2025.10.07
目次
「愛猫が寒いかどうかどうやったら判断できるの?」
「愛猫にとっての快適な室温が何度か分からなくて、結局、人間基準にしてしまう」
「季節の変わり目で体調を崩さないか不安」
動物病院で毎日のように質問を受けるこれらのお悩み。特に冬場は「これで本当に大丈夫?」と不安になる場面が多いですよね。
実際、12月から2月にかけて当院を受診する猫の約40%が、膀胱炎や尿石症などの泌尿器疾患です。
今回は、
を解説します。
適切な知識を得て、冬の室内環境を整え、病気の予防につなげましょう。
💡環境を整える前に、まずは今の家の状況をチェックしてみましょう。
☐普段より活動量が減っている
☐体を丸めている
☐毛布や布団に潜り込んでくる
☐体を震わしている
☐毛が逆立っている
☐水を飲まない
1つでも当てはまるなら、室内環境の見直しが必要かもしれません。
猫が快適と感じる室温は20~28℃です。子猫(6ヶ月未満)は、体温調節機能が未発達なため、高齢猫(7歳以上)は筋肉量の低下で寒さに弱くなるため、やや高めの設定がおすすめです。
長毛猫はその被毛ゆえに短毛猫よりも寒さには比較的強いので、基準温度から1-2℃低めでも大丈夫です。逆に短毛種の場合は、基準温度から1~2℃高めに設定する方が良いかもしれません。
適切な室温設定が必要なのは、単なる快適性の問題だけではありません。冬の室温管理は猫の病気を予防する重要な健康管理です。
冬には「泌尿器の病気」が多く発生します。泌尿器の病気として代表的な物が、膀胱炎、尿石症、腎臓病です。原因としては以下のような理由が挙げられます。
寒いと自然に水を飲む量が減り、尿が濃縮されて結石ができやすくなります。飲水量が減ると腎臓にも負担がかかりやすく、腎臓病の症状が進行しやすい傾向にあります。
寒いトイレを避けて排尿を我慢することがあります。また、飲水量が減ると尿の量が減り、膀胱内に尿が溜まりやすくなります。結果、膀胱炎のリスクが高まります。
寒さというストレスも膀胱炎になりやすい要因の1つです。
動かないことで代謝が落ち、飲水量が減ります。
関節炎のある猫も寒い時期に痛みが生じる傾向があります。理由は以下の通りです。
寒さで血管が収縮し、関節周辺の血流が悪くなることで痛みが増加します。
低温環境では筋肉が硬くなり、関節への負担が大きくなります。
寒い時期は活動量が低下し、いつも以上に丸くなっていてあまりのびをしないので、関節の痛みも出やすくなります。
室温に関しては気にしておられる飼い主様も多いかと思いますが、湿度はいかがでしょうか。猫にとって快適な湿度は40~60%です。祖先が砂漠で生活していたこともあり、多湿の環境は苦手だとされています。冬場は暖房器具を使用するので、空気がさらに乾燥しやすいことから、小まめな調整が必要です。
具体的な寒さに対する対策方法を解説します。
様々な暖房器具がありますが、エアコンが安全上、最も最適です。外出時はリモコンでいたずらされないよう隠したり、暑くなり過ぎないようタイマーを上手く活用しましょう。
ストーブやヒーター、こたつなどエアコン以外の暖房器具を使用する際は注意が必要です。低温やけどや毛やひげのこげ、脱水などが起こる可能性があるからです。
猫の生活スペースに毛布やラグを敷いてあげると、自分で暖を取ることができます。普段通る廊下や階段にもラグやマットを敷いてあげると、活動範囲が広がり、運動不足の予防につながります。
エアコンや暖房器具を使った室内は湿度が下がりやすい傾向にあります。加湿器を設置することで湿度も適正になるように調整しましょう。加湿器以外に、洗濯物を干したり、濡れタオルを吊るすだけでも湿度を上げることは可能です。
留守中に思わぬ形で室内が暑くなりすぎることがあります。また、猫は自分にとって居心地の良い場所を移動して過ごす傾向がありますので、部屋は自由に行き来できるようにしておくと良いでしょう。
寒い冬は寝ている時間が増え、猫も運動不足になりがちです。運動は筋肉量を維持するだけでなく、自律神経も整えてくれます。
筋肉がつくと寒さ対策につながります。また、運動量が減ると自律神経のはたらきが鈍くなり、膀胱や胃腸の動きも低下することで膀胱炎や便秘になりやすくなります。ねこじゃらしで遊んだり、上下運動を促したり体を動かす機会をつくってあげましょう。
飲水量の確保には、水飲み場と水に工夫が必要です。
窓際に水飲み場があると冷気で冷えてしまいます。水飲み場周辺が寒いと、猫も行きたがらなくなりますので、冬場は窓際から少し離して設置してあげましょう。また、水飲み場を増やしてあげる方法もおすすめです。
与える水はぬるま湯や常温に戻したものにしてあげると飲みやすくなります。
冬は寒さから守るために、アンダーコートが密集した冬毛に変わっていきます。小まめにブラッシングすることで飲み込む毛の量を抑えることができます。また、ブラッシングで皮膚を刺激することで血流が良くなり体が温まりやすくなります。
猫の冬の室内環境管理において最も重要なのは、適正な温度(20-28℃)と湿度(40-60%)の維持です。特に泌尿器疾患の予防には、暖かい環境での十分な水分摂取が欠かせません。
年齢や猫種に応じた温度調整、安全な暖房器具の使用、適度な運動の確保により、愛猫は健康で快適な冬を過ごすことができます。寒がりサインを見逃さず、早めの環境調整で病気を予防しましょう。
猫の体調変化が気になる場合は、お気軽に当院までご相談ください。
監修:CUaRE 動物病院京都 四条堀川