2025.06.17
目次
愛犬の口臭が気になったことはありませんか?多くの飼い主さんは「うちの子、口が臭いな」と感じても、単に歯磨きをしていないからだろうと考えがちです。しかし、口臭は歯だけでなく内臓の病気が隠れているかもしれません。
今回は犬の飼い主様に
について解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の口臭に隠れたトラブルについて知っていただければ幸いです。
犬の口臭はどのように発生するのでしょうか。
不快な口臭の正体は、細菌が作り出す「ガス」です。 口の中の細菌は、剥がれ落ちた粘膜のカスや唾液、食べ物の残りなどに含まれるタンパク質を分解・発酵させます。この過程で揮発性硫黄化合物(VSC)などの悪臭を放つガスが発生し、これが口臭の正体となるのです。
犬の口腔内の環境は人よりも悪化しやすく、細菌が繁殖しやすい条件が整っています。人間と違って日常的な歯磨きを行わない犬では、この細菌の活動が活発になり、より強い口臭を発生させます。
犬の口臭が強くなる主な原因は、以下のようなものがあります。
口の中に食べ物の残りかすや細菌が溜まると、それらが分解される過程で悪臭が発生します。犬の口腔内で最も一般的に見られるのが「歯垢」と「歯石」です。
歯垢は食べ物の残りかすや唾液、細菌が混ざったもので、歯の表面に付着します。これが硬化すると「歯石」となり、さらに細菌の繁殖場所となって口臭を強めます。
歯周病とは歯を支える組織(歯肉)や骨(歯槽骨)が壊れていく病気です。歯と歯肉の間に歯垢や歯石が溜まり、そこに細菌が繁殖することから始まります。歯周病は、犬の口臭の最も一般的な原因の1つであり、7歳以上の犬の約80%が何らかの歯周病を抱えているとされています。
歯周病が進行すると、歯茎の腫れや出血、歯の動揺、さらには歯の喪失につながることがあります。また、口内の細菌が血流に入り込み、心臓や腎臓などの臓器にダメージを与える可能性もあります。
犬の口臭の原因として見過ごされがちなのが「口腔内腫瘍」です。
口の中にできる腫瘍には良性と悪性の両方があり、特に悪性腫瘍の場合は深刻な健康問題につながります。悪性腫瘍は、口腔粘膜や歯肉だけでなく、周囲の骨組織まで破壊されることがあります。これにより、強い腐敗臭のような特徴的な口臭が発生します。
十分な水分摂取ができていないと、唾液の分泌が減少し口内が乾燥します。唾液には自然な抗菌作用があるため、口が乾燥すると細菌が増殖しやすくなり、口臭が強くなることがあります。
特に夏場や運動後などは、体温調節のためのパンティング(口を開けた呼吸)が増加し、口内が乾燥しやすくなるため注意が必要です。犬が常にパンティングをしている場合は、単なる暑さだけでなく、呼吸器系の疾患の可能性も考えられるため注意しましょう。
犬の口臭は口の中だけでなく、体の内部で起きている病気が原因となることも少なくありません。内臓疾患による口臭は、歯の問題とは異なる特徴的な臭いを発することが多く、病気の早期発見につながる重要なサインとなります。
胃や腸に問題があると、消化不良や腸内細菌のバランス異常により、特徴的な口臭が発生します。胃酸の逆流や消化不良により、酸っぱい臭いや食べ物が腐ったような臭いが口から漂うことがあります。
慢性的な胃炎や腸炎がある犬では、持続的な消化器症状とともに口臭が見られることが多く、下痢や嘔吐、食欲不振などの症状を伴うことが一般的です。
誤って異物を飲み込んでしまったり、腸に腫瘍がある場合は、腸が変形したり閉塞を起こすことがあります。この場合、病変部位より先に食べ物が流れず、便のような口臭が生じます。口臭以外に嘔吐や腹痛、排便困難などの重篤な症状を伴うため、緊急の治療が必要です。
肝臓は体内の毒素を分解・解毒する臓器です。肝機能が低下すると、本来肝臓で処理されるべきアンモニアなどの有害物質が血液中に蓄積し、体内に残ってしまいます。肝疾患による口臭は「アンモニア臭」や「魚の腐ったような臭い」と表現されることが多く、非常に特徴的です。
