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シニア犬の痛みサインを見逃さない|行動変化から分かる痛みの見分け方と対処法

2026.01.27

「うちの子、最近あまり動かなくなったな」
「散歩を嫌がるようになった気がする」

そんな変化を感じたとき、
「もう年だから仕方ないね」と受け止めていませんか?

実はその変化、
シニア犬が“痛みを我慢しているサインかもしれません。

この記事では、

  • シニア犬に多い「痛みのサイン」
  • 飼い主様が家庭でできる観察ポイント
  • 痛みを和らげるための治療と生活の工夫

について、獣医学的根拠に基づいて分かりやすく解説します。

なぜ犬は痛みを隠すの?

犬は言葉で「痛い」と伝えられないだけでなく、
弱さを見せないという本能を持っています。

そのため、飼い主様が異変に気づく頃には、
すでに痛みが慢性化していることも少なくありません(1)。

特に注意したいのが慢性疼痛です。
研究では、3か月以上続く痛みを慢性疼痛と定義しています(2)。

関節の痛みなどは、
少しずつ進行し、犬自身も「これが普通」と慣れてしまうため、
気づかれにくいのが特徴です。

こんな変化はありませんか?

シニア犬の痛みサイン

犬の痛みは、日常の小さな変化として現れます(3)。
それに最も気づけるのは、毎日一緒に過ごしている飼い主様です(4)。

体の動き・姿勢の変化

  • 起き上がるのに時間がかかる
  • 階段や段差をためらう
  • 散歩中に立ち止まる
  • ソファに飛び乗らなくなった
  • 動き出しがぎこちない
  • いつもと違う座り方をする
  • 横になる向きがいつも同じ

性格・行動の変化

  • 触られるのを嫌がる
  • 特定の場所を触ると怒る
  • 遊びへの興味が減った
  • 家族や他の犬を避ける
  • 静かな場所にこもる

慢性的な関節痛が続くと、
痛い場所以外を触られても嫌がることがあります(6)。

日常生活での変化

  • 毛づくろいをしなくなった
  • ブラッシングを嫌がる
  • 毛並みが悪くなる
  • 食欲が落ちる
  • 寝てばかり、または落ち着かない

シニア犬に多い痛みの原因

最も多いのは変形性関節症です(7)。

イギリスの大規模調査では、
8歳以上の犬で特に多く認められ(8)、
レントゲン検査では以下の割合で所見が見つかっています(9)。

  • 肘関節:57%
  • 股関節:36%
  • 膝関節:36%

大型犬や肥満は、発症リスクをさらに高めます(8)。

家庭でできる観察のコツ

  • いつ頃から変化があったか
  • どんな動作で痛そうか
  • 朝と夜で違いがあるか

ご自宅での様子を動画で撮影しておくのもおすすめです(10)。

痛みに対する治療について

シニア犬の痛み管理では、
**「どの治療が一番か」ではなく、「その子に合った方法を組み合わせる」**ことが大切です。

現在の獣医学ガイドラインでも、
複数の治療を組み合わせる多角的な痛み管理が推奨されています(11)(12)。

薬による治療

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)

NSAIDsは、痛みと炎症を抑える治療の中心となるお薬で、
関節炎をはじめ多くの慢性疼痛で使用されます(12)。

一方で、年齢や体質、腎臓・肝臓の状態によっては注意が必要なため、
定期的な血液検査を行いながら安全性を確認して使用することが重要です(13)。

また、

  • 一時的に痛みを抑えたいのか
  • 長期的な痛み管理を目的とするのか

によって、薬の種類や投与量を調整する必要があります

新しいタイプの注射薬(モノクローナル抗体製剤)

近年登場した「リブレラ」は、月1回の注射で、 痛みの原因に関わる物質である神経成長因子(NGF)に直接作用する治療薬です。

臨床試験では、プラセボ(偽薬)と比較して、
投与開始から28日目に43.5%の犬で症状改善が認められたと報告されています(14)。

また、従来のNSAIDsと比較した研究では、
効果は同程度でありながら、副作用は少なかったとされています(15)。

ただし、

  • 即効性を目的とした薬ではない
  • すべての痛みに適しているわけではない

といった特徴もあるため、
痛みの種類や生活スタイルに応じて選択することが大切です。

その他の鎮痛薬(併用治療という考え方)

慢性的な痛みでは、
1種類の薬だけで十分な効果が得られないことも少なくありません

そのため、

  • 痛みの感じ方を和らげる薬
  • 炎症を抑え、関節環境を整える薬

などをNSAIDsと併用し、
それぞれの薬の量を抑えながら安定した痛み管理を行う方法が取られることもあります(11)(12)。

サプリメント(補助的な役割として)

