2025.04.01
目次
愛猫が鼻水を垂らしている姿に遭遇したことはありますか?
「愛猫が鼻水やくしゃみの症状が出ているけれど、どれ位様子をみて大丈夫なの?」
「鼻水が出る原因って何があるの?」
「鼻水を予防する方法ってあるの?」
という不安をおもちではないでしょうか。
今回は、猫の飼い主様に
について解説します。
ぜひ、最後までお読みいただき、愛猫の健康管理にお役立て頂ければ幸いです。
鼻は体の中で加湿空気清浄機のような働きをしています。具体的には、鼻腔内の温度を調整し、加湿を行うと共に、細かいホコリを除去しています。
異物の除去に重要なのが鼻粘膜から少しずつ出る粘液です。ウイルスや細菌、ホコリなどの異物が外気と共に入ってくると、体が異物を排出しようとして粘液を多量に分泌します。これが鼻水です。鼻水は鼻の中をきれいにしてくれる洗浄液のようなものです。
猫の鼻水は、色や性状によって原因となる病気を見分けるための重要な手がかりになります。鼻水の色と性状別にそれぞれ解説します。
にごりがなくさらさらとした透明な鼻水は、少量の場合、生理的な可能性が高いです。大量に出る場合は、季節性のアレルギーもしくは猫風邪などの感染症の初期段階かもしれません。鼻水が1週間以上続いたり、食欲不振や元気がなくなったりする場合には、早めに動物病院を受診しましょう。
濃い黄色や緑色、粘り気がある鼻水は、細菌やウイルスなどの感染症か異物の可能性があります。重症化する可能性もあるため注意が必要です。
鼻血が出ている場合や鼻水に血液が混じっている場合は、ひどい鼻炎、鼻腔内腫瘍、歯周病が考えられます。また、血が止まりにくくなる病気の場合もあることから、すぐに動物病院を受診しましょう。
鼻水は主に生理的なものと病気によるものに分かれます。具体的な原因について解説します。
透明な鼻水が少量出る場合は、生理現象である可能性が高く、温度差や異物、ストレスなどが挙げられます。
気温変化によって鼻の粘膜にある神経が刺激されると、人と同様に鼻水が多くなるのが特徴です。
砂やホコリなどの異物が入った時には、それを排出させるために鼻水が分泌されます。食べ物を嘔吐した時に、喉から鼻に吐物が入り込むケースもあります。鼻腔内に異物が残っていると鼻炎や感染の元になるため注意が必要です。
猫が新しい環境に慣れる過程や季節の変わり目で、一時的にくしゃみが生じることも珍しくありません。
明らかに鼻水の量が多く、色がついているなどの症状は病気が隠れている可能性があります。原因にはいろいろありますが、以下のようなものが代表的です。
代表的な感染症は、猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスを中心とした猫風邪です。比較的若齢や老齢の猫で見られることが多く、新しく猫を迎え入れる時やシニア期になる頃に注意が必要です。
始めはさらさらと透明な鼻水ですが、細菌の2次感染が起こると色がついてきます。
猫風邪では鼻水の他に、くしゃみ、目やにといった症状が見られ、進行すると発熱、食欲低下、元気消失などを伴います。
猫も人間と同様に、ダニ、ハウスダスト、花粉などに対してアレルギー反応を起こすことがあります。通常は透明な鼻水とくしゃみを伴うことが多く、季節や環境によって症状が変化するのが特徴です。
中高齢の猫で鼻の中に腫瘍やポリープが発生することがあります。始めは鼻水だけの症状ですが、腫瘤から出血すると鼻血が見られるようになります。さらに進行して腫瘍が大きくなると、鼻や顔の変形が目立つようになるケースも少なくありません。
猫の歯と鼻は解剖学的に深い関係があり、特に高齢猫では歯周病が鼻水の原因になることがあります。
歯周ポケットに歯垢がたまることで、歯肉や歯を支える骨などの歯周組織に炎症が起こります。この炎症が上顎(上の歯)の奥にある鼻腔まで波及し、鼻水やくしゃみといった症状を引き起こすのです。
猫の口蓋裂は、口と鼻の間にある上顎の組織(口蓋)が正常に発達せず、口腔と鼻腔がつながってしまう先天性の異常です。生まれつき口蓋に穴が開いているため、食べ物や水が鼻から漏れ出たり、鼻水やくしゃみといった鼻炎の症状が認められます。
先天的なものが多いですが、外傷により成猫でも似た症状が見られることがあります。
猫の鼻水の治療は、発症原因によって治療方法が異なります。
当院では、飼い主様からの情報をもとに
* 身体検査
* レントゲン検査
* 血液検査
* 培養検査
* PCR検査
を行い、総合的に鼻水の原因を特定します。
身体検査では、鼻水の状態、目の症状の有無、呼吸状態を確認します。
レントゲン検査の目的は、鼻の中や奥、胸の状態の探索です。腫瘍や異物が疑われる場合は、より詳細が分かるCT検査が必要となります。
血液検査では、感染症や炎症の有無を中心に体の状態を把握します。
ウイルスや細菌の特定のため培養やPCR検査が実施されることもあります。
猫の鼻水の治療は原因によって異なります。主な原因別の治療法について解説します。
猫風邪などのウイルス性感染症の場合、基本的には対症療法が中心となります。細菌の二次感染がある場合は、抗生物質の投与が行われます。
ヘルペスウイルスの関与が疑われる場合、全身的な抗ウイルス薬の投与が行われることがあります。抗ウイルス薬を含む点眼薬もあります。
原因がクリプトコッカスというカビの1種であった場合は、抗真菌剤を投与します。抗真菌作用のある外用薬もあり、猫の症状・状態によって、内服薬や外用薬の両方、もしくは内服薬のみが処方されます。
細菌感染や2次的な細菌に対して抗生物質を投与します。
ネブライザー治療の目的は薬剤を霧状にして吸入させる治療法で、肺や気管支に直接薬を届けることです。
鼻腔内腫瘍の場合は、腫瘍の種類や進行度によって治療法が選択されます。
腫瘍が取り切れる場合は、外科的処置が選択されます。
化学療法は作用の異なる抗がん剤を何種類か使用して、がん細胞の増殖を抑えたり、破壊する治療法です。主に腫瘍がリンパ腫であった場合に選択されます。
放射線療法は高エネルギーの放射線を腫瘍に照射し、がん細胞にダメージを与える治療法です。主に腫瘍がリンパ腫であった場合に選択され、腫瘍が鼻に限局し、他に転移していない場合が条件です。
歯周病が原因の場合は、抗生剤や鎮痛剤で1次的に症状を緩和させる場合もありますが、根本治療としては歯科治療が必要です。歯石の除去や歯周病の原因となる歯の抜歯を行い改善を図ります。
歯周病の場合は、痛みを伴うことがあるため、食べやすい形状のフードやふやかして給餌しましょう。
異物が原因であった場合は、内視鏡を用いて異物を摘出します。全身麻酔が必要となりますが、異物を取り除いた後の症状改善は劇的なことがほとんどです。
また、口蓋裂が原因であった場合は、裂けている上顎の部分を塞ぐ外科手術が必要です。手術部が完治するまでの期間は、カテーテルなどを使用した強制給餌など術後ケアが欠かせません。
愛猫の鼻水は、単なる猫風邪だけでなく、様々な病気のサインかもしれません。鼻水の色や性状によって原因疾患が異なり、適切な対応が必要です。
鼻水以外にも、顔周りの腫れやいびき、くしゃみの増加など少しでも異常に気づかれたら、お気軽に当院までご相談ください。
監修:CUaRE 動物病院京都 四条堀川