2025.04.22
目次
愛犬の健康を守るために欠かせないのが、毎日の口腔ケアです。
実は、3歳以上の犬の約80%が何らかの歯周病を抱えていることをご存じでしたか?
「どうやって歯磨きをすればいいの?」
「愛犬は歯磨きを嫌がるから…」
と悩みを抱えておられないでしょうか。
今回は、犬の飼い主様に
について解説します。
ぜひ、最後までお読み頂き、毎日の習慣に取り入れて頂けると幸いです。
犬の口腔ケアが必要な理由は、単なる口臭対策だけではありません。歯垢や歯石が蓄積すると、以下のような深刻な問題につながる可能性があります。
犬の口内はアルカリ性で歯周病の原因菌が繁殖しやすい環境です。歯周病の主な原因は歯垢(プラーク)です。
歯垢には何十億個もの細菌が含まれており、固まると歯石になり、歯と歯茎の間に入り込んで炎症を引き起こします。歯茎が炎症を起こすと、痛みや出血だけでなく、最終的には歯が抜け落ちたり、顎の骨が骨折することもあります。
また、歯石や歯周病は犬の口腔内の環境を悪化させ、口臭の原因になります。
歯や口腔内の健康は単に口の中だけの問題ではなく、全身の健康にも大きな影響を与えることがわかっています。
歯周病が進行すると細菌が血流に乗って全身へと広がり、心臓病や腎臓病のリスクが
2-6倍に高まることがあります。
歯が痛んでいるとうまく食べ物をかみ砕けず、栄養を十分に摂取できなくなるため、体全体の調子が悪くなることもあります。
口が痛むと、犬は食事を避けたり、遊びを拒んだりと、普段の生活に支障をきたすことがあります。突然おもちゃを噛むのを嫌がるようになったり、固いフードを食べなくなったりした場合は、歯の痛みが原因かもしれません。
歯や口腔内の健康は、愛犬の全身の健康に直結します。そのため、日々のデンタルケアが非常に重要です。犬の口内では歯垢(プラーク)が約24時間で形成され始め、放置すると約3〜5日で歯石へと変化します。歯石になると通常の歯磨きでは除去できなくなります。
歯石があるとその上にさらに歯垢が付きやすくなります。歯石にならないうちに歯磨きで歯垢を取り除くことが歯周病予防にいちばん大事なことです。
犬の健康のために歯磨きが大切だとわかっていても、「どうやって始めればいいの?」と悩まれる飼い主様は多いと思います。自宅で無理なく始められる歯磨きの手順を解説します。
いきなり口の中に指やブラシを入れると、犬は驚いて嫌がってしまいます。まず、両手で顔や口周りを触るところから始めましょう。
慣れてきたら、唇をやさしくめくり、前歯や歯茎に触れてみましょう。徐々に口の中に指を入れ、頬の内側や奥歯にも触れるようにします。
少しでも触らせてくれたら、「いい子だね」「上手だね」と優しく声を掻けたり、おやつなどのご褒美を与えたりします。この際に、デンタルケア効果のあるおやつを与えるとより効果的ですね。このようにして、「口周りを触られるといいことがある」と覚えてもらうことが大切です。
口の中に指をいれることに犬が慣れてきたら、犬用の歯磨きシートで磨いてみましょう。指に歯磨きシートを巻きつけ、歯と歯茎(歯の根元)をゆっくりこすります。前歯から奥歯に向かってこすります。
いよいよ歯ブラシの出番です。いきなり歯ブラシで磨くことは難しい場合もありますので、まずは「歯ブラシを見せながらおやつをあげる」を繰り返して、歯ブラシに慣れさせましょう。
次に歯ブラシに歯磨きペーストをつけて舐めさせてみます。この時も、ご褒美におやつをあげましょう。歯磨きペーストは犬の好みに合った味のものを選ぶと良いでしょう。
慣れてきたら、徐々に歯を磨いていきます。優しく前歯の外側から奥歯に向かって磨いていきます。
犬が歯磨きを嫌がる場合は、無理強いをせず、1箇所磨いたらご褒美をあげるなど工夫をしてみましょう。
犬が歯磨きを嫌がるケースは珍しくありません。いくつかポイントを解説しますので、「うちの子は絶対に歯を磨かせてくれない…」とあきらめる前に、歯磨きにチャレンジする際に参考にしてみてください。
歯磨きを嫌がる犬には、時間をかけて少しずつ慣らしていくことが大切です。1日わずか5秒間、1本だけでも構いませんので、少しずつ歯磨きの時間を延ばしていきましょう。
歯磨きの環境も重要な要素です。犬がリラックスできる静かな場所を選び、テレビの音や他のペットの存在など、気が散る要素を減らしましょう。