サプリメントは、薬の代わりというよりも、
治療を支える“土台づくり”の役割として使われます。

  • グルコサミン
  • オメガ3脂肪酸
  • 緑イ貝エキス

などは、軟骨の健康維持や炎症の軽減が期待されている成分です(12)。

効果の感じ方には個体差があるため、
獣医師と相談しながら、薬と併用するケースが多いのが実際です。

体重管理は「治療の一部」です

肥満は関節への物理的な負担だけでなく、
炎症を悪化させ、痛みを長引かせる要因になります。

研究でも、肥満が変形性関節症の発症リスクを高めることが確認されています(8)。

そのため体重管理は、
生活指導ではなく、痛み治療の重要な一部です。

外科的手術について

痛みの原因や重症度によっては、
薬だけでは十分な改善が難しい場合もあります。

そのようなケースでは、

  • 構造的な問題を修正する
  • 痛みの原因そのものを取り除く

といった目的で、外科的治療を検討することがあります(12)。

手術は「最後の手段」ではなく、
その子がより楽に過ごすための選択肢の一つとして考えられることもあります。

受診の目安

以下に当てはまる場合は、
早めの受診をおすすめします。

  • 変化が2週間以上続いている
  • 日常動作を避けるようになった
  • 触ると嫌がる場所がある
  • 元気や食欲が落ちてきた

まとめ|「年のせい」にしないでください

シニア犬の
「動きが鈍くなった」「遊ばなくなった」という変化は、
多くの場合、痛みのサインです。

「少し気になる」
その気づきこそが、いちばん大切なタイミングです。

監修:CUaRE どうぶつ病院京都 四条堀川
院長 吉田昌平

引用文献
(1)Lascelles BDX, Brown DC, Conzemius MG, et al. Measurement of chronic pain in companion animals: discussions from the Pain in Animals Workshop (PAW) 2017. Vet J. 2019;250:71-78.
(2)Belshaw Z, Yeates J. Assessment of quality of life and chronic pain in dogs. Vet J. 2018;239:59-64.
(3)Wiseman-Orr ML, Nolan AM, Reid J, et al. Development of a questionnaire to measure the effects of chronic pain on health-related quality of life in dogs. Am J Vet Res. 2004;65(8):1077-1084.
(4)Dog owners’ recognition of pain-related behavioral changes in their dogs. J Vet Behav. 2023;63:68-75.
(5)Reid J, Nolan AM, Scott EM. Measuring pain in dogs and cats using structured behavioural observation. Vet J. 2018;236:72-79.
(6)Lascelles BDX, Brown DC, Conzemius MG, et al. Measurement of chronic pain in companion animals: discussions from the Pain in Animals Workshop (PAW) 2017. Vet J. 2019;250:71-78.
(7)Gruen ME, Lascelles BDX, Colleran E, et al. 2022 AAHA pain management guidelines for dogs and cats. J Am Anim Hosp Assoc. 2022;58(2):55-76.
(8)Anderson KL, O’Neill DG, Brodbelt DC, et al. Prevalence, duration and risk factors for appendicular osteoarthritis in a UK dog population under primary veterinary care. Sci Rep. 2018;8:5641.
(9)Keller GG, Reed AL, Lattimer JC, et al. Prevalence of osteoarthritis in the shoulder, elbow, hip and stifle joints of dogs older than 8 years. Vet J. 2024;305:106113.
(10)Mills D, Karagiannis C, Zulch H. Detection of maladaptive pain in dogs referred for behavioral complaints: challenges and opportunities. Front Vet Sci. 2024;11:1370277.
(11)Gruen ME, Lascelles BDX, Colleran E, et al. 2022 AAHA pain management guidelines for dogs and cats. J Am Anim Hosp Assoc. 2022;58(2):55-76.
(12)Pye C, Bruniges N, Peffers M, et al. Advances in the pharmaceutical treatment options for canine osteoarthritis. J Small Anim Pract. 2022;63(10):721-738.
(13)Epstein M, Rodan I, Griffenhagen G, et al. 2015 AAHA/AAFP Pain Management Guidelines for Dogs and Cats. J Am Anim Hosp Assoc. 2015;51(2):67-84.
(14)Corral MJ, Moyaert H, Fernandes T, et al. A prospective, randomized, blinded, placebo-controlled multisite clinical study of bedinvetmab, a canine monoclonal antibody targeting nerve growth factor, in dogs with osteoarthritis. Vet Anaesth Analg. 2021;48(6):943-955.
(15)Innes JF, Lascelles BDX, Bell D, et al. A randomised, parallel-group clinical trial comparing bedinvetmab to meloxicam for the management of canine osteoarthritis. Front Vet Sci. 2025;12:1502218.

ぜひお気軽に、当院までご相談ください。