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血液検査|動物病院で受ける血液検査から分かる項目について獣医師が解説

2024.10.01

こんにちは。
どうぶつ病院 京都 四条堀川 獣医師 尾関康江です。

「血液検査ってどういう意味があるの?」
「病院で説明を受けたけれど、もう一度検査項目の意味を知りたい」
といった疑問をお持ちではないでしょうか?
今回は、犬と猫の飼い主様に

  • 血液検査とは
  • 血液検査表の見方

について解説します。
ぜひ、最後までお読みいただき、愛犬・愛猫の健康状態の把握にお役立ていただければ幸いです。
一部、専門用語が含まれます。ご了承下さい。

血液検査

血液とは血管の中を巡り、体に必要な酸素や栄養を送り届けています。血液検査は、体の中の情報を調べる検査です。血液に含まれる細胞、酵素、抗体を数値化し、病気の診断や原因の特定に役立てます。全身を巡っている血液を調べることで、犬猫の健康状態を確認することができます。

※酵素:消化、吸収、代謝、排泄などに関わる化学反応を促進する役割をになっている物質

※抗体:体の中に入った異物(抗原)と結合し排除する役割を担っているたんぱく質

血液検査表の見方

血液検査結果が基準範囲外の場合は、何かしらの原因が隠れている可能性があります。直ちに健康状態に影響が出ない場合もありますが、今後について獣医師とよく相談するようにしましょう。検査項目とそれが指す意味を解説します。

血液検査表の形式や基準値は動物病院によって異なります。

血球検査

血球の数や大きさを計算します。貧血や炎症はないか、骨髄は正常に働いているかなど体の中で起きていることを把握するために、重要な材料となります。

白血球

白血球は細菌やウイルスなどの異物が体に入った時に対抗して体を守ってくれるものです。白血球は5つの種類に分かれ、それぞれ違う役割を担っています。

白血球数が多い時は体の中で感染や炎症が起きている可能性が考えられます。白血球数が低い時は、白血球をつくる骨髄の問題、投薬している薬の副作用、免疫力の低下が考えられます。

赤血球

赤血球は血液の中で酸素を全身に送り届けています。赤血球数が少ない時は貧血の状態になっていると考えられます。

赤血球数やヘマトクリット(PCV)が低くなる原因は多数ありますが、代表的には以下のようなものがあります。

  • 腎臓病
  • 体の中で出血
  • 体のどこかで炎症
  • 骨髄の問題
  • 骨髄に影響を及ぼす薬の服用

赤血球数が多いときは、脱水が考えられます。一時的な興奮で増えることはありますが、続く場合は多血症の可能性を考えます。

※ヘマトクリット(PCV):血液中の赤血球の割合を示す数値
            血液の濃さを示す指標の1つ

血小板

血小板は、止血と血液を凝固させる役割があります。血管が傷ついて出血した時、血小板同士がくっついてのり状となり、傷口を塞いでくれます。

血小板数が少ない時は、出血傾向といって体が出血しやすく、血が止まりにくい状態にあります。先天性の疾患、腫瘍、自己免疫疾患が原因として挙げられます。

生化学検査

血液中の酵素量を測定することで臓器・器官系の働きを調べます。どの部分にどれ位異常が生じているかある程度まで調べることができます。

GPT(ALT)

GPTは肝臓に多く含まれている酵素です。肝臓の細胞が障害を受けたり、肝臓の細胞そのものが壊された時に上昇します。肝臓がどれくらい障害を受けているかある程度把握できます。肝臓の機能を示すものではありません。

GPTはほとんどが肝臓に分布していますが、腎臓、心臓、筋肉にも分布しています。GPTの値が高かった場合は、他の肝酵素と合わせて評価する必要があります。

ALP(アルカリフォスファターゼ)

ALPは主に肝臓に含まれる酵素で、他には骨、腸、腎臓、胎盤などに存在します。これらの臓器から血液中に漏れだした時、血液中の値が高くなります。主に肝臓や胆道系の病気を見つけたり、治療の経過を確認する時の指標に使われます。

ALPが上昇する主な原因は

  • 胆道系の感染(胆嚢炎、胆管炎)
  • 胆泥症
  • 副腎皮質機能亢進症
  • 成長期
  • ストレス
  • 薬剤の影響
  • 悪性腫瘍

が挙げられます。

GLU(グルコース)

GLUは一般的に血糖値と呼ばれるものです。血糖値が高い場合に疑われるのが糖尿病です。他には

  • ストレス、興奮
  • 食後
  • 発情期
  • 副腎皮質機能亢進症(クッシング)

の可能性が考えられます。

低い場合は、

  • インスリノーマ
  • 副腎皮質機能低下症
  • 門脈シャント
  • 肝不全

の可能性が考えられます。

ALB(アルブミン)

