矢印健康診断
診療予約

ブログ

  • ホーム
  • ブログ
  • 猫が水を飲まない|飲まない原因と水分不足対策について獣医師が解説

猫が水を飲まない|飲まない原因と水分不足対策について獣医師が解説

2025.06.24

猫がしっかりとお水を飲む姿はあまり見かけないのではないでしょうか。


「愛猫があまり水を飲んでくれなくて、水分不足が心配」
「1日にどれくらいの水分を摂取したら良いのだろうか」
「水を飲ませる良い方法はあるの?」
といった、不安や疑問をおもちではないでしょうか?

猫の水分不足は、腎臓病や尿路結石などの深刻な病気を引き起こすリスクがあるため、適切な対策が必要です。 

今回は、猫の飼い主様に

  • 猫が水を飲まない理由
  • 自宅でできる水分不足対策
  • 動物病院を受診する目安

について解説します。
ぜひ、最後までお読みいただき、愛猫の健康管理にお役立てください。

なぜ猫は水分不足になりやすいのか?

猫の祖先は砂漠のどうぶつ

猫が水をあまり飲まないのには、進化の過程で培われた生理的な特徴があります。現在の家猫の祖先であるリビアヤマネコは、中東の乾燥した砂漠地帯で生活していました。水が貴重な環境で生き抜くため、猫は少ない水分でも生存できるよう体の仕組みが進化してきたのです。

猫はもともと砂漠のどうぶつ

犬などのどうぶつに比べると、一般的に猫はあまり水を飲まない傾向があります。理由の1つとしては、猫の祖先が水の少ない砂漠地帯で暮らしていたことがあげられます。

祖先が暮らしていた地域では、水がとても貴重な場所だったため、少しの水でも元気に生きていけるよう、体の仕組みが変化していったのです。

水を上手に使う体の仕組み

猫の腎臓(おしっこを作る臓器)は、体の中の水分を無駄にしないよう、少量の水で濃い尿を作ることが可能です。これは腎臓にとって負担になるため、十分な水を摂取できるよう工夫が必要です。

昔と今の生活の違い

野生の猫は、ねずみや小鳥などの獲物を食べることで水分を補給していました。これらの小動物の体の約70%は水分でできているため、狩りをするだけで自然に十分な水分が摂れていたのです。

しかし、現代の室内飼いの猫は:

  • カリカリ(ドライフード)が主食で水分が少ない(約10%程度)
  • 狩りをしないので獲物からの水分摂取がない
  • 室内で過ごすことが多く、運動量が少ないため喉が渇きにくい

これらの理由で、水分不足になりやすい環境にいるのです。

猫の水分不足チェック方法

1日に必要な水分量の目安

猫の理想的な1日の飲水量は、1日あたり体重1kgあたり約40~50mlです。

例えば:

  • 体重3kgの猫 → 約150ml(コップ3分の2杯程度)
  • 体重5kgの猫 → 約250ml(コップ1杯程度)
  • 体重7kgの猫 → 約350ml(コップ1杯半程度)

コーヒーコップ1杯、200~250mlなので、人間に比べると1日に必要な量が元々少ないことが分かります。

この水分量には食事から摂取する分も含まれます。ウェットフードの場合は約70〜80%が水分のため、ドライフードを食べている猫の方がより多くの飲み水が必要になります。

簡単にできる飲水量チェック方法

愛猫がどれくらい水を飲んでいるか確認する方法は以下の通りです。

  1. 朝、水入れに決まった量の水を入れます(例:200ml)

水の量が途中で足りなくならないように、十分な量を計量して入れておきましょう。

  1. 夜、残っている水の量を測ります
  2. 朝の量から夜の残量を引いた数字が1日の飲水量です

例えば、朝200ml入れて夜150ml残っていた場合、飲水量は50mlということになります。

水分不足のサインをチェック

猫が脱水しているか確認する簡単な方法は、背中の皮膚を軽くつまみ、手を離して、皮膚が元に戻る時間を確認します。正常であればすぐに戻りますが、脱水状態になるほどこの戻りが遅くなります。

猫の水分不足が引き起こす健康リスク

水分不足が続くと、猫の体にはさまざまな悪影響が現れ、以下のような健康リスクが挙げられます。

腎臓病(慢性腎不全)

猫の水分不足による最も深刻な健康リスクの1つです。

水分不足により血液中の老廃物を十分に排出できなくなり、腎臓に大きな負担がかかります。特に7歳以上のシニア猫では、慢性腎臓病の発症リスクが高まります。

尿路結石・膀胱炎

猫が水を飲まないことで、おしっこが濃くなり、排尿回数が減ると、膀胱内に細菌や結晶が長時間留まってしまいます。

細菌が繁殖すると膀胱炎に、結晶が溜まると徐々に大きくなり結石が形成されてしまいます。

便秘・消化器系のトラブル

体内の水分が不足すると、便が硬くなり、排便しにくくなります。慢性的な便秘は食欲不振の原因にもなります。

熱中症・脱水症状

水分不足が続くと脱水傾向になり、特に夏場は熱中症のリスクが高まります。

とくに、高齢の猫や既往症のある猫では水分不足により体調が急変することがあることから、脱水に気づいた時点での対応が重要です。

今すぐできる!猫の水分不足対策

猫に水をたくさん飲んでもらうために、飼い主様ができる効果的な対策を解説します。複数の方法を組み合わせることで、より効果が期待できます。

水の質と温度を工夫する

猫は新鮮な水を好みます。最低でも1日1回、できれば朝夕2回水を交換しましょう。

水温の調整

夏場はやや冷たい水(15-20℃程度)、冬場は常温またはぬるま湯(20-25℃程度)と水温の調整をしてみましょう。氷を1-2個入れると興味を示す猫もいます。

水の種類を試す

水道水が嫌いな場合は、浄水器の水やミネラルウォーター(軟水)を試してみましょう。

水入れの器と設置場所を見直す

器の材質選び

猫が水を飲まない理由として、器の材質が合わないケースがよくあります。陶器やガラス製の器は、におい移りが少なく清潔に保ちやすいため多くの猫に好まれます。ステンレス製も傷がつきにくく衛生的でおすすめです。一方、プラスチック製の器はにおい移りしやすく、猫が嫌がる場合があるため避けた方が良いでしょう。

