動物はどこが痛いとは言ってくれません。
骨折や脱臼の症状のある動物を整形外科担当が身体検査や観察を丁寧に行い、レントゲン検査をはじめとする各種検査を適切に行うことで診断いたします。
各種外科手術にも対応しており、術後はリハビリを行うことで長期的なケアも行うことができます。
当院では整形外科専門の担当医が診察や手術を行いますので、豊富な手術経験と実績を活かしながら、適切な手術が行えるよう技術の習得を行っております。また、クリーンルームによる手術室を設け、環境整備も整えています。
当院では、日本獣医麻酔外科学会(整形外科委員会)に所属している専門医である木村を中心に、日々進歩する整形外科の技術を習得し、行っています。チワワやポメラニアンなどの小型犬に多い骨折はもちろんのこと、前十字靭帯断裂や膝蓋骨脱臼などの難しい症例にも豊富な実績と経験のあることが強みです。
当院の整形外科担当の専門医である『木村』はCCRP(アメリカのリハビリ専門の資格)を保有しており、ご自宅で実施できるリハビリ方法のレクチャーなど、術後のアフターフォローまで丁寧にご説明します。また、日本で数人しか行うことができないTPLOの手術も行うことができます。
これらに該当する場合は骨折や脱臼、靭帯断裂などの整形外科領域での診察が必要な可能性が疑われます。
心臓の音、心拍数とリズム、呼吸音、呼吸数などのチェックや全身の状態を診察します。
X線検査で骨などの診断を行います。
整形外科以外の病気ではないかの確認を行います。
2007年 大阪府立大学 農学部 獣医学科 卒業
2007〜2008年 獣医教育先端技術研究所(iVEAT) インターン
2008〜2014年 藤井寺動物病院・動物人工関節センター 勤務医
2014〜2020年 藤井寺動物病院・動物人工関節センター 副院長
2019年〜 大阪府立大学 生命環境科学研究科 博士課程 入学
2020年〜 動物病院 京都 本院 勤務医
京都動物医療センター 整形外科担当医兼務
獣医師国家資格
テネシー大学公式認定CCRP(Certified Canine Rehabilitation Practitioner)
AO VET Small Animal Principles Course
AO VET Small Animal Advances Course
AO VET Small Animal Masters Course
BioMedtrix Micro & Nano Hip Workshop
ソファや階段から落ちたり、段差を踏み外したり、あるいは何か踏みつけてしまったなど、ちょっとしたことで骨が折れることがあります。折れた後は、ほぼ足を地面に着けず、触ろうとすると極端に嫌がったり、鳴いたりすることもあります。痛みから、元気がなくなったりすることも多く見られます。ひどい時は食欲がなくなることもあります。
前肢の骨折のため、左右差なく前足に発生します。
小型犬(トイプードル、ティーカッププードル、ポメラニアン、チワワ、ヨークシャーテリア、マルチーズなど)に多く発生します。特に体重5㎏以下の小型犬は要注意です。さらに体重2kg以下の超小型犬の場合は、小型犬以上に骨折しやすいため、生活環境には十分に気をつけましょう。中型犬・大型犬の場合は、激しい運動などにより骨折します。
レントゲン検査を実施し、骨折部位を特定します。当院では、橈尺骨骨折・上腕骨骨折において、非常に安定性の高い最新の治療法であるロッキングシステムを用いて、特定された骨折部位の整復をします。ロッキングシステムは、骨にあてるロッキングプレートおよび固定するロッキングスクリューを使用し、骨折の安定を図ります。状況に応じ、従来型のプレーティングや創外固定といった方法を使用することもあります。入院期間は1〜2週間程度です。プレート等は皮膚下に埋め込み、回復後は基本的にそのプレート等は除去することになります。
橈尺骨骨折のプレート固定
後ろ足付近の骨折の多くは、交通事故や外傷など強い衝撃が加わった時に生じます。単純な骨折というより、粉砕骨折や複数の骨折が重なって起きていることも多く、場合によっては、骨盤近くに存在する膀胱、尿管、尿道、結腸・直腸などが損傷し、おしっこやうんちが出にくくなり、命の危険にさらされることもあります。
