2025.07.22
目次
犬の分離不安症という言葉を聞いたことはありますでしょうか?
「家に帰ったら荒らさせているけれど何か対策はあるのだろうか?」
「犬の分離不安症って何が原因なの?」
「分離不安症は治療で治るって聞いたけど本当?」
そんな悩みを抱えられている方もいらっしゃいますね。
今回はそんな悩みを抱えられている犬の飼い主様に
について解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、犬の分離不安症についての理解を深めていただけたら幸いです。
分離不安症とは、犬が愛着を持っている飼い主さんやご家族と離れたときに起こる不安障害のひとつです。特定の人がそばにいないことに強い不安を感じ、破壊行動や不適切な排泄などの問題行動を起こします。
人間と同じように、犬も小さな頃は面倒を見てくれる人がいないと生きていけません。そのため分離不安は、どうぶつが生まれつき持っている生存本能のひとつです。通常であれば、成長とともに自然になくなっていきます。
しかし、子犬の頃から飼い主さんやご家族とずっと一緒に過ごしている犬は、1人になる時間を経験していません。その結果、大人になっても分離不安が改善されず、留守番中に問題行動を起こしてしまうことがあります。
犬が分離不安になり問題行動を起こすにはいくつかの理由があります。
犬の分離不安症の大きな原因の1つが、生活環境の急激な変化です。引っ越しや家族構成の変化、飼い主さんの生活リズムの変更などが引き金となることがあります。
環境変化には、以下のようなイベントが挙げられます。
子犬の頃から常に飼い主さんと一緒に過ごし、1人の時間を経験していない犬は分離不安症を発症しやすくなります。隣にいることが当たり前となると、飼い主さんと離れる時に強い不安や恐怖心を感じ、その反動として問題行動を起こしやすくなります。
適切な社会化期(生後0~3ヶ月)に様々な環境や人、音に慣れる機会が少なかった犬は、新しい状況に対する適応力が低くなります。その結果、飼い主さんがいない状況に強い不安を感じやすくなります。
高齢犬では認知機能の低下により、分離不安症の症状が現れることがあります。また、視力や聴力の衰えにより、飼い主さんへの依存度が高まることも原因のひとつです。
過去に飼い主さんと離ればなれになった経験や、留守番中に怖い思いをした経験がある犬は、分離不安症を発症するリスクが高くなります。
問題行動の原因には上記以外にも、神経系の問題が隠れている場合があります。犬の分離不安症と自己判断せず、気になる症状がある場合は動物病院での診察を受けるようにしましょう。
重度の分離不安の場合、獣医師による投薬治療が必要です。軽度の場合はしつけや犬との接し方を見直すことで改善できる可能性があります。いくつか方法を解説します。
まずは飼い主様が在宅の際に、犬が1人で過ごす時間を作ってみましょう。最初はごく短時間にとどめ、慣れてきたら徐々に時間を長くします。この時、犬が鳴いてもその場に留まり、声を掛けないことがポイントです。在宅時に1人で過ごせるようになったら、次は短時間のお留守番にチャレンジしてみましょう。
繰り返していくことで、「待っていたら飼い主さんが戻ってくる」という認識を植え付けるのが目的のトレーニングになります。
日常生活では過剰なスキンシップは避け、以下のような行動を心がけましょう。
これらの行動を通して、愛犬がひとりで落ち着いて過ごせる環境を整えてあげるとよいでしょう。
飼い主さんの出発時と帰宅時の行動を見直すことが非常に重要です。
外出する際は、犬に「行ってきます」と声をかけたり、撫でたりするスキンシップは控えましょう。また、鍵を持つ音や靴を履く音など、外出の準備をする行動も犬に見せないよう工夫することが大切です。これらの行動が犬にとって「飼い主さんがいなくなる合図」となり、不安を煽ってしまうためです。できるだけ何も言わず、冷静に外出するように心がけてください。
家に帰ってきた時は、犬がどんなに興奮して迎えてくれても、すぐには相手をしないようにしましょう。帰宅直後は犬を無視し、荷物を片付けたり着替えたりして、犬が落ち着いてから声をかけたり触れ合ったりします。これにより、「飼い主さんの帰宅=大興奮」という習慣を改善し、より穏やかな再会を促すことができます。
出発時と帰宅時の行動を見直すことで、愛犬にとって「お別れ」と「再会」の感情的な起伏を小さくすることができます。これにより、留守番に対する不安が軽減され、分離不安症の改善につながります。
重度の症状や行動療法だけでは改善が見られない場合、薬物療法を併用することがあります。
抗不安薬としてセロトニン再取り込み阻害薬、サプリメントとしてジルケーンなどリラックス効果のあるものが挙げられます。セロトニンとは脳内の神経伝達物質の1つで、精神を安定させたり、心身ともに穏やかにする作用があります。
分離不安症の治療には時間がかかります。すぐに効果が現れなくても、焦らずに継続することが大切です。
症状が重篤な場合や改善が見られない場合は、動物病院での診察を受け、必要に応じてドッグトレーナーなどの専門家の力を借りることも大事です。
犬の分離不安症は、日常的な予防対策により発症リスクを大幅に減らすことができます。
生後0~3ヶ月の社会化期に、様々な環境や人、音に慣れさせることが重要です。この時期に多様な体験をさせることで、新しい状況への適応力が身につきます。ただし、恐怖を与えないよう配慮しましょう。
子犬の頃から短時間でも1人で過ごす時間を作りましょう。常に飼い主さんと一緒にいる環境は、過度な依存関係を生む原因となります。
普段からクレートやケージに入ることに慣れさせましょう。好きなおもちゃを置いたり、おやつを食べる場所にする方法もあります。寝る時間以外もそこで過ごす習慣をつけておくと、待つ練習やお留守番につながります。
十分な運動と精神的な刺激を与えることで、留守番中のストレスを軽減できます。散歩や遊びで体力を消耗させ、知育おもちゃで頭を使わせることが効果的です。
食事や散歩の時間を一定にすることで、犬に安心感を与えます。予測可能なルーティンは不安の軽減につながります。
常に抱っこしたり、どこに行くにも一緒に連れて行ったりする行動は控えましょう。適度な距離感を保つことが分離不安症の予防に重要です。
犬の分離不安症は飼い主さんと犬、双方にとって大きな問題です。日常生活の中で、小さい工夫を心がけていくことが分離不安症の予防の鍵となります。
分離不安症の症状に気づいた場合は、なるべく早く対処を開始することが重要です。軽度の症状であれば日常のしつけや接し方の見直しで改善が期待できますが、重度の場合は専門的な治療が必要になります。
愛犬の異変に気付いた際は、自己判断せずに早めに動物病院を受診ましょう。
監修:CUaRE 動物病院京都 四条堀川