腎臓は体内の老廃物を尿として排出する重要な役割を担っています。腎機能が低下すると、本来尿として排出されるべき毒素が体内に蓄積し、口臭に混じって出ます。
腎疾患による口臭は「尿のような臭い」や「アンモニア臭」で、病気の進行とともに臭いも強くなる傾向があります。
糖尿病が進行すると、体内で脂肪が分解されケトン体という物質が多くつくられるケトアシドーシスになります。ケトン体には独特の甘酸っぱい臭いがあり、「アセトン臭」と呼ばれる口臭が呼吸をすることで排出されます。この甘い口臭は糖尿病の重篤な合併症のサインであり、緊急治療が必要な状態を示しています。
肺炎や慢性気管支炎などの呼吸器疾患では、感染や炎症により特徴的な口臭が発生することがあります。細菌感染による膿性の分泌物が原因で、「膿のような」臭いや「腐敗臭」が口から漂います。
心疾患による肺水腫が起こると、泡沫状の分泌物により特徴的な口臭が発生することがあります。この場合、呼吸困難や咳などの深刻な症状を伴います。
口臭予防として自宅でできるケアをいくつか解説します。適切なケア方法を実践することで、口臭の軽減だけでなく、歯周病などの深刻な口腔疾患の予防にもつながります。
犬のデンタルケアで最も効果的なのは歯磨きですが、多くの飼い主さんにとってハードルが高いと感じられがちです。焦らず、毎日の習慣にし、犬のペースに合わせて少しずつ進めることが大事です。
口を触らせてくれない犬には、歯磨きガムなど補助ケア製品を活用する方法もあります。噛むことで物理的に歯垢を除去し、口臭軽減効果が期待できます。
できる範囲で毎日コツコツ続けることが、犬の口腔の健康を守る最も効果的な方法です。短時間でも毎日の習慣にすることで、口臭予防と歯周病の予防につなげましょう。
口腔内の乾燥は細菌繁殖の原因となるため、常に新鮮な水を用意し、十分な水分摂取を促しましょう。
水分摂取を促す方法として以下のようなものがあります。
また、食器の汚れは細菌繁殖の温床となります。食後は必ず食器を洗浄し、清潔に保ちましょう。
以下のような口臭予防に配慮したドッグフードを選ぶことも効果的です。
また、普段与えているフードの劣化も犬の口臭の原因となります。開封から時間が経つほど、フードの中に含まれる脂質の酸化により劣化するため、保存方法や賞味期限を定期的にチェックしましょう。
糖分が高いものや人間が食べている物は、歯石や歯垢が付着しやすく口臭の原因となります。トレーニングやご褒美の一環として使用する場合は、デンタルケアも合わせて行うと口臭予防につながります。
ストレスは唾液分泌の減少や免疫力低下を引き起こし、口腔環境を悪化させることがあります。適度な運動や十分な睡眠といった規則正しい生活を送ることで、間接的な口臭予防につながります。
犬の口臭に気づいた時、どのような場合に動物病院を受診すべきか判断に迷う飼い主さんも多いでしょう。口臭は単なる不快な臭いではなく、重要な健康状態のサインです。適切なタイミングで受診することで、深刻な病気の早期発見と治療につながります。
以下のような症状がある場合は、なるべく早く動物病院を受診するようにしましょう。
口臭が軽度でも、以下の場合は予防的な受診をおすすめします。
定期的な健康チェックを受けることで、口臭の原因となる疾患を予防し、病気の早期発見につながるからです。
犬の口臭は単なる不快な臭いではなく、健康状態のバロメーターです。
口臭の原因は歯垢や歯石による口腔内の問題から、肝臓や腎臓などの内臓疾患まで多岐にわたります。特にアンモニア臭や甘い臭いなど特徴的な口臭が見られる場合は、内臓の病気が隠れている可能性があるため、速やかに動物病院を受診することが大切です。
口臭からわかる病気を見逃さないためには、定期的な動物病院での検診と家庭でのケアが大事です。
特に7歳以上のシニア犬では年2回の定期検診を心がけ、愛犬の健康状態の変化を早期に発見できるよう注意深く観察しましょう。
監修:CUaRE 動物病院京都 四条堀川