ALBはアミノ酸(たんぱく質)を原料として肝臓でつくられます。血液中のたんぱく質の主成分はアルブミンとグロブリンに分かれ、アルブミンは大きな割合を占めています。アルブミンが減る原因は、主に

  • 肝臓でアルブミンがつくれない
  • 腸や尿へアルブミンが消失している
  • 栄養不良などでアルブミン原料が不足している
  • 輸液でアルブミンが希釈されている

が挙げられます。
ALBが低い場合は、他の肝酵素や肝機能の検査を合わせて行います。

ALBが高くなる場合は、脱水(水分が少ないことで血液が濃縮している状態)が考えられます。

BUN(血中尿素窒素)

BUNは主に腎臓と肝臓の機能を評価する検査項目です。タンパク質の老廃物である尿素窒素の量を測定します。尿素窒素は肝臓でアンモニアを元に合成され、腎臓から排泄されます。

BUNが高くなる主な原因は、

  • 腎機能が低下(尿素窒素をうまく処理できない)
  • 脱水や心臓病による腎血液量の低下
  • 過剰なタンパク質の摂取
  • 消化管出血

挙げられます。

BUNが低くなる原因は、

  • 低たんぱく食の摂取
  • 輸液剤や利尿剤の利用
  • 肝機能の低下(肝硬変、門脈体循環シャント)
  • 副腎皮質機能亢進症
  • 尿崩症
  • 新生児、妊娠中

が挙げられます。

BUNは腎臓以外の疾患の場合にも増減するため、他の検査項目や検査内容を実施して総合的に評価します。

CRE(クレアチニン)

CREは筋肉が運動する時にクレアチンからつくられ、腎臓で排泄されます。

CREが上昇する主な原因は、

  • 腎機能が低下(尿に排泄されるCREが減り、血中濃度が高くなる)
  • 過度な運動
  • 筋肉量が多い
  • 脱水傾向

が挙げられます。

CREはBUNと同様腎機能の評価に使用されますが、腎機能の75%が失われないと数値が上昇しないと言われています。他の腎臓病の指標項目や尿検査などを合わせて評価する必要があります。

Ca(カルシウム)

Caは体内では骨や歯に多く含まれ、血液中にはごく一部しか含まれていません。Caは骨や歯の代謝だけでなく、筋肉の収縮。神経の伝達、血液の凝固など大きな役割を担っています。主に骨に貯蔵されていますが、血液中の濃度が低くなると血液中に移動します。血液中の濃度が高くなると腎臓や血管に沈着し、低くなるとけいれんを起こす原因となります。

Caが上昇する主な原因は、

  • 腫瘍
  • 上皮小体機能亢進症
  • 慢性腎臓病
  • ビタミンDの過剰摂取

が挙げられます。

Caが低くなる主な原因は、

  • 上皮小体機能低下症
  • 慢性腎臓病
  • 蛋白漏出性腸症

が挙げられます。

IP(リン)

IPはミネラルの一種で、カルシウムに次いで多いミネラルです。体内でエネルギーの運搬を行い、カルシウムと共に骨の主要成分となります。

IPが上昇する主な原因は、

  • 慢性腎臓病
  • 副腎皮質機能低下症
  • 若齢
  • ビタミンDの過剰摂取

が挙げられます。

IPが低くなる原因は、

  • 上皮小体機能亢進症
  • 糖尿病性ケトアシドーシス
  • リン制限食/リン吸着剤の使用

が挙げられます。

電解質(Na、K、Cl)

電解質とは体のイオン濃度を測定し、体のバランス異常を確認します。

ナトリウム(Na)

ナトリウムは体の水分を保持する役割があります。

Naが高い場合は、

  • 嘔吐
  • 下痢

などの脱水状態が疑われます。

低い場合は、主に

  • 腎不全
  • 甲状腺機能低下症

が挙げられます。

カリウム(K)

カリウムは神経の興奮や心筋の働きを助けています。

Kが高い場合は、主に

  • 急性腎不全
  • 慢性腎臓病
  • 副腎皮質機能低下症
  • 腫瘍崩壊症候群

などが挙げられます。

低い場合は、主に

  • 副腎皮質機能亢進症
  • 慢性腎臓病
  • 糖尿病
  • 利尿剤の利用

が挙げられます。

クロール(Cl)

クロール(Cl)は他の電解質と相互作用があり、水分量やpHの調節を行っています。通常は食塩(NaCl)として動くため、基本的にはNaと同様の動きをします。

まとめ

血液検査の正常値は絶対的なものではなく、参考にするための基準値になります。基準値外であってもただちに異常というわけではありません。愛犬、愛猫の状態、他の検査も合わせて評価しましょう。

どうぶつ病院 京都 四条堀川
獣医師 尾関康江