小型犬なら膝の上、大型犬なら床や低いテーブルの上など、飼い主様と犬の両方が楽な姿勢で行えるよう工夫してください。
歯磨きペーストの味が好みでない可能性もあります。犬用歯磨きペーストにはチキン味、ビーフ味など様々な種類があるので、楽しい歯みがきにするために、犬の嫌がらないフレーバーを選ぶのはおすすめです。
ただし、犬には使えない歯磨きペーストの成分もあるため人間用の歯磨き粉は使用しないようにしましょう。
最近では犬の口内ケアに関する便利グッズがたくさん発売されており、犬が嫌がらないものを探すのもおすすめです。
歯磨き粉や歯磨きジェルを「舐めるだけ」からのスタートでもよいでしょう。歯磨き=楽しい時間となることが望ましいですね。
噛み癖がついている犬の場合は、口周りを触ることが難しい場合もあります。デンタルケアの前に噛み癖を直すしつけを行ってから歯磨きを実施しましょう。
噛み癖のしつけについての詳細は割愛させていただきますが、一般的には以下の通りです。
愛犬に噛まれても一切リアクションを取らず、静かにその場から離れて、時間が経ったら近づきます。その際、再度噛まなければおやつをあげて褒めます。これを繰り返すと、愛犬は「噛まない方がいいことがある」と覚えていきます。この方法でも改善しない噛み癖がある子は、どうぶつ病院で相談をしましょう!
どうしても自宅での歯磨きが難しい場合や、犬が極端に嫌がる場合は、動物病院やドッグトレーナーに相談してみましょう。口腔内に痛みがある可能性もあるため、まずは健康チェックも兼ねて受診することをおすすめします。
デンタルケアを始めようとする飼い主様からよく寄せられる質問について解説します。歯磨きをお考えの際、ぜひ参考にしてみてください。
犬の歯磨きは毎日することが理想的です。歯垢は24時間で形成され始め、3~5日で歯石になるからです。毎日が難しい場合は、週に3回程度を目安にしましょう。
大切なのは継続すること。歯磨きが苦手な犬の場合は3日かけて全体を磨くつもりで毎日少しずつ進めていきましょう。夜寝る前など、同じ時間帯に行うと習慣になりやすいでしょう。
子犬の頃から始めるのがベストです。乳歯が生え始める生後3週齢頃から口に触れる練習を始め、歯が生え揃う頃には軽い歯磨きを導入すると良いでしょう。若いうちから慣れさせることで、生涯の習慣になりやすいです。
成犬や高齢犬からでも遅すぎることはありません。どの年齢からでも、時間は掛かりますが少しずつ慣らしていけば歯磨きを受け入れるようになります。
歯石は自宅での歯磨きでは除去できません。歯石を取り除くためには、獣医師による専門的な歯科処置が必要不可欠です。
歯石がある場合でも、毎日の歯磨きは続けましょう。歯石の上に新たな歯垢が付くのを防ぎ、歯周病の進行を遅らせる効果があります。また、スケーリング後は歯石が再付着しないよう、特に丁寧なデンタルケアが重要です。
犬の歯磨き中に出血することは珍しくありません。特に歯磨きを始めたばかりの場合によく見られます。軽い出血は歯茎の炎症が原因で、継続的な歯磨きで改善することが多いです。
ただし、出血が多い、続く、または痛がる様子がある場合は早めに動物病院を受診しましょう。歯周病が進行していたり、血液の病気が隠れている可能性があるからです。
どうしても歯磨きを嫌がる場合には、犬にあったデンタルケアグッズを使うという方法もあります。歯磨きシートやガーゼを指に巻き、歯と歯茎を優しく拭う方法は、歯ブラシより受け入れやすい可能性があります。
デンタルジェルやデンタルケア用のおもちゃやガムも歯垢除去を助けてくれます。これらはあくまで補助的な方法ですが、どのような方法でもまずは毎日の習慣にしてもらうことが重要です。
歯石がかなり付着していたり、歯周病が進行していたりすると痛みにより歯磨きがうまくいかないこともあります。
様々な工夫しても歯磨きを嫌がる時は一度動物病院で診てもらいましょう。
犬の様子をよく観察し、無理強いはせず、少しずつ慣らしていくことが長期的な成功への鍵です。毎日の歯磨きが難しい場合でも、週に2〜3回の歯磨きでも歯周病予防には効果があります。まずは無理のない範囲から始めてみましょう。
監修:CUaRE 動物病院京都 四条堀川