2025.04.15
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フィラリアという言葉を一度は耳にしたされたことがある飼い主様も多いのではないでしょうか。
「そういえばフィラリアの予防がとか何とか動物病院で言われたけれど具体的には何?」
「愛犬がフィラリアにかかってしまったらどうなるの?」
「どの時期からフィラリアの予防はしたら良いの?」
といった疑問をおもちではないでしょうか?
今回は、犬の飼い主様に
といったことを解説します。
ぜひ、最後までお読みいただき、フィラリア症について正しく理解し、効果的な予防を始めましょう。
フィラリア症は、犬糸状虫(フィラリア)という寄生虫によって引き起こされる感染症です。このフィラリアは成虫になると、長さ15〜30cmにも達する糸状の寄生虫で、犬の心臓や肺動脈に寄生します。
フィラリアには「成虫」と「幼虫」の段階があります。成虫は犬の体内で生活し、繁殖すると「ミクロフィラリア」と呼ばれる幼虫を血液中に放出します。このミクロフィラリアは血流に乗って体内を循環し、蚊に吸血されることで次の宿主へと移ります。
フィラリアが心臓や肺動脈に寄生すると、血液の流れを妨げ、さまざまな健康問題を引き起こします。重症化すると心臓や肝臓に負担をかけ、死に至るケースもあります。
一度感染してしまうと治療が難しく、死亡するリスクもある非常に危険な病気です。
日本全国どこでも感染の可能性があり、都会でも田舎でも、室内飼いの犬でも油断はできません。特に温暖な地域や水辺の近くでは蚊が発生しやすいため、リスクが高まります。
フィラリア症は、蚊を介して感染する病気です。感染サイクルについて解説します。
フィラリアの感染は次のような流れで起こり、下図のようなサイクルで感染が広がります。
フィラリアに感染したどうぶつの血液を蚊が吸うと、血液中の小さなフィラリア幼虫(ミクロフィラリア)が蚊の体内に取り込まれます。
蚊の体内でミクロフィラリアは約2〜3週間かけて感染力をもつ状態に成長します。
この蚊が別の犬を刺すと、吸血された犬の体内にフィラリアの幼虫が入り込みます。
侵入した幼虫は犬の体内を移動しながら成長し、最終的に心臓や肺動脈に定着して成虫となります。
感染から成虫になるまでには約6ヶ月かかります。これらが繰り返されて感染が広がりますが、犬から犬に直接感染するわけではなく蚊を介している点が重要です。
蚊が活発に活動する期間、特に暖かく湿度が高い季節はフィラリア症にかかるリスクが高くなるため注意が必要です。水辺や草むらの近くなど、蚊が多い環境に行く際には注意しましょう。
フィラリア症に感染した初期段階では、多くの犬は症状を示しません。
1、2年予防が抜けていて、動物病院で検査したら陽性だったというケースもあります。フィラリアの成虫が心臓や肺の血管に寄生することで、以下のような症状が現れ始めます。
重症化すると肝臓や腎臓にも影響が出始め、さらに以下のような症状が加わります。
さらに症状が進行すると、成虫が大きな血管を塞いだり、多くの臓器に障害が出ることで、
などの深刻な症状が現れ、適切な治療を受けないと命に関わる状態に陥ります。
予防時期は蚊の発生時期から、蚊がいなくなってから1ヶ月後までとなります。
フィラリアのお薬は、虫の感染自体を予防するのではなく、体内にいる幼虫を心臓に移動する前に駆除するお薬だからです。
地域によって予防期間は異なりますが 、京都では、できたら4月から、遅くとも5月から12月末までの投与をお勧めしています。
また通年予防以外の場合、フィラリアの予防薬を投与する前に、フィラリア検査で感染していないことを確認しましょう。感染した状態でフィラリア予防薬を与えると、最悪の場合ショック症状を引き起こすからです。
近年、犬や猫に対して「1年を通じた予防」が推奨されるようになり、当院でも通年予防を推奨しています。
通年予防が推奨される理由としては、
が挙げられます。
通年予防のメリットとしては、
といった点があります。
「ずっと薬を飲ませて大丈夫なの?」と心配される飼い主様もいらっしゃるかと思いますが、フィラリア予防薬は安全性の高い薬の1つです。ただし、コリー系の犬種ではイベルメクチン等の特定成分に注意が必要なケースがあります。予防薬を選ぶ際は獣医師と相談し、犬に最適な方法を選びましょう。
フィラリアにかかっている場合、当院では主に内科的療法にて治療を行います。治療では成虫(親虫)とミクロフィラリア(子虫)の両方に対応する必要があります。
フィラリア成虫の治療については、以前は直接駆除する薬が使用されていましたが、現在は日本で販売中止となっています。そのため、治療には時間がかかりますが、再感染を防ぎながら成虫の自然寿命(5〜7年)を待つ方法が主流となっています。
血液中のミクロフィラリアに対しては、予防薬を定期的に投薬することで駆除していきます。これにより、ミクロフィラリアが成長して心臓や肺に到達するのを防ぎます。
フィラリア症の影響で心不全などの症状が出ている場合には、内服薬などにて心臓への負担を軽減する対症療法も行います。残念ながら、フィラリア症によって傷ついた心臓や血管は完全に元の状態に戻ることが難しく、場合によっては生涯にわたるケアが必要になることもあります。
フィラリア症は治療が難しく、完治後も後遺症が残る可能性がある病気です。そのため、月1回の予防薬投与という簡単なケアで予防することが何よりも重要です。
犬のフィラリア症は、予防薬を正しく使用することで100%予防することができる感染症です。
当院では様々なタイプのフィラリア予防薬を取り揃えており、それぞれの犬の体質や生活スタイルに合わせた予防薬をご提案しています。フィラリア予防についてご不明な点やお悩みがある飼い主様は、お気軽に当院までご相談ください。
監修:CUaRE 動物病院京都 四条堀川