後肢、骨盤付近のため、主におしり、後ろ足付近に生じます。
犬種、猫種に関わらず起こりえます。特に猫は、突然の脱走や、マンションの上階から落ちてしまうといった落下事故などによっても起こります。
橈尺骨骨折同様、レントゲン検査にて骨折部位を特定します。後肢・骨盤の骨折の場合は、超音波検査で膀胱が傷ついていないか、血液検査で腎臓障害が起きていないかなど、様々な検査を実施し、命の危険性がないかどうかを判定していきます。
前肢の骨折同様、安定性の高い骨折治療術が求められるため、ロッキングシステムを使用したり、さらに安定させるために、ロッドと呼ばれる棒のようなものを組み合わせて入れたり、ワイヤーを追加したりすることもあります。状況によっては、いわゆる添え木(外固定)を実施するだけで治療がうまくいく子もいますが、基本的には、しっかりとしたプレート単独、ロッド、あるいはワイヤーなどを組み合わせて治療することが推奨されています。
急な方向転換や坂道をダッシュした時、高いところにジャンプしたときなど、膝に負担がかかる運動をした際に、突然足を上げはじめるということが多いです。不完全な断裂の場合は、徐々に痛くなることもあり、最初は少しの違和感程度から始まり、ある時を境に完全に足を上げてしまうということもあります。動物病院などで、もとから膝が外れやすいと診断されている、あるいは肥満傾向の犬はより注意が必要です。
前十字靭帯は膝関節の中にあるため、左右両方あるいはどちらかの後ろ足に生じます。
よく起こりやすい犬種は、ゴールデンレトリーバーやラブラドール、またバーニーズ、シェパードなどといった大型犬に多く、小中型犬では、ウェルシュコーギー、ボーダーコリー、ポメラニアン、トイプードルなどに見られます。猫で起こることはまれです。
膝関節を注意深く触診し、レントゲン検査により前十字靭帯周囲の脂肪や、骨の角度により、大まかな診断をします。必要に応じて関節液の検査や、膝関節の超音波検査をすることもあります。体重5kg以上の犬の場合、前十字靭帯断裂整復術には、世界的に最も実施されているTPLO術で治療します。TPLO術は、日本語で「脛骨高平部水平化骨切術」といい、脛骨を切ってプレートで止めなおすことで、大腿骨と脛骨の角度を矯正する手術です。小型犬や、大きな手術を回避したい場合は、関節外法や絶対安静を組み合わせて治療することもあります。
完全に足をあげるのではなく、触られるのを嫌がったり、後ろ足を伸ばしている姿をしたり、触った時にコリコリする感触で気づくこともあります。生まれつき膝のおさら(膝蓋骨)がゆるい、外れやすいことも多く、成長とともにそのゆるさが悪化し、よく足をあげるようになったり、散歩に行くのを嫌がったりすることもあります。しかし、膝蓋骨単独でひどい症状が出ることは少ないともいわれており、強く足をあげるなどの症状が出た場合は、股関節あるいは前十字靭帯も悪化していることも多くみられます。
膝蓋骨は、大腿骨と脛骨の中間にあり、特に左右差はなく、後ろ足に発生します。
トイプードル、ティーカッププードル、ポメラニアン、チワワ、ヨークシャーテリア、マルチーズなどの小型犬に多く発生します。これらの小型犬は、膝蓋骨が内側にずれることが多く、ミニチュアダックスや大型犬は、膝蓋骨が外側にずれることが多いです。
触診することで比較的容易に、膝関節脱臼の重症度は判定できます。レントゲン検査にて膝関節周囲の骨がどれくらい変形しているか、関節炎の存在などを確認していきます。膝蓋骨脱臼整復術は、軽度な症状かつ特に若い時に実施できた場合は、膝蓋骨がのっている大腿骨滑車という溝を削ることで治ることも多いです。症状が進行しひどくなっている場合は、脛骨粗面転移術(脛骨という膝蓋骨より少し下にある骨を少し切り、移動させ骨を概ねまっすぐにする)という手術を実施します。早い場合は数日から1週間程度で退院となります。
突然、後ろ足が麻痺し、両方の足をひきずっている、歩けなくなる、おしっこが出なくなる、うんちが出なくなるといった強い症状がでます。症状が軽い場合は、なんとなく元気がない、食欲がない、抱っこすると嫌がる、「キャン」と鳴く、段差を上ろうとしないなど、やや曖昧な症状のこともあります。
