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犬の歩き方がへん|いつもと違う歩き方をしている時に考えられる病気について解説

2024.08.06

こんにちは。
どうぶつ病院 京都 四条堀川 獣医師 尾関康江です。

「飼い犬が急に足を引きずるようになったがどんな病気が隠れているだろうか?」
といった疑問をかかえておられませんでしょうか?

今回は、犬の飼い主さんに

  • 犬の歩き方が変な時に考えられる原因
  • 注意するべき点

について解説します。
是非、最後までお読みいただき、飼い犬の歩き方に違和感を覚えた時に是非お役立てください。
一部専門用語が含まれていますので、ご了承ください。

犬の跛行

犬は地面の上で4つの肢を動かしながら歩行します。1つの肢や複数の肢に何かしらの障害や異常が出ると、そこを補うために異常な歩行をします。これを跛行と言います。肢の運動には、筋肉、神経、腱、靭帯、関節、骨が関わっており、どこに障害が出ても跛行する可能性があります。

跛行の原因は主に整形外科的な異常と神経学的な異常に分けられます。良く見られる病気について解説します。

整形外科的な異常

骨折

骨折は骨が損傷することです。骨の組織が完全に折れていなくても、亀裂が入っていたり、一部が欠けていたりする場合も骨折に入ります。骨折はどの肢でも起こる可能性があります。骨折の原因は交通事故、抱っこ時の落下、ソファ(椅子)からの飛び降りが挙げられます。

犬が比較的多く骨折するのは前肢(前の足)です。前肢は橈骨、尺骨という骨で構成されていて、両方または橈骨のみ骨折する場合があります。骨折の程度により治療内容が異なります。

変形性関節症

変形性関節症は関節軟骨に損傷が起こり、関節が変形することで痛みや違和感が出る病気です。主な原因は加齢に伴うものですが、他の整形外科的な病気から生じることもあります。段差の上り下りを避けるようになったり、お散歩を嫌がったり、寝ている時間が長くなります。

パテラ(膝蓋骨脱臼)

膝蓋骨脱臼は膝蓋骨という膝のお皿が正常な位置から外れてしまう病気です。原因は先天的なものと後天的なものがありますが、遺伝的な要因が大きいと言われています。脱臼している時に肢を挙げたり、体重をかけないようけんけんしたりします。脱臼をしている時は痛みを伴いますが、脱臼をしていない時は普段通りに見えることが多いです。

前十字靭帯断裂

前十字靭帯は膝関節の中にある靭帯です。犬が屈伸運動をする時に膝関節を安定させる役割があります。様々な原因で断裂したり、緩むことを前十字靭帯断裂と言います。前十字靭帯断裂は膝蓋骨が持続的に脱臼し、膝の関節に負担がかかった場合にも生じることがあります。

大腿骨頭壊死症

大腿骨頭壊死症は大腿骨(太ももの骨)の股関節にはまる部分の組織が壊死していく病気です。骨が破壊されることで痛みを伴ったり、跛行が出ます。成長期の小型犬で多く認められます。

股関節形成不全症

股関節形成不全症とは股関節の関節部分が変形することで起こる病気です。関節の状態によって症状が異なります。痛みを伴う場合は運動を嫌がったり、起き上がりにくそうにしたりします。大型犬で多く認められ、両方の股関節で見られる場合が多いです。

腫瘍

骨の腫瘍はどこにでも起こりえるものですが、四肢に発生する場合は骨肉腫と呼ばれる悪性腫瘍のことが多いです。腫瘍の進行によって、病変部位が腫れたり、骨が破壊されることで骨折(病的骨折)したり、跛行を伴います。

神経学的な異常

椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアとは背骨をつないでいる椎間板とよばれる部分が変性することで、脊髄という神経を圧迫する病気です。脊髄が障害を受けることで痛みや肢の麻痺(肢を上手く動かせない)を起こします。状態別にグレード分類され、進行するとおしっこが出ない、肢が全く動かせない、呼吸が荒くなるといった緊急性が増します。首(頸部)と腰(胸腰部)の脊髄が障害を受けやすい場所になります。ダックスフンド、トイプードル、チワワ、フレンチブルドックが好発犬種です。

脊髄梗塞

脊髄梗塞とは脊髄の周りの血管が詰まってしまう(梗塞)ことで脊髄神経に障害が出る病気です。椎間板ヘルニアに症状が似ていますが、急に症状が出ることが特徴的です。左右どちらかの肢から始まることが多く、まれに両側で認められます。梗塞が起こった瞬間は痛みを伴いますが、ほとんどの場合は痛みを訴えません。

重症筋無力症

重症筋無力症とは神経からの伝達が筋肉にうまく伝わらないために、筋肉をうまく動かせない病気です。発生率はあまり多くありません。疲れやすくなったり、食べ物を胃までうまく運べなくなります。少し歩くと休み、休むとまた歩けるようになるといった症状が後ろ足で特に認められます。重症筋無力症の8割程の犬で巨大食道症と呼ばれる食道の筋肉が上手く動かせなくなる状態が認められます。

その他

外傷

外出先や散歩中に何かを踏んでしまったり、虫に刺されて患部を気にしたり、痛がることがあります。患部をかばう様な歩き方をしたり、肢を下に着かないようひょこひょこ歩いたりします。

まとめ

跛行の原因は本ブログで解説した以外にも様々な原因で起こります。飼い犬の歩き方がおかしい時はまず安静に過ごせる環境を整えましょう。跛行を生じる病気の中には早めに動物病院を受診した方が良い場合もあります。動物病院では緊張して跛行が一時的に緩和される場合もありますので、可能な範囲で動画を撮影してください。

どうぶつ病院 京都 四条堀川
獣医師 尾関康江