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「うちの子、太りすぎ?」愛犬の適正体重の見極め方と対策法を獣医師が解説

2025.08.19

「先生、うちの子太ってますか?」

動物病院で最もよく聞かれる質問の1つです。愛犬の体重が気になっている飼い主様、「太りすぎかな?」と心配しつつも、「ちょっとぽっちゃりしている方が愛らしい」「実際どうやって体重管理するの?」心配されているのではないでしょうか。

安心してください。この記事を読み終える頃には、ご自宅で愛犬の体型を正しく判断でき、必要に応じて適切な対策を取れるようになります。

まずは3分!今すぐできる「太りすぎチェック」

まずは簡単にできるチェック方法をお伝えします。

【緊急度チェック】こんな症状があったら要注意

以下の項目に当てはまるものがあれば、体重管理が必要な可能性が高いです:

  • 上から見た時、腰のくびれが見えない
  • 最近お散歩を嫌がるようになった
  • 階段の上り下りが辛そう
  • 少し動いただけで息が荒くなる
  • 横から見てお腹が垂れ下がっている

1つでも当てはまる場合は、この記事を最後まで読んで対策を検討してください。

【30秒でできる】触って分かる体型チェック

肋骨チェック:犬の胸の横に手のひらを当て、軽く押してみる

✅ 薄い皮膚の下に肋骨を感じる → 適正

⚠️ 押してもなかなか肋骨に触れない → 太りすぎの可能性

くびれチェック:犬の真上から見下ろす

✅ 胸から腰にかけて「くの字」に細くなっている → 適正

⚠️ ずんどう体型で腰のくびれが見えない → 太りすぎの可能性

正確なBCS(体型)評価法と適正体重

BCS評価とは?

BCS(ボディコンディションスコア)は、犬の体型を1〜9段階で客観的に評価する国際基準です。理想は4〜5です。

犬の適正体重を調べるにあたって、現時点で犬がどの段階にいるか調べましょう。

段階別の特徴

BCS 1-2(痩せすぎ)
  • 骨と皮だけのような状態
  • 遠くからでも肋骨が見える
  • 腰骨が突き出している
BCS 4-5(理想的)
  • 手で軽く触ると肋骨を感じられる
  • 上から見ると腰にくびれがある
  • 横から見るとお腹が少し上がっている
BCS 6-7(太り気味)
  • 肋骨を触るのに少し力が要る
  • くびれがぼんやりしている
  • お腹のラインがまっすぐ
BCS 8-9(肥満)
  • 肋骨が脂肪に埋もれて触りにくい
  • くびれが全く見えない
  • お腹が垂れ下がっている

適正体重を調べる計算式

適正体重は以下のように計算することができます。

適正体重=体重÷BCSの値×5.5

ただし、適正体重は、犬種、年齢、生活環境によって変動することからあくまでこの計算式は目安になります。体重管理を行う中で、理想のBCSを目指しましょう。

肥満が犬に与える深刻な影響

体重管理は見た目の問題ではありません。愛犬の健康と寿命に直結する重要な問題です。

肥満による健康リスクは以下のようなものがあります。

  • 寿命の短縮(約2年)
  • 糖尿病
  • 関節や骨への負担
  • 心臓病
  • 熱中症になりやすい
  • 麻酔のリスク

家族みんなで取り組む体重管理作戦

犬に必要な正確なカロリー計算法

「パッケージの給与量通りにあげているのに太る」というお悩みをよく聞きます。犬に必要なカロリーは個体差があり、正確な計算が重要です。

ステップ1:安静時エネルギー要求量(RER)を計算

犬が何もしていない時に必要な基礎カロリーを求めます。

  1. 体重を3乗する(体重×体重×体重)
  2. その数値の√(ルート)を2回押す
  3. 出た数値に70をかける

例:体重5kgの場合

  1. 5×5×5 = 125
  2. 125√√ = 3.34(電卓で√を2回押す)
  3. 3.34×70 = 234kcal

ステップ2:1日のエネルギー要求量(DER)を計算

RERに犬の状態に応じた活動係数をかけます。

愛犬の状態活動係数
子犬(生後3ヶ月まで)3.0
子犬(生後4〜9ヶ月)2.5
子犬(生後10〜12ヶ月)2.0
成犬(未避妊・未去勢)1.8
成犬(避妊・去勢済み)1.6
肥満気味の成犬1.4
ダイエット中1.0
シニア犬(未避妊・未去勢)1.4
シニア犬(避妊・去勢済み)1.2

計算例:体重5kg、避妊済みの成犬の場合

234kcal × 1.6 = 374kcal/日

ステップ3:適切なフード量を計算

1日のエネルギー要求量 ÷ フードの100gあたりのカロリー × 100 = 1日のフード量(g)

例:上記の犬、フードのカロリーが350kcal/100gの場合

374 ÷ 350 × 100 = 約107g/日

実践での注意ポイント

  • 計量は必須目、分量は絶対にNG
  • カップではなくキッチンスケールで測定
  • フードの種類が変わったら必ずカロリーを確認して再計算
  • おやつ分のカロリーを引く
  • おやつは1日のカロリーの10%以内に抑制(多くても20%まで)

「ご飯は少ないのに太る」謎を解決!隠れカロリーの正体

「先生、うちの子ご飯を全然食べてないのに太ってるんです」

実はこれ、とても多いご相談です。そして99%の場合、原因はおやつにあります。

おやつのカロリー、把握していますか?

  • 犬用クッキー1枚:約15kcal
  • ジャーキー1本:約25kcal

例えば、小型犬(4kg)で、1日に必要なカロリ-が約280kcalだとすると、1日のおやつ量はクッキーが1~1枚半になります。

「ちょっとだけ」のつもりでも、家族みんなが「少しずつ」あげたり、人間の食べ物をおすそ分けしているとすぐにカロリーオーバーになるため注意が必要です。

病気がある場合

心疾患、関節疾患、糖尿病などがある場合は、必ず獣医師と相談しながら体重管理を行ってください。

こんな時は獣医师に相談を

以下の場合は、自己判断せずに動物病院にご相談ください。

  • 食事制限しても体重が減らない
  • 急激に体重が増えた(月に10%以上)
  • 体重は変わらないのにお腹だけ膨らんでいる
  • 食欲不振なのに体重が増えている

まとめ

愛犬の適正体重を正確に判断することは、健康で長生きしてもらうための最も重要な健康管理の1つです。

まずは触診による肋骨チェックと上から見たくびれの確認から始めてみてください。この簡単な方法だけでも、愛犬が適正体重かどうかをある程度判断することができます。

体重管理は1日で結果が出るものではありません。愛犬の年齢、犬種、活動レベル、健康状態によって適正体重は変化するため、定期的なチェックと継続的な管理が必要になります。月に一度は体重測定を行い、BCS評価で体型をチェックする習慣をつけることをおすすめします。

もし判断に迷った場合や、食事制限を行っても体重が減らない場合、急激な体重変化がある場合は、当院までご相談下さい。

監修:CUaRE 動物病院京都 四条堀川