやビタミンEも抗酸化作用があるので使われることもあります。胆汁の流れが悪く、血が止まりにくい場合にはビタミンKも使います。感染が疑われる場合には積極的に抗生剤を使用します。免疫が関わっている場合にはステロイドなどの免疫を抑える薬も使用します。胆嚢粘液嚢腫は胆嚢を切除する外科手術が必要となる状況も多いです。
糖尿病:水をよく飲む、尿の量が多い、よく食べるのに痩せてくる。
クッシング症候群:水をよく飲む、尿の量が多い、お腹が膨れている、皮膚の脱毛がみられる、脂肪が増えて筋肉が減る。
甲状腺機能低下症:何となく元気がなく食欲もイマイチ、寒さに弱い、あまり食べていないのに太っている、皮膚の脱毛がみられる。
甲状腺機能亢進症:元気がありすぎる、よく食べるのに痩せてくる、水をよく飲む、尿の量が多い、怒りやすくなった、吐きやすい、下痢しやすい。
糖尿病:犬では小型犬、猫では肥満猫でよくみられます。
クッシング症候群:小型犬でよくみられます。
甲状腺機能低下症:柴犬、ビーグル、シェルティーでよくみられます。
甲状腺機能亢進症:猫でよくみられます。
糖尿病:膵炎や肥満、クッシング症候群が原因となることが多くインスリンが不足して血糖値が上がります。
クッシング症候群:脳下垂体や副腎の腫瘍が原因で起こり、副腎からホルモンが出すぎます。
甲状腺機能低下症:甲状腺の炎症が原因で起こり、甲状腺ホルモンが不足します。
甲状腺機能亢進症:甲状腺の腫瘍が原因となり甲状腺ホルモンが出すぎます。
糖尿病:インスリン及び食事療法を行います。
クッシング症候群:副腎からの過剰なホルモンを抑えるような薬を使用します。
甲状腺機能低下症:甲状腺ホルモンの補充を行います。
甲状腺機能亢進症:過剰な甲状腺ホルモンを抑える薬を使用します。
元気がない、食欲がない、ぐったりしている、呼吸があらい、粘膜が白いなどがみられます。
ミニチュアダックスフント、シーズー、トイプードルでの発生が多いです。猫では猫白血病ウイルスに感染している猫でよくみられます。
免疫性(自分で自分の赤血球を破壊してしまうことにより発生します)
治療は緊急状態の回避のための輸血と免疫を抑える薬(免疫抑制剤)の使用が基本です。非常に重度な免疫の異常が起こっているので過剰な免疫を抑えるために強力な免疫抑制剤を使います(高用量のステロイド、ミコフェノール酸モフェチル、レフルノミド、ヒト免疫グロブリン)。また血栓症の併発も多いので血栓ができにくくする薬も使用することがあります。
文責:獣医師 黒島