2025.05.27
目次
愛犬のかわいいおねだりに、ついついおやつをあげすぎていませんか?おやつは愛情表現の1つですが、適切な量と与え方を守らないと肥満の原因となり、愛犬の健康寿命を縮めてしまう可能性があります。
犬の肥満は糖尿病や関節疾患、心臓病などさまざまな病気のリスクを高め、平均寿命を約2年も短くすることがわかっています。
今回は犬の飼い主様に、犬のおやつの与え方における以下のポイントについて解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、大切な家族である愛犬と、少しでも長く健康に過ごすために、正しいおやつの与え方を身につけましょう。
犬にも人間と同じように、太りやすい体質があります。
以下のような特徴がある犬は、特におやつの量や与え方に注意が必要です。
肥満になりやすい犬種には以下のようなものがあります。
元々、牧羊犬や狩猟犬であった犬種は運動量が多く、それに見合うよう食事量も多いです。現在でもその生活習慣の名残が残っており、運動不足になると、太りやすい傾向があります。
またラブラドールレトリーバーは満腹中枢に関わる遺伝子の変異があることが研究でわかっており、常に空腹感を感じやすい体質です。
避妊・去勢手術を受けた犬は、ホルモンバランスの変化により基礎代謝が低下し、太りやすくなります。手術後はフードやおやつの量を見直しましょう。
子犬期(1歳未満)では、成長期のためカロリー要求量が高いですが、おやつの与えすぎに注意です。
成犬期(1〜7歳)では、活動量が安定するため、それに合わせて適正な食事管理が必要です。
シニア期(7歳以上)には、運動量が減少し、筋肉量も低下するため太りやすくなります。
以下のような環境で飼育されている犬は、肥満のリスクが高くなります:
犬の肥満は単なる見た目の問題ではなく、健康リスクを伴います。健康に影響を及ぼすことで寿命の長さにもつながります。
肥満によって影響がでる健康リスクについて解説します。
肥満による過剰な体重は、関節や骨に負担をかけ以下のような病気のリスクを高めます。
肥満による関節への負担が増えると、膝や股関節の軟骨がすり減り、痛みや炎症を引き起こします。また、靭帯を損傷しやすくなります。
背骨への負担が増えると椎間板ヘルニアを発症しやすくなります。肥満になると背骨への負担が増え、筋力が弱くなるためです。
肥満は以下のような代謝性疾患を引き起こしやすくなります:
肥満の犬では、血糖値をコントロールするために大事なインスリンに対する反応が低いとされています。その結果、糖尿病を発症するリスクが高くなります。
また、血液中のコレステロールや中性脂肪が高くなることで、高脂血症を招きます。高脂血症は膵炎を起こしやすくなるため、改善する必要があります。
肥満は心臓や血管にも大きな負担をかけます。
肥満になると心臓が過剰な血液を送り出す必要があり、心肥大や心不全のリスクが増加します。また、血管への圧力が上昇することで高血圧となり、腎臓病などの合併症も引き起こす可能性があります。
肥満により、以下のような呼吸器系の問題が生じやすくなります。
喉周りの脂肪が気管を圧迫することで、通常よりも潰れて狭くなり、呼吸困難を起こします。また、睡眠中のいびきや呼吸停止につながり睡眠の質が低下してしまいます。
足腰が体重を支えきれなかったり、筋力が落ちることで、運動してもすぐに疲れやすくなります。
肥満の犬は手術時の麻酔リスクも高くなります。脂肪組織に麻酔薬が蓄積しやすく、覚醒が遅れたり、呼吸抑制が起こりやすくなったりするためです。
肥満の犬は病気のリスクが高まり寿命が短くなる可能性があります。研究によると、肥満の犬は理想体重の犬と比較して、平均寿命が約2年短くなることがわかっています。これは人間に換算すると約10〜15年に相当します。適正体重を維持することは、犬との時間を少しでも長く持つために不可欠です。
おやつをあげすぎないためには、まず犬の1日に必要なカロリー量を知ることが重要です。必要カロリーの計算方法と適切なおやつの割合について解説します。
犬に必要なカロリー量の計算方法は、以下の手順です。例として体重5kg、成犬で避妊済みのトイプードルで計算してみましょう。
5×5×5 = 125
125の√を2回 = 3.34
3.34×70 = 234.05
234.05×1.6 = 374.50
この計算結果が1日の必要摂取カロリーです。この犬では約375kcalになります。
年齢や活動量、去勢・避妊の有無によって以下のように調整します。
基本的なルールとして、1日の総カロリー量の10%以下、多くても20%までをおやつに割り当てるのが適切です。
先ほどのトイプードルの例では:
375 kcal × 0.1 = 37 kcal/日
つまり、与えてもよいおやつは1日に約37kcal(多くても74kcal)までということになります。
一般的な犬用おやつのカロリー量は以下のようです。
製品によってカロリー量は大きく異なるので、おやつのパッケージに記載されているカロリー表示を必ず確認しましょう。
先ほどのトイプードルではビスケットだと1~2枚、ジャーキーだと1枚までとなります。これだけ?と思われた飼い主様もいらっしゃるかもしれませんが、犬にとっては十分なカロリーです。私達でいうお饅頭1個分位に相当するからです。
おやつの与え方にはいくつか工夫できるポイントがあります。
おやつの量が少ないことで、すぐに楽しみが終わってしまう場合は、小さく切って与えましょう。犬は噛まずに飲み込む習性があるため、大きさの大小による満足感にはあまり影響しません。
チーズや砂糖が入っているおやつやジャーキー系は嗜好性が高いものの、脂質や糖質が高く太りやすくなります。
鶏むね肉やささみ、野菜など栄養価が高く、低カロリーなものを選ぶようにしましょう。低カロリーであっても与え過ぎには注意をしましょう。
おやつのカロリー計算が面倒な場合は、普段主食としているドッグフードの一部をおやつとして与える方法もあります。1日分のフード量を決めているので、過食防止につながります。
おやつを運動後に与えるようにしましょう。運動後は代謝が上がっていて脂肪になりにくいためです。
おやつは愛情表現やコミュニケーションツールの1つとして大切です。
与えすぎは肥満を招き、健康寿命を縮める原因となりますので、量を守りましょう。与え方を工夫することで、飼い主様も愛犬も満足できるひと時を送りましょう。
監修;CUaRE 動物病院京都 四条堀川