猫の体に合った器選びのポイント

器の幅や高さが猫の体に合わないと、顔やヒゲが器に当たったり、首に負担がかかったりして水を飲みづらくなってしまいます。広めの器や高さのある器を利用するなど、猫の体格に合わせた工夫が必要です。特にヒゲの長い猫や首の短い猫種では、器選びが水分摂取量に大きく影響することがあります。

効果的な設置場所と複数設置のメリット

猫が好きなときにいつでも水を飲めるよう、水は複数の場所に置くようにしましょう。食事場所から少し離れた静かな場所や、猫がよく過ごすお気に入りの場所近くに設置すると効果的です。トイレから離れた清潔な場所を選び、家の中の2、3箇所に設置することで、猫の水分摂取量を自然に増やすことができます。

どんな器でもあまり気にせず水を飲んでくれる猫もいる一方で、気に入った器でないと飲まない猫もいるため、できるだけ愛猫の好みに合った器を使うことが大切です。

自動給水器・噴水型給水器を活用

流れる水を好む猫に効果的な水分不足対策

汲み置きした水ではなく、流水式の給水器を好む猫も多くいます。特に水道の蛇口から直接水を飲みたがる猫には、自動給水器を試してみるのも効果的な方法です。動いている水に興味を示す猫の習性を活かすことで、自然に水分摂取量を増やすことができます。

循環式とつぎ足しタイプの特徴

自動給水器には大きく分けて循環式とつぎ足しタイプがあり、どちらもいつでも新鮮な水を与えることができます。特に循環式給水器は、モーターにより水が循環し、フィルターでろ過されたきれいな水を飲むことができるため非常に衛生的です。常に水が動いているため、猫の興味を引きやすく、水分不足の解消に効果が期待できます。

猫に合った給水器選びのポイント

水道の蛇口から直接水を飲みたがる猫には、噴水タイプや湧き水タイプの給水器がおすすめです。市販されている給水器にはたくさんの種類があるため、猫が飲みやすい高さかどうか、猫のヒゲが当たらない大きさか、静音性や飼い主にとって手入れしやすいものかどうかなど、様々な要素をチェックしながら検討することが重要です。猫の体格や好みに合った給水器を選ぶことで、水を飲まない問題の解決につながります。

ウェットフードで水分摂取量を増やす

ウェットフードは最も効果的な水分不足対策の1つです。約70-80%が水分のため、食事と同時に効率的に水分補給ができます。猫が水を飲まない場合でも、食事を通じて必要な水分を摂取することが可能です。ドライフードのみの食事からウェットフードを取り入れることで、1日の総水分摂取量を大幅に増やすことができます。

普段ドライフードを食べている猫でも、1日1回ウェットフードに変更したり、ドライフードにお湯やスープを加えたりするだけで十分な効果が期待できます。ただし、急な食事変更は下痢の原因になるため、徐々に切り替えることが大切です。

猫用スープやミルクを取り入れる

猫用のスープやだし汁、乳糖フリーの猫用ミルクは、水分補給を楽しくサポートしてくれます。これらをおやつとして少量ずつ与えたり、ドライフードにかけて与えることで、自然に水分摂取量を増やすことができます。

人間用の食品は塩分が高いため避け、必ず猫専用の商品を選びましょう。また、カロリーオーバーにならないよう適量を心がけることが重要です。

治療中の病気がある場合は、食事に制限がある場合があります。事前に獣医師に相談してから取り入れるようにしましょう。

緊急受診が必要なケース

猫の水分不足や脱水症状には、緊急性の高いものから経過観察で良いものまで様々です。適切な判断をするために、受診の目安を知っておきましょう。

受診が必要な症状

以下の症状が見られた場合は、なるべく早く動物病院を受診しましょう。

  • 24時間以上おしっこが出ない(特にオス猫は尿道閉塞の可能性)
  • ぐったりして反応が鈍い、立ち上がれない
  • 呼吸が荒く、舌や歯茎が紫色になっている
  • けいれんや意識障害がある体温が異常に高い、または低い

その他症状

  • 嘔吐や下痢
  • 血尿や血便
  • 排尿困難

シニア猫(7歳以上)は特に注意

加齢とともに腎臓機能が低下しやすく、水分不足による健康リスクが高まります。症状が現れる前に定期的な血液検査で腎臓の状態をチェックすることが重要です。

まとめ

猫の水分不足は、腎臓病や尿路結石などの深刻な病気を引き起こすリスクがあるため、日頃からの対策が重要です。

いくつかの工夫を組み合わせて愛猫にあった水分摂取方法を見つけてあげましょう。

水を飲まない、水分不足が心配な場合は、お気軽に当院までご相談ください。

監修:CUaRE 動物病院京都 四条堀川