首などに起きた場合は、主に前足と後ろ足に症状がでます。腰に生じた場合は、後ろ足だけに症状が出ることがほとんどです。
腰の長いミニチュアダックスやコーギー、あるいはビーグルに発生します。最近では、トイプードルは痛いだけ、調子が悪いだけといった、麻痺が出ない症状の子も多いです。
一般診療で、足先をひっくり返したり、少しつねって痛覚が衰えていないか、背中を押して痛がらないかなどを確認したりなどの神経学的検査を実施します。触るだけの検査ですが、チェック項目が多く、神経学的検査を実施することで、ある程度損傷部位がどこかを見極めることができます。レントゲン検査も実施しますが、それだけではわからないことも多く、神経学的検査などにて椎間板ヘルニアを疑う場合には、CT・MRI検査を実施することがほとんどです。CT・MRI検査にてヘルニア部位が特定された後、その部位の近くの骨に少し穴をあけ、突出している椎間板物質を除去し、椎間板物質による圧迫のせいで伝わりにくくなっていた神経刺激を通しやすくします。重症度が中等度までの場合、早期に手術をすることで、ほぼ正常と変わらないくらいまで回復することも多いです。重症度がもっとも重度である場合は、手術をしても術後に麻痺が残ってしまうこともあります。いずれにしても早期治療は、治る確率を高めます。
後ろ足をけんけんしたり、引っ張ると痛がったりします。レッグペルテス症は若いころに起きることがほとんどです。突然、後ろ足が痛みだしたと思ったら、股関節疾患の可能性が高まります。股関節形成不全症は、生まれつき股関節が弱いことがあるため、幼少期から注意が必要です。
股関節の病気は、後ろ足の動きに異常が生じます。極端にびっこを引いたりすることもあれば、症状がわかりにくい場合もあります。
レッグペルテス症は、ヨークシャーテリア、トイプードル、ポメラニアンなどです。股関節脱臼は、すべての犬に起こりえます。股関節形成不全症は大型犬が多く、軽度のものを含めると、かなりの割合で発症している可能性があります。
身体検査により、股関節が悪いことは比較的容易にわかる可能性が高いです。レントゲン検査は有用ですが、軽症の場合は、痛みだけ出て、レントゲン検査ではあまり明確にわからないこともあります。レッグペルテス症では、大腿骨頭という部分が壊死してしまいます。そのため、壊死してしまった部分を切除する、大腿骨頭切除術を実施します。股関節脱臼では、特殊な包帯法を実施することで、股関節をはめなおします。しかし、再度脱臼することもあります。何度も再発する場合は、レッグペルテス症同様、大腿骨頭切除術をすることも多いです。股関節形成不全症については、整形外科に特化した二次診療専門動物病院と連携し、人工関節を入れる場合があります。いずれも、治療をするとびっこや痛みが大幅に改善し、見た目として通常に近い状態にもどることがほとんどです。
ちょっとした拍子に、突然びっこを引き始めたり、足を痛がったりします。散歩の途中や、ドックランでの運動、他の犬とじゃれているときなど。また、ソファから降りたり登ったりしたときや、滑りやすい床で方向転換したときなど、様々な状況の後に起こります。犬猫問わず発生します。
すべての足、関節に起こりえます。普段の歩き方と比べ、少しだけおかしい場合もあります。完全に足がつかないなどのときは骨折などのより重大な病気が起きていることがほとんどです。
捻挫・打撲は、すべての犬種・猫種で起こります。
捻挫・打撲の場合は、軽度の際には、足がおかしいと思って動物病院に連れてきてもらう間に、なんともなくなっていることもあります。ある程度強い痛みの場合は、触られるだけで嫌がるため、触診にて痛みの部分の特定をすることができます。状況に応じ、その他の整形の病気がないかを確認するためにレントゲン検査を実施することがあります。ほとんどの場合は、一時的に痛み止めを注射、内服投薬することで短期間で治ります。短期間の投薬で治らない場合は、ほぼ別の整形外科疾患があると考えていいでしょう。
文責:獣医師 園田