2026.01.20
目次
「最近、動きが少しゆっくりになった気がする」
「階段の前で立ち止まることが増えた」
「フローリングで足が滑って、立ち上がりにくそう」
そんな愛犬の変化に気づいたとき、
「何かしてあげられることはないかな」と感じる飼い主さまは多いのではないでしょうか。
実は、シニア犬が暮らしやすい環境づくりは、
大がかりなリフォームをしなくても、今日から始められる工夫がたくさんあります。
この記事では、
について、やさしく、分かりやすく解説します。

「うちの子はまだ元気だから、バリアフリーは早すぎるかも」
そう思われる飼い主さまもいらっしゃるかもしれません。
ですが、シニア犬にとって急な環境の変化はストレスになることがあります。
元気なうちから少しずつ環境を整えておくことで、
犬自身も自然に慣れることができ、将来の負担を減らすことにつながります(1)。
一般的に、犬は7歳頃からシニア期に入ると言われています(2)。
ただし、犬のサイズによって老化のスピードは違います。
特に大型犬では、早めの準備が大切です。
次のような変化はありませんか?
これらは関節に負担がかかっているサインの一例です。
シニア期に入った犬の多くが、何らかの関節の問題を抱えていることが分かっています(3–5)。
犬は痛みを我慢しやすい動物です。
だからこそ、日常の小さな変化に気づいてあげることがとても大切です。
フローリングやタイルの床は、シニア犬にとって滑りやすく、
無意識のうちに踏ん張る力が必要になります。
この状態が毎日続くと、
関節への負担が少しずつ積み重なってしまいます。
まずはマットから
家中を変える必要はありません。
犬がよく通る場所から始めてみましょう。
カーペットランナーやジョイントマットを使う場合は、
必ず滑り止めシートを併用してください(6)(7)。
※大型犬では、体重を支えられる厚みのあるマットがおすすめです。
マットを敷く方法に加えて、
床そのものの滑りにくさを改善する方法もあります。
近年では、犬の足腰への負担を減らすことを目的に、
滑りにくく、清掃性にも配慮したフローリング施工が行われることもあります。
当院では、
「マットがズレてしまう」
「見た目をなるべく変えずに対策したい」
といった飼い主さまの声にお応えできるよう、犬の生活を考えた床施工サービスのご紹介も行っています。
すべてのご家庭に必要というわけではありませんが、長期的な視点で環境を整えたい場合の一つの選択肢として、気になる方はお気軽にご相談ください。
これだけでも、床での踏ん張りやすさは大きく変わります。
最近では、肉球に直接貼る滑り止めシールも市販されています。
実際に使用された飼い主さまからは、
「フローリングで踏ん張りやすくなった」
「立ち上がりが楽そう」
といった声が聞かれることもあります。
一方で、
といった点もあるため、短時間の室内移動や補助的な対策として使うのがおすすめです。
もう一つの方法として、爪に装着するタイプの滑り止めがあります。
当院では、必要に応じてToeGrips(トゥグリップ)をご案内・処方しています。
これは、
という仕組みで、肉球を覆わず、自然な歩き方を妨げにくいのが特徴です。
ただし、爪の太さや歩き方によって向き・不向きがあるため、装着の可否やサイズ選びは、獣医師と相談しながら行うことが大切です。
階段の前で立ち止まったり、下りるのをためらったりする場合、無理をさせないことが大切です。
スロープは、関節への衝撃を和らげる有効な方法です。
国際的なガイドラインでも推奨されています(8)。
選ぶポイント
その他の工夫
低反発素材のベッドは、体の圧を分散し、関節への負担を軽減します(6)。
選び方のポイント
寒さは関節痛を悪化させることがあるため、風が当たらず暖かい場所に置いてあげましょう。
食器台を使い、肘〜肩の高さに調整すると、首や肩への負担を減らすことができます(6)。
犬も年齢とともに、認知機能不全(認知症)が見られることがあります。
高齢になるほど、その割合は増えることが知られています(9)。
環境づくりのポイント
におい遊びや、無理のないお散歩など、楽しい刺激を続けることも大切です(11)(12)。
シニア犬は体温調節が苦手になります(13)(14)。
シニア犬の環境づくりは、完璧を目指す必要はありません。
マット、床施工、滑り止めグッズなど、方法はさまざまです。
大切なのは、愛犬の状態と暮らしに合った方法を選ぶこと。
「これで合っているかな?」
「他にできることはあるかな?」
そんなときは、どうぞお気軽にご相談ください。
私たちは、飼い主さまと一緒に、愛犬がこれからも安心して過ごせる時間を支えていきたいと考えています。
監修:CUaRE どうぶつ病院京都 四条堀川
院長 吉田昌平
引用文献
(1) Kozłowska N, et al. Dog Aging: A Comprehensive Review of Molecular, Cellular, and Physiological Processes. Cells. 2024;13(24):2101.
(2) Chapagain D, et al. How Old Is My Dog? Identification of Rational Age Groupings in Pet Dogs Based Upon Normative Age-Linked Processes. Front Vet Sci. 2021;8:643085.
(3) Anderson KL, et al. Risk Factors for Canine Osteoarthritis and Its Predisposing Arthropathies: A Systematic Review. Front Vet Sci. 2020;7:220.
(4) O’Neill DG, et al. Prevalence, duration and risk factors for appendicular osteoarthritis in a UK dog population under primary veterinary care. Sci Rep. 2018;8:5641.
(5) Anderson KL, et al. Prevalence of radiographic appendicular osteoarthritis and associated clinical signs in young dogs. Sci Rep. 2024;14:2478.
(6) Canine Arthritis Resources and Education. Home Modifications For Dogs Diagnosed With OA. 2025.
(7) Mille MAL, et al. Physiotherapeutic Strategies and Their Current Evidence for Canine Osteoarthritis. Vet Sci. 2023;10(1):2.
(8) Belshaw Z, et al. COAST Development Group’s international consensus guidelines for the treatment of canine osteoarthritis. Front Vet Sci. 2023;10:1137888.
(9) Indoor Pet Initiative, Ohio State University. Cognitive Dysfunction Syndrome (CDS).
(10) Veterinary Specialists. Canine Cognitive Dysfunction Syndrome (CDS). 2022.
(11) Cornell University College of Veterinary Medicine. Cognitive dysfunction syndrome.
(12) Chapagain D, et al. Cognitive Aging in Dogs. Gerontology. 2018;64(2):165-171.
(13) Treatment and Care of the Geriatric Veterinary Patient. Chapter 17: Thermoregulation. Wiley-Blackwell. 2017.
(14) Blatteis CM. Age-dependent changes in temperature regulation – a mini review. Gerontology. 2012;58(